In Jazz(はてなダイアリー版跡地&元『My Favorite Things』)

ジャンル不問で好きなものを最小単位で語るブログ

音楽鑑賞履歴(2016年9月)

月一恒例の音楽鑑賞履歴。音楽メーターの感想を記事にしてまとめてます。
21枚。
2014年度新規購入分も大分少なくなってきました。とはいえ、二年前に購入したやつなので、どんだけ聞くのがスローペースなんだって話ですが。当時、これを集めるのに熱心だったんだなあと振り返ったりして結構楽しかったり。8月の反動からかロックがかなり多いですね。いつもこんな感じでジャンルをいったり来たりしてます。10月もまた聞くジャンルが別の方向へ行きますので、お付き合いのほどを。
まあ、生存確認の定期記事で始めた音楽感想なので、楽しみにしてる方がいらっしゃるかは分からないですけども。

以下から感想です。


9月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:21枚
聴いた時間:633分

Curtis Live (Dlx)Curtis Live (Dlx)
71年発表ライヴ盤。名ライヴ盤の誉れ高い一枚だが、その実、非常にいぶし銀な内容。音の派手さはひとかけらもなく、ただひたすらソウル/ファンクの粘っこいグルーヴが淡々と蠢いている。それ故にするする曲が流れて行き、気づけばもう最後の曲になっているという、喉越しの良さは天下一品だろう。
決して演奏が明るくもないし、音がカラフルなわけでもなく、黒人特有のリズム感覚が重くも軽くも感じさせないほどまるで水のように染み渡っていく感覚はとても不思議。心地よさの頂点を極めたようなスムースさは この盤でしか感じ得ないものだろう。ライヴ盤にしてスルメ盤なのも納得。クセになります
聴いた日:09月01日 アーティスト:Curtis Mayfield
スペース☆ダンディ OST2スペース☆ダンディ OST2
14年発売OST。同名アニメ作品のサントラ第二弾にして、二枚組。前作のリヴァイバル・オブ・80sサウンドがさらにお祭り感を強めた作りで、満漢全席あるいは幕の内弁当のような豪華絢爛さ、というより参加アーティストのシブさも音楽ファン的にはにやりとする内容かと思う。未見でも楽しめます。
音の雰囲気的にはバブル期の80年代末のケバケバしさとをメインに90年代以降のオルタナや00年代辺りのクールさも重なっており、懐かしくも新鮮なものとなっている。収録曲もバラエティに富んでいてサントラだということを忘れさせてくれる、そんな聴き応えのあるアルバムだ。本編も面白いです。
芳野藤丸SHOGUNなど)、向井秀徳川辺ヒロシ難波弘之といった面子に、ミト(クラムボン)、永井聖一(相対性理論)、ORGE YOU ASSHOLEやMountain Mocha Kilimanjaro等々、アニメじゃあまりお目にかかれない人々が参加。気になった人は聞くべし。
聴いた日:09月02日 アーティスト:Various
Drastic PlasticDrastic Plastic
78年発表5th。バンドの最終作。シンセサウンドが強くなり、80sサウンド前夜といった趣が非常に強い一枚。パンクやNWの息吹を受けながらも、どこか垢抜けなさが残るのんびりとした雰囲気が憎めない。サウンドは鋭利なのにも拘らず、統一感が70年代英国ロックっぽさがいかにもバタ臭いせいか
テクノポップへと指向してるけど、一方でバンド本来のグラムやロックンロールなケバケバしさが洗練しきれず、奇妙なアクになっている。さしずめQUEENの重厚さとピストルズの単純さが同居してるような、ミッシングリング的な立ち位置で今聞くと非常に未分化なユル〜い音なのが面白い。
時代の徒花的、といってしまうとそれまでだがその過渡期に活躍したバンドの変遷が垣間見えて、興味深い。ある意味、グラムにハードロック、英国ポップス、パンクにNW、テクノポップを予見したが一緒くたになってるわけで。その変なカオス感を味わえるのは魅力でもある。ニッチポップ的だが佳作かと
