In Jazz(はてなダイアリー版跡地&元『My Favorite Things』)

ジャンル不問で好きなものを最小単位で語るブログ

「少女☆歌劇レヴュースタァライト -The Live- #2 Transition」インプレッション


「少女☆歌劇レヴュースタァライト -The Live- #2 Transition」
渋谷のAiiA 2.5 Theater Tokyoから天王洲アイルは銀河劇場に場所を移しての舞台版第二幕。TVアニメ全12話の放映からバトンタッチを受けての、「二層展開式少女歌劇」ならではの舞台演劇が繰り広げられました。今回はその舞台のインプレッション記事を書きたいと思います。#1、TVアニメを経て、「変化」「過渡期」という意味合いを持つ「Transition」が冠された今回の#2でしたが、その名に違わず、何かしらの変化、転回があった舞台だと思います。TVアニメが終了し、ソーシャルゲーム「少女☆歌劇レヴュースタァライト -Re LIVE-(以下スタリラ)」の配信を間近に控える中での作品の先を捉えた物語だったといえるでしょう。
前回の記事よろしく筆者の所感を認めたいと思います。ちなみに10/18のマチネ(昼公演)を観劇しました。そして今回は少々ネタバレも含みますので、読み進めたい場合は以下をクリック。スマホなどでご覧になってる方はその点を了承した上でお進みください。




1.公演の構成と基本情報

#1のインプレッション記事を踏襲してまずは演目の構成から。


演劇(ミュージカル)パート:1時間15分(75分)
休憩:15分
ライヴパート:40分


という構成。休憩時間だけはちょっとうろ覚えですが、多分15分はあったはずです。構成そのものに変化はない一方で1部、2部ともに#1よりは若干のボリュームアップしています。この後も繰り返し言う羽目になりますが、今回はなんにつけても、あっという間だったということです。舞台もライヴもめまぐるしく展開が動いていき、気づいたら終わっていた印象で、情報の処理が追いついていない程度には脳内がショートしたといっても過言ではないです。
1部のミュージカルも#1以上に展開の間隙を埋めるようにして、これでもかと劇中曲が怒涛の勢いで畳み掛けられてくるので非常に展開としてはせわしないというか、濃密かつ目まぐるしい演技だったといえるでしょう。殺陣あり、歌唱ありでほとんど全速力のフルマラソンのような様相で、キャストの皆さんよくバテないなと思ってしまうほどでした。
それと#2には新キャストが登場。その前にあらすじを紹介しておきましょう

第100回聖翔祭。
聖翔音楽学園99期生の華恋、ひかり、真矢、純那、まひる、なな、クロディーヌ、双葉、香子は、
9人で演じた『スタァライト』のステージで観客の賞賛を浴びた。
一週間後、舞台の感動の余韻を噛みしめる者、“スタァライト"ロスに陥ってる者、すでに来年の第101回の聖翔祭に向けてレッスンに勤しむものなどなど、
なんとなく落ち着かない時間を過ごす彼女たち。
そんな中始まった、青嵐総合芸術院との交流プログラム。
スタートから青嵐のレベルの高さに翻弄される華恋たち。
さらに、誰もが想像しなかった過酷なオーディションの開催が再び告げられ……。


以上、#2のパンフレットよりあらすじを抜粋。
ここで語られている、青嵐総合芸術院の先生と生徒の計四人が新キャストです。反対に#1に登場した鶴子先生、烏丸先生は今回出演されていませんし、華恋たちのクラスメートを勤めたアンサンブルの皆さんは舞台創造科の生徒という立ち回りとなっていますので、キャスティングの面でもかなりの変化があったといえるでしょう。
新キャストの役柄は以下のとおり。


八雲響子(青嵐総合学院教師):小林由佳
柳小春(青嵐総合学院主席);七木奏音
南風涼(みなせ・すず):佃井皆美
穂波氷雨(ほなみ・ひさめ):門山葉子


この中では一番有名なのはアイドルグループ、私立恵比寿中学の元メンバーである七木さん。ネルケ版の美少女戦士セーラームーンミュージカル」で華恋役の小山さんとは共演していた時期(小山さんがマーキュリー、七木さんがマーズ)もあり、また映画「告白」にも出演されているお方。佃井さんは特撮畑出身でかのアクション俳優・千葉真一さんの設立したジャパン・アクション・クラブを母体としたジャパンアクションエンタープライズ所属のアクション俳優で仮面ライダー鎧武」では変身前と変身後のスーツアクターをこなしています。小林さんはアクロバティックパフォーマーとしても有名らしく、こちらもネルケ版の「美少女戦士セーラームーンミュージカル」に出演経験があります(先に挙げた二人とは時期的に共演してませんが)。門山さんが一番キャリア的には浅い方ですがこの方も声優業と女優業をこなしてるので実力のある方でしょう。
そんな感じで。以上からも分かるように、完全に舞台畑から引っ張ってきたという印象が強いキャスティングですね。もちろん舞台版を製作しているネルケ・プランニングのことを考えれば、当然と言えるのですが。新キャストの皆さんの演じる役柄を考えると、実力の高い人たちを選んだのだなと思われます。それくらいに劇中での彼女たちの存在感は強烈なものだったといえるでしょう。


