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話数単位で選ぶ、2014年TVアニメ10選+α

さて、今年もやってまいりました。