聴いた日:09月03日 アーティスト:Be-Bop Deluxe
ザ・ラム・ライズ・ダウン・オン・ブロードウェイザ・ラム・ライズ・ダウン・オン・ブロードウェイ
74年発表6th。ピーター・ゲイブリエル在籍最後の2枚組大作。ラエルという男が大都市の洗礼と喧噪を受けて翻弄されていく様を極めて神秘的かつ幻想的に描いたコンセプトアルバム。かなり内容が難解であるがバンドの叙事詩的大曲を一つの作品として仕立て上げている、と考えれば分かり易いか。
「迷える子羊がブロードウェイに微睡む」というタイトルの通り、演劇的な構成によってゲイブリエルの芝居がかったボーカルが真骨頂を見せており、一つの到達点を示している。その一方でコンセプチュアルな構成ゆえに、一曲毎の大作主義は薄らいだ。だが作品自体が大きな組曲であるのは疑う余地はない。
そういったゲイブリエルのコントロールが強い中で、演奏の切れ味はオリジナルメンバーとしても全キャリアとしても一番キレのある時期を捕らえたアルバムであり、特にトニー・バンクスやスティーヴ・ハケットが随所で冴えを見せている。その鉄壁のアンサンブルで攻めに攻めた演奏は聴き応え満点。
惜しむらくは、アルバムが一つの作品(組曲)であるので、曲ごとのカタルシスが非常に弱い点、クライマックスも最後(Disc2終盤)に配置されているので、そこまでたどり着くのが一苦労である点がバンドの表現力のピークにも拘らず、作品を煮え切れない物にしてしまっていることだ。
この全盛期における内部分裂がそのまま、作品に反映されてしまったために評価としては厳しいものにならざるを得ないが、演奏はかなりかっちりとした硬質さとポップさが同居していて、むしろ聞きやすいし、後年のトリオ体制を髣髴とさせる。一世一代の傑作にはなり損ねたがバンドの重要作。
聴いた日:09月06日 アーティスト:ジェネシス
アジムス (BOM1118)アジムス (BOM1118)
75年発表1st。ブラジルでセッションミュージシャン活動をしていた腕利きトリオの処女作。混じりっ気なしのブラジル音楽と当時流行していたクロスオーバー(フュージョン)を融合させている。ブラジル音楽特有の揺らぎが、フュージョンらしい洗練された演奏と絡み合い、独特なグルーヴを響かせる。
欧米、特にアメリカのファンクベースのフュージョンとも異なり、反復リフやビートが利いているわけでもない、サンバやボサ・ノヴァのような悠然としたゆらぎ、間隔の長いグルーヴが全体の演奏を支配している。もちろんロック的でもあるが、欧米のものとは何か一線を画す感じが興味深い。
明確な形容は難しいが、南米ブラジルの現地でしか生まれ得ないクロスオーバーサウンドで「ブラジリアン・フュージョン」の名に違わない音楽だろう。全体に熱帯地な雰囲気と言うよりかは涼しげな風の吹く人懐っこいクールさを感じる。クラブで再評価されるもまだまだ現役活動中。安価なのが憚れる良盤だ
聴いた日:09月07日 アーティスト:アジムス
フィル・トークス・ウィズ・クイルフィル・トークス・ウィズ・クイル
57年録音盤。サックス2ホーンの作品は数多くあるが、アルト×アルトという珍しい組み合わせの一枚。白人サックス奏者二人が息の合ったプレイが楽しい。クリアでカラフルなトーンのクイル、勢いがあってパワフルに吹くウッズ。白人らしいカラッとした音がとても聞きやすく、ジャズとして美味しい。
アルトサックスの2ホーンという構成を生かしてお互いの音をぶつけ合う様はエネルギッシュでもあり、音が重なり合った瞬間のハッとするカッコ良さも見逃せない。ハイライトは2と5。どちらもこの盤の魅力を象徴する演奏だ。脇を固めるメンバーも健闘しており、存在感を示す。ジャズの魅力が伝わる良盤
聴いた日:09月08日 アーティスト:フィル・ウッズ&ジーン・クイル
Live & BeyondLive & Beyond
00年発表ライブ盤。自身のバンド、Alien Love Childを率いての地元テキサスでのライヴが収録された作品。エリック・ジョンソン独特の透明感のあるクリアなトーンのギターが軽やかに所狭しと鳴り響くのが心地いい。まるでスタジオ録音のような、ピシッとした演奏だがライヴの臨場感も