2.気になったところ
さて、肝心の内容ですがこちらも前回を踏まえて、気になったところをピックアップしてざっくりと語ります。


・怒涛の情報量とノリの勢い
・新キャスト、青嵐総合芸術院の鮮烈さ
・愛城華恋の不完全燃焼さ
・気になる今後は…?


まず一つ目。#2のミュージカルパートは全体的な印象としては「TVアニメ終了後に製作された東映まんが祭りライクな劇場版的展開」でした。#1と比べても非常に内容濃く、めまぐるしい勢いであっという間に過ぎ去っていったというのが第一印象。タイトルの通り「Transition(変化・過渡期)」らしく、#1で使用されたプレコールなどの劇中歌の歌詞がクラブミュージックでのREMIXのように、TVアニメ版や前回#1の展開を受けて、キャストの成長を踏まえたものに「変化」しているのが興味深く感じられました。またそれらを受けて、99期生の面々の関係性と立ち位置も微妙に変わっているのにも目を引きます。物語が第100回聖翔祭後、つまりはアニメ版最終回以後の展開であることもより一層#2の舞台に影響を与えているようでもあり、「二層展開式少女歌劇」である強みが感じられた部分でもあるでしょう。
ただ同時にそのすさまじい勢いと75分という尺に過剰なまでに込められた情報量に押し切られただけではないか?という思いにも駆られたのも確か。その矢継ぎ早な場面の切り替わりや、劇中歌の導入などなど、ノリと勢いのままにかなり力技で持っていった感も強く残り、前回よりも粗が目立ってしまったように思うのです。また#1以上に物語に関わりを持つキャストが4人も増えたために尺を圧迫して、構成全体のメリハリ感に欠けていたのも事実。前回に感じられた展開の緩急はほとんどなく、とにかくスピーディに、めまぐるしい勢いで物語が展開されていったので筆者自身、目の前で繰り広げられる展開を咀嚼する前に次の展開がどんどん押し寄せてきて、それに追いつくというよりだた眺めていくのが精一杯でした。なんというか非常に「お祭りムービー」的な様相が強かったので、ハイテンションのまま振り回されたような心持ちです。なので、一度見ただけでは噛み砕けていない部分がかなり多いのも事実。もちろん何かしらの関係性をピックアップして見ていけば、尊いものがあったの確かですが全体を見渡すには何度か見返さないと把握はできないかなと。なので早くBDを出してください(切実)
あ、当然だけど面白く見ましたよ。不満が残る部分も多々ありましたが、今回は真の意味で「二層式展開少女歌劇」だったわけなので、その最初の興行としては噛み合わない部分も目に見えてあったというだけで、もし今後、「再演」等々があった場合の改善点がかなりあったということではないかと。
二つ目。これは声をかなり大にしていいたいのですが、青嵐総合芸術院の皆さんが非常に強烈過ぎた…! 最初の項でキャストを紹介しましたが、皆さん実力者ぞろいなもの確かなのですが、99期生の九人にはない個性なのも相まって、とても魅力的なキャラクターを演じられていたなと。いわゆる「劇場版オリジナルキャラクター」の側面が強かったわけですが、青嵐(初夏の青葉を揺すって吹き渡るやや強い風)の名の如く、99期生の面々に波風を立てる役を好演していたかと思います。なにより99期生と対峙するのが三人ということもあり、彼女たちの劇中歌も力強さとシャープな勢いで切り込む歌唱でカッコよさが押し出されていたのが印象的です。
物語的には#1、TVアニメで築き上げられた99期生たちの関係性を揺り動かす役割(この辺りは筆者もなんとなく#1の再演後に予想はしていました)で各カップリングが彼女たちと向き合う展開でした。主席の柳小春は真矢クロ、南風涼はまひるとの因縁があり、穂波氷雨はばななの中学時代の同級生、といった感じで、それぞれがそれぞれに因縁のある中で今の関係性に入り込んでくるバーターとして、「変化」させようとする。青嵐の生徒たちに向き合った99期生たちははたしてどうするか。また生徒たちの因縁以外にも、#2の物語の仕掛け人である八雲先生が、得意にしていた殺陣を打ち負かされた双葉に言い寄ってきたりと、外部の学校が聖翔音楽学園に対して揺さぶりをかけてくるのが今回の物語の骨子だったと言えるでしょう。「戯曲スタァライト」を盗む、奪い取るという辺りもそういったテーマの下に繰り広げられたものでもあるでしょうし、それらは同時に他校との対戦する状況があると、聞こえてくるスタリラの基本設定をも踏まえたものであるのも窺えて、間もなくやって来るゲームへの導入になっているのも注目されるべき点でしょう。ちなみに筆者は涼=小春>氷雨な感じで好きです。みんな好きですが。
三つ目。#2においての華恋の立ち位置が#1以上に捉えにくいものだったという点について。いやこれ、かなり問題点だと思うのですよ。本来主役であるはずの華恋が今回のめまぐるしい展開の中でほぼ完全に蚊帳の外に置かれていた事実を見逃してはいけません。いえ、今回の冒頭で彼女が燃え尽き症候群(スタァライトロス)に陥ってしまっていたことが示されていましたがそれにしても、です。それに加え、#2は聖翔音楽学園vs青嵐総合芸術院という構図である以上、彼女が突出するわけでもなく99期生が青嵐生と「スタァライト」を賭けて戦うという流れなので、結果的に彼女が没個性気味になってしまったというのもシナリオの構成上、致し方ないのかもしれません。ただこの華恋の没個性感は今に始まった話ではなく、#1やアニメ版でもそれとなく示されているものでもあるんですよね。#1では華恋は舞台創造科(=観客席側)の教室で居眠りをしていたことやアニメ版でもひかりとの再会までは俳優育成科のワン・オブ・ゼムだったわけありますし、特に#1の「ポジションゼロへ!」の立ち居振る舞いなどなど、周りに彼女の存在が認識されていなかったり、そうでなかったりを繰り返しているような演出が施されているようにも感じられます(特に華恋に当たるスポットライトなどに注目してみるとかなり顕著です)。#2ではそれがさらに誇張されているのです。もちろん彼女がスタァライトロスに陥っているのもありますが、同時に「ひかりとトップに立てた以上、この先はどうするのか?」という問いが投げかけられてもいますが、「舞台少女は日々進化中」以上の答えが出てこないのはなにか不完全燃焼のようにも感じられてしまいます。ひかりをはじめ、華恋以外の8人は差はあれど、次なる第101回聖翔祭や将来のことを思い巡らせるようになっているのも重なって、華恋自身の「先行き」が不透明であるのが#2全体の締まらなさにも響いてしまっているのかなと思うわけです。ばなながかつて第99回聖翔祭に囚われて「運命の舞台」を「再演」し続けた状況に華恋もまた陥っているとも考えられますが、またちょっと違うような気もするのですよね。それはアニメ版の9話でも触れられたように実は華恋がイレギュラーであるということが分かっているからだと思います。無自覚ではあるんですが「少女☆歌劇レヴュースタァライト」という物語自体が華恋によって導かれているものと推測するならば、彼女の内に秘めるものもまた虚無であるからなのです。#2を振り返ってみても、華恋は自分のために怒っているのではなく、八雲先生に利用された舞台少女たちのために怒って「アタシ再生産」してるわけですし、#1やアニメ版はプロセスは違えど、ひかりの為にレヴューオーディションの舞台に立っているわけですから、「こうなりたい!」という発露が華恋の内から出てきていないのです、今の所。だから今回、「Transition(変化、過渡期)」というタイトルがあるように、華恋という登場人物においても主役としての「過渡期」を迎えていたという風にも受け取れる展開でもあったわけで、それ含みでの不完全燃焼なのかなとも邪推できてしまうわけですね。しかも他の8人が「変化」を迫られるレヴューオーディション(なのかどうかも#2では怪しいのですが)に対して、TVアニメ版で「再生産」と「あなたの望んだその星」を果たした事を経て、#2の「変化」という問いに対して前向きに対応しているのにも拘らず、華恋だけはなにか停滞した印象を感じてしまうわけですね。それが意図的なものだとしたら、と思うと創造は広がりますね。もちろんそういう意図はないのかもしれないので、心に留めておく程度でいいと思います。
四つ目。ここまで見てきたことを踏まえると、やっぱり今後の作品展開は何かしらあって然るべきだと思います。当たっているか定かではありませんが愛城華恋というキャラクターを考えれば考えるほど、#2で終わりはないだろうという印象が強くなってきますし、出なければはっきりと「過渡期」という意味を含むタイトルをつけてくるはずはない、という想いにも駆られます。どちらにしても舞台少女たちは華恋に引っ張られてきた以上、彼女たちが華恋を引っ張り上げなければ、物語の収拾はつかないと思うのです。何か発表があるとすれば12月の2ndスタァライヴで告知されるはず。アニメ2期は準備がかかりそうなのであるとすれば#3の告知か、#2の再演か。この先どうなるか分かりませんが、何かしら作品の展開があれば嬉しいですね。


3.ライヴパートについて
2部のライヴパート。前回より10分増しになった分、少し曲数が増えましたがMCなしで一気呵成に聞かせる構成は変わりなしです。ただ銀河劇場の運営上の規制なのか、ライヴパートでもスタンディング厳禁だったので#1での通常ライヴのような熱っぽいノリやコール、ミックスなどはあまり感じれなかったかなと。とはいえ、しっかりと盛り上がっていたと思います。
以下はセットリスト。

1.星のダイアローグ(スタァライト九九組)
2.ディスカバリー!(同上)
3.Circle of the Revue(GANG☆STARS)
4.舞台少女心得幕間(情熱組)
5.Star Divine(華恋&ひかり、青嵐三人娘)
6.99 ILLUSION!(スタァライト九九組)
7.Green Dazzling Light(同上)
8.Glittering Star〜カーテンコール〜(メインキャスト全員)&告知

始まりはプロジェクションを使って、TVアニメ版のOP映像と実際のライヴの幕開けをリンクさせる演出。当然ながらもアニメからの新規ファンも意識した造りとなっていて、心憎い印象でした。ご覧のとおり、セットリストの選曲はTVアニメ、ひいては大千秋楽の日に配信が開始されるスタリラを見越しての選曲。当然ながら舞台版シングルとしてリリースされた新曲「99 ILLUSION!」、「Green Dazzling Light」は本興行が初披露です。1部のミュージカルパートの勢いそのままにあっという間に終わってしまったという印象がありましたが、それはそれで。
面白い仕掛けだったのは3〜5。CD音源だとスタァライト九九組全員で歌う楽曲ですが、そこをユニットで歌い分けた、というのがうれしい誤算だったかと。ユニット名は勝手に付けたものなのでご了承を(キャストさんたちがTwitterで呟いているのを参照させていただきました)。3は「GANG☆STAR」を歌った富田さん、相羽さん、生田さん、伊藤さん。4は「情熱が目覚めるとき」を歌った佐藤さん、岩田さん、小泉さん。どちらもらしさがあふれた歌唱で楽しめました。特筆すべきは5でしょう。主役の小山さん、三森さんに加えて、今回新キャストとして出演した七木さん、佃井さん、門山さんが「Star Divine」を歌うという強力なパフォーマンス。お三方とも芯の通った力強い歌声が九九組の面々とは違った魅力を放っていました。歌い方のシャープさ加減で言えば、一枚上手でもあったとすら感じます。まあ、1部であれだけの存在感を出していれば、実力のほどは頷けるものだったといえましょう。それだけ三人の魅力が強烈でありました。
正直もっと見ていたいくらい。
最後はクロージングナンバー8(ちなみにこれも歌詞が微妙に#1のものと違っていた)とともに全キャストが出てきてカーテンコールとその他もろもろの告知。BD発売と2ndスタァライヴの告知、スタリラの告知に来年一月に発売される5thシングルの告知。自分が見た公演では5thシングルの告知をした岩田さんが噛んでしまうハプニングを受けて、小泉さんが「再演、ポジションゼロ」のドスを利かせた声でやり直したという微笑ましい場面も。#1よりも10分ほど長くはなりましたが、それでもあっという間に過ぎてしまったのは最初に言ったとおり。最後も同じように小山さんと三森さんが舞台の両端でお互いの顔を見て、示し合わせて去って行って、おしまい。
といった感じでした。今回は1部から怒涛の情報量がつぎ込まれていて、それを処理するのに手一杯な感じもありましたが。総合的に見るとまた楽しい舞台を見ることができたという印象が先に立ちます。


《終わりに》
取り急ぎ、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The Live- #2 Transition」のインプレッションでした。一回見ただけでは咀嚼できない&理解する余裕を与えないスピーディな舞台だったので、本気でBDを早く出してほしいところです。一応、大千秋楽のライヴビューイングを見に行く予定なので、そこでもう一度じっくりと確かめてみたいところです。多分、何かしら次の展開がありそうな予感はしてますがそれがどうなるかは、これからの公式発表を心待ちにしたいところです。もうすぐアニメ版のBD-BOXも発売されますし、筆者的にはまだ感想記事が残っているので、そちらも書きつつ(もう少しお待ちください)、待ちたいと思います。また何か気づいた事があれば、何か書くと思いますのでよろしくお願いします。
次回はまた感想記事になると思います。それでは。