月一恒例の音楽鑑賞履歴です。
5枚。
ブログで鑑賞履歴始めてから、最も少ない枚数です。その理由は直近の過去記事をご覧いただければお分かりいただけるかと(笑)いや、もう仕方ないです、これは。まあ、今年の初めから「夏に入ったら本気出す」を明言してましたのでこうなることは目に見えていたわけですけども。あとはどこまでこれが続けられるか。なんとか終わりまで続けたいと思いますが、あと約二ヶ月。しばらくこの調子なので、聞く量はぐっと減るかもしれません。申し訳ない。
というか日々の記録代わりなのでこれを目当てにいらっしゃる方がどれくらいいるかわかりませんが。
そんなこんなで今回はSleater-Kinneyしか聞いてません。まあ、こういう時期もあるさと言うことで。いや、いろいろアウトプットするときに集中したいので音楽が聴けないのが一番のストレスなんですけどもね。書くのも好きなので、今はそっちを頑張ります。
というわけで以下より感想です。
97年発表3rd。
The Kinksのレコードジャケット意匠を借りたジャケットで有名な彼女たちの代表作。ベースレスで
ツインギターが鳴り響くトリオ演奏は
オルタナらしいギターロックではあるが、珍しく焦燥感は皆無で
キッチュな浮遊感と地に足着いたノイ
ジーな重力感とともに
フェミニズムを押し出した歌詞が独特。
女性の3ピースバンドという以上に、彼女たちのアディテュードは
パティ・スミスと似通っているようにも感じる。そういう点ではNYパンクに接近した
サウンドなのも納得は行く。今聞くと、雑味を抜かずに押し出した
The Strokesのローファイ・ギター
サウンドという印象を持つのも興味深いところだ。
オルタナ・
グランジを経て、醒めた知性をラディカルに音楽に響かせると、NYパンクや古くはヴェルベッツにも至る音の上に、彼女たちの音楽は成立しているし、90年代末期という時代を反映した音を出している。エキセントリックでパンキッシュだが非常にクレバーな内容の傑作に違わぬ一枚だろう。
99年発表4th。ガレージロック色が減退し、NW
サウンドらしい退廃的な雰囲気に包まれた一枚。全体的にミッドテンポ気味の演奏なので、疾走感のあった前作と比べても大分印象が異なる。そのルーズな印象と気怠さが漂う中、ユルさとチリつく焦燥が同居しているのが当時の流行らしくもありまた独特でもある
サウンド的にはやはり
トーキング・ヘッズや
テレヴィジョン、
ソニック・ユースといったバンドと地続きであり、そのクールな知性とラディカルな姿勢は本作においても一貫している。女性のあけすけな感情をギターノイズに乗せて歌えることが個性でもあり、その赤裸々な歪みにじっと耳を傾けて聞く良盤だ。
00年発表5th。音と演奏が骨太になった印象がある一枚。
The Strokesや
White Stripesの台頭に先駆けて、ガレージロックへの回帰を意識したような
サウンドにもなっていて、
ツインギターはざくざく、ドラムは適度な重さを保ちながら、荒地を物ともせずに突き進む4WDのようなワイルドさを感じるのがクール。
前作のNW色やダルな趣から打って変わって、目の覚めたようなスピード感とパワフルな演奏とともに彼女たちらしいロックに対するアディテュードとラディカルな部分が呼応したゆえだろう。傑作と謳われた前々作の印象をアップデートしたような痛快な一枚だ。その磐石さには余裕すら感じられる。
02年発表6th。前作より音の出力がパワフルになった印象を受ける作品。
サウンドがハードになったとか、音圧が高くなったというのではなく、前作のガレージロック感を引き継いで高出力に上げた、感じ。密度がグッド上がって、強度が高くなったと言えばいいだろうか。ともかく枠が太くなった。
一音一音がかなり太くなったイメージで、ギターリフやドラムから叩き出されるビートの強さがとてもエネルギッシュに聞こえる。マッシヴになったというべきか、余計な贅肉がなくなった分、筋肉質なバネの強さが目の前に迫ってくる。キレよりも音の弾力をとことん突き詰めた強靭な一枚。乾いた響きも良い
05年発表7th。前作のパワフルな出力そのままに、音のボリュームを思いっきり引き上げた爆音ガレージロックの傑作。もうプレイボタンを押した直後の最初の一音だけで圧倒される、パワフルかつ豪快なサウンドはバンドには今までなかった感触。名付けられたタイトルやジャケットの如く幹の太い大木の音だ
激情、と言えばいいのか。今までのクールな視線に怒りが混ぜられ、とにかくバンド史上、最も攻撃的な演奏が繰り広げられる。理路整然にやけっぱちな、その矛盾した音が理性を保って、フルドライヴで駆け抜けていく爆音の鬼気迫る勢いが有無を言わさず振りかざされていくのが圧巻だ。
ハイライトは終盤二曲、とくに9はバンド史上最長の11分の演奏時間でスタジオライヴのアドリヴセッションをそのままぶち込んだような、テンションの振り切れようが凄まじい。まさに完全燃焼といった向きの一枚で、再始動に10年も要したのも頷けるほど。知性と激情の火花がぶつかり合う名盤だろう。