ギタートーン自体は非常に洗練された美しいものだが、彼の音楽的な背景はテキサスが地元というのもあってか、ブルースやカントリーといった土臭い音楽がベースになっており、時折透明感の中に現れる濃厚な野趣を感じさせるのが興味深いというよりは特徴になっているように思う。
骨太なサウンドではないが伸びやかでしなやかに弾むコシの強さはロックという以上にルーツミュージックの影響が強いように感じる。一見優男のようだが実は筋肉質、な音楽性が非常に滋味深く、清涼剤のように繰り返して聞きたくなるのが魅力なのだろう。さらにライブのドライヴ感も出て、より楽しい一枚
聴いた日:09月08日 アーティスト:Eric Johnson
マインド・ゲーム オリジナル・サウンドトラックマインド・ゲーム オリジナル・サウンドトラック
04年発表OST。同名アニメ映画のサウンドトラック。思い出波止場やROVO羅針盤といった多岐にわたるユニット、ソロ活動を繰り広げる山本精一による「死の音楽と、その先に見えるもの」というコンセプトで構成された似非ラテン、南米音楽的なユートピアサウンドが繰り広げられている。
眩い生の輝きと底知れない死の闇の狭間を行き来する喧騒というか人間の生きる営みというかそういうのを想起させる楽曲が立ち並び、本編のドラッギーな映像との調和も素晴らしい。俗世を突き抜けて、桃源郷みたいな。ロック、前衛、エクペリメンタル、ラテン、フォーク、クラシック、なんでもござれ。
さまざまな音楽ジャンルが入り乱れているけどが、こういった音楽の横断、クロスオーバー感はどことなくザッパ的でもあり。サントラという以上にアルバムとしても十二分に聞ける一枚。一曲、菅野よう子作曲のトラックも収録。タイトルトラックとラストシーンに流れる葬送曲的なサンバの旋律が好きです。
聴いた日:09月09日 アーティスト:サントラ
DocumentaLy(通常盤)CDDocumentaLy(通常盤)CD
・11年発表5th。前作よりは先進性、というよりプログレ的な要素が薄らぎ、ポップさが強まったがシングル曲の2とそのカップリング曲である13をメインにしたコンプチュアルな作品にも聞ける一枚。曲はダンサブルだけど、歌詞はよく聴くとかなりシリアスに問題を提起している印象を受ける。
都市生活の歪みというか、日々の生活を営む自我の痛みや孤独感を縫い繕うように享楽的なダンスビートが鳴り響くという点では陰影の濃い、翳りのあるアルバムだとも思う。精神の躁鬱感がある感じは非常にニュー・オーダーを彷彿とさせるが、同時に現代日本の情緒感も含んでいるのが興味深く面白い作品だ
聴いた日:09月11日 アーティスト:サカナクション
ハンティング・ハイ・アンド・ロウ -デラックス・エディションハンティング・ハイ・アンド・ロウ -デラックス・エディション
・85年発表1st。代表曲にして大ヒット曲の1で幕が上がるデビュー盤。洗練されたクールなタッチのシンセサウンドに包まれて、北欧らしい透明感のある清新なメロディが響き渡る。ジャケットが象徴するように音はカラフルというよりはモノクロームで青白い色が重なるようなイメージを感じさせる。
ヒット曲の1に目を奪われがちだが、全体に美メロな曲が多く、シンセサイザーに依存している音作りをしてるわけでないことが窺えるし、佳曲揃いなのはメンバーのソングライティング能力の高さ故だろうかと思う。改めて聞いて、地力のあるグループなのだと再確認できた。その実、骨太な一枚だ。
聴いた日:09月13日 アーティスト:a~ha
キング・オブ・クラブスキング・オブ・クラブス
97年発表1st。Mr.Big、RacerXで腕を鳴らしたギタリストソロ名義の初フルアルバムはとことんパワーポップな作品。かとなくブルージーな香りも匂わせながら能天気なサウンドにテクニカルなギターフレーズが暴れ回る。この盤の良い所は単なるギターテクニックのひけらかしになってない点
もちろんHR/HMの分野で鍛え上げた技を惜しげもなく披露してるのだけど、それよりもまず曲の完成度、ポップさを優先して、やりたいようにやってるので、演奏がクドくなってないし、曲自体の出来も中々のもの。シンプルさもありつつ、単純に聞いていて楽しい。音も湿っぽくなくカラッとしてる。
最後の12だけスタジオのジャム演奏をそのまま収録した物なのでここぞと言わんばかりに弾きまくっているけど、それもご愛嬌といったところ。ハードドライヴィンなパワーポップの好盤。個人的にはMr.BigやRacerXより好みです。ポップマニアな面や能天気さでいえばトッド・ラングレンっぽい
聴いた日:09月15日 アーティスト:ポール・ギルバート
アリゲーター・ファームアリゲーター・ファーム
00年発表3rd。ここまでのソロキャリアを一気に爆発させたようなヘヴィ&ポップな一枚。ソロで展開させていたポップなメロディに、HM/HRのフィールドで腕を鳴らせたバカテクギタリストの表情を上乗せした結果、極めて陽的かつ能天気に暴走するサーカス集団みたいな派手さが炸裂している。
イケイケでノリノリに全力疾走しながらも、絶えず笑みをこぼしている姿が目に浮かび、楽しそうだなと思う一方、緩急の目配せも利いていて、割と抜け目ない作り。音もポップだからかHM/HRを突き抜けてパンキッシュなパワーポップにも聞こえるがその下地にブルースや黒人音楽も見え隠れして興味深い
ただ音の密度が高く、アルバム全体の情報量も過多な分、体感する質量は過去作よりもボリューミーでヘヴィ。ズッシリとした餡子の入った鯛焼きのようなもので、このポップな感覚を味わいたい時は心持ちが軽いときがお勧めか。ソロ初期を総括したようなバラエティ豊かな痛快作。
聴いた日:09月19日 アーティスト:ポール・ギルバート
Two Against NatureTwo Against Nature
・00年発表8th。前作「Gaucho」以来20年ぶりの再結成盤。01年のグラミー4部門受賞作。フェイゲンのソロ作 「Kamakiriad」から数えても7年ぶり。その同作の雰囲気を本家スティーリー・ダンにも持ち込んでいるため、音的には似通ってる部分もある。
改めて久々に聞くと、80年代の完全無欠の完璧主義からメンバーが年を重ねたせいもあって、随分と人間が丸くなったなと感じる。というより、演奏のファジーなニュアンスを受け入れることが出来ている点でも20年の年月はけして無駄ではなかったと思える、しなやかなグルーヴがこの盤にはある。
前作の一ミリの失敗も許されないような怜悧な緊張感から、じんわりと体温を感じるような人間くさいオーガニックな感じが盤全体を支配していて、スクエアだけどフレキシブルに形を変えていく柔軟さがこのユニットにおいてはけっこう新鮮味があったように思う。
音もジャズを下地にしたコンテンポラリーで派手さのないロックなのでなにか時の止まったような感覚にも囚われるが、ハードボイルド小説のワンシーンを切り取ったようなノスタルジックな歌詞も相俟って、一幅の絵画の味わい深さも。モノクローム写真がよく似合いそうな一枚。コーヒーと共にじっくりと
聴いた日:09月19日 アーティスト:Steely Dan
Everything Must GoEverything Must Go
・03年発表9th。現時点でバンドの最新作(16年9月現在)。初期作以来、久々の固定メンバーで録音されている一枚。前作からさらに芳醇になったジャジーなグルーヴがひたすらにグッドタイムミュージック。タイトで構築的な演奏だが、音抜けも非常に良く、気持ちのいい音が続く。
美味い酒が熟成されたような味わい。カドが取れて舌触りがまろやかになったが、その核は何一つ変わらない。今回初めて、W.ベッカーがVoを取る曲が収録されている(5)が、何をやってもスティーリー・ダンという銘柄はもはや揺るぎなく存在している。その確固たる音を堂々と響かせているのだ。
この作品後、バンドは再び休止。中心人物であるドナルド・フェイゲンも息の長いソロ活動に邁進していくわけだが、また酒蔵に収められて熟成されているのだろう。願わくばもう一度、スティーリー・ダンで酔いたい所だが、それこそ神のみぞ知るところか。40分強、密度の濃い格別の旋律が響く良盤。
聴いた日:09月20日 アーティスト:Steely Dan
エッグ・ザ・ユニヴァース(紙ジャケット仕様)エッグ・ザ・ユニヴァース(紙ジャケット仕様)
・88年発表1st。ノヴェラに在籍していた平山照継のソロプロジェクトをバンドに発展させての第一作。とことん童話や御伽噺、ファンタジーの素養を落とし込んだ、壮大で幻想的なサウンドが特徴的。ともすれば大仰かつ自己陶酔的なものに陥りかないがこの盤は奇の衒いなく、堂々と見せている。
米田仁士のイラストレーションに象徴されるような豪華絢爛、ど派手にシンセを鳴り響かせるシンフォニックサウンドの構築美は好きモノにとってはたまらないものだろう。楽曲もファンタジックな演劇で流れてきそうな、濃い雰囲気のものばかり。そこら辺は88年という当時の時代の空気もたっぷりあるか。
この時代、海外ではネオ・サイケ、ゴシックなども隆盛し翳りのあるサウンドも流行していたのもありこのアルバムもその流れを汲んだ、壮大さと陰影の濃い色彩がファンタジックな方面に純粋培養されたような印象もある。極東の地でしか生まれ得なかったシンフォニックフェアリーテイルロックの良盤。
聴いた日:09月21日 アーティスト:テルズ・シンフォニア
AjaAja
・77年発表6th。これも中学の頃から聞いてる愛聴盤。フェイゲンとベッカーを軸に当時の一流セッションミュージシャンを惜しみなく起用し、時間をかけてじっくりと作り込んだ豪華絢爛かつスタイリッシュな音がすっと染み込んでいく一枚。ジャケットに写っているのは日本人モデルの山口小夜子
参加ミュージシャンをざっと上げるだけでも、ジャズ/フュージョンの辣腕が揃い踏みしている。カールトンにリトナー、チャック・レイニー、ガッドにショーター、バーナード・パーディ、ジェイ・グレイドン、ジョー・サンプル、トム・スコット、ジム・ケルトナーなどなど枚挙に暇がない。
そんな参加メンバーをとっかえひっかえ、バンド構成を一曲ずつ変えて、録音しているという贅沢の極み。実際、当時のジャズ&フュージョンオールスターズな布陣だけあって、演奏は恐ろしくキメが細かく、味わい深い音が鳴り響く。例えるなら料亭の名店で味わう懐石料理。美味端麗を地で行く。
この盤の凄い所は徹底して音がクールであるというところ。こんな豪華メンバーが揃えば、お祭り騒ぎ的な音にもなりかねないのに中心人物のフェイゲンの拘りと統率力というべきか、恐ろしいほどまでに派手さはないがどこまでも奥行きを感じる音に旨味(グルーヴ)が乗っかってくる。
40分弱のアルバムだが、隅から隅まで丹念に音が彫り込まれている様は尋常ではないが、それをまたさりげなく心地いい音として披露しているのも感嘆せざるを得ない。一瞬で無くなってしまう様な細工にまで全身全霊を感じる名品といった趣。反面、ロックの敷居を高くしてしまった点では罪深い名盤か。
聴いた日:09月25日 アーティスト:Steely Dan
Burning OrganBurning Organ
02年発表4th。前作の弾けたエネルギッシュな感じから、少しマイルドかつシックになった印象を受ける一枚。とはいっても、前作との比較なので相も変わらずやんちゃで楽しそうな雰囲気が伝わってきて、ロックが好きだということを開幕(1)から前面に押し出している。
今までは直球勝負的な縦ノリのハードドライヴィングなサウンドが目立っていたが、本作では少し変化球も織り交ぜて、8では自らドラムを叩いたり、オルガンを使用する曲もあったり、ファンキーなインストなど今まで以上に幅広く音を繰り広げているのが印象的。ちょっぴりオトナになった雰囲気のある一枚
聴いた日:09月25日 アーティスト:Paul Gilbert
Spaceship OneSpaceship One
05年発表5th。ポップな質感でHR/HMを繰り広げているアルバム。とはいえ、肌触りはポップミュージックそのままなので、音圧と重さはさしてなく、むしろ聞きやすさが印象に残る。一方でギターテクニックには磨きがかかり、ここまでのソロ作の中で一番テクニカルに弾いているようにも。
全体的にノスタルジックでもあり、穏やかな趣も感じさせるが、その要因は古き良きHR/HMを再現しようとして、意図したもののように聞こえた。大雑把でいい加減、けどエモーショナルで得もいえぬ気持ち良さと楽しさがある音を目指した結果がこれなのかもしれない。13はビートルズカバーだし。
あと前作でも感じたことだけど、若さゆえのフレッシュさは既になく、さりげなく大人っぽさを出している辺り、全体に音がマイルドに感じさせるせいかもしれない。じっくり聞き込むより、ドライヴや作業のお供に聞き流すのが一番の醍醐味のようにも思う。落ち着いた分だけ、余裕を感じる一枚
聴いた日:09月26日 アーティスト:Paul Gilbert
Richmondo HighRichmondo High
95年発表1st。前身バンド、ロッテンハッツからメンバー三人が分裂して結成された(残りの三人もヒックスヴィルを結成している)。再スタートとなったバンドの初作は非常に素直なポップミュージックという趣を強く感じる内容。等身大のサウンドというべきか、当時の彼らの背伸びしない雰囲気が良い
音はAORアメリカ西部のルーツミュージックを軸に、英国ポップスのフレーバーをふんだんに振りまいて、NWをツナギに使ったような質感が独特。渋谷系のインデックス主義とは異なって、ちゃんと練って構成している印象を持つ。引用のモザイク、というよりは引用先に一味加えている。
英米の音楽が入り混じって、味が調わないではないかという所に彼らの味付けがしっかりと利いていて、派手さはないがその素朴さにホッとする。目立った装飾がないけど、実直にポップスを奏でているのに憎めなさを感じる作品。ベーシックな部分での軸のブレなさがはっきりと分かるメロディアスな良作かと
聴いた日:09月27日 アーティスト:GREAT3
RomanceRomance
97年発表3rd。一般に彼らの代表作として名高いアルバム。実際、その評価もなるほどと頷かんばかりのここまでの集大成感のある内容。彼らの中でも一番「日本の音楽」らしいテクスチャーの色濃い作品のように感じた。ぐつぐつ煮詰めたジャムのような濃厚なポップミュージックが鳴り響いている。
1stでは米西海岸の音楽、2ndではディスコにも脇目を振りつつ、英国音楽をベースに。ここまでの3枚は英米の雰囲気の異なる洋楽を日本のいわゆる歌謡曲やJ-popで繋ぐという方法論で作られているように聞こえて、本作では初めて日本の大衆音楽っぽさが強く出ている印象を受けた。
日本的な情感、憂いや物侘しさのようなウェットな感覚が盤全体の礎となっていて、そこへ過去作の洋楽テクスチャーが重なることで独特な響きを持ったサウンドが成立した。ガワは洋楽、中味は邦楽、みたいな。ここまでのサウンドの完成系がこのアルバムに詰まっている。
反面、ちょっとジメッとしているというか、色々なものを取り入れすぎた結果、全体の荷重がヘヴィになっており、ポップとはいえ沈痛な印象も。あんまりカラッとした音ではないけど、内容は十分に素晴らしいもの。日本のポップミュージックの成熟を感じられる盤だと思う。
聴いた日:09月28日 アーティスト:GREAT3
映画ハピネスチャージプリキュア! 挿入歌シングル映画ハピネスチャージプリキュア! 挿入歌シングル
14年発表SG。同名映画の挿入歌「勇気の生まれる場所」と「見上げれば青い空」の2曲を収録したシングル。何よりも出色なのが「勇気の生まれる場所」。完全に正統派ヒーローソングといった感じで燃え曲と断言できる曲。
収録の2曲を手掛けた、同作の音楽担当である高木洋が元々特撮方面出身の作曲家なこともあって、そのテイストをふんだんに取り込んだ曲だと言える。カップリングの「見上げれば青い空」の穏やかな曲調も相俟って、音楽の触れ幅を感じられる良シングルかと。この手が嫌いじゃなければ、お奨めの一枚。
聴いた日:09月29日 アーティスト:サントラ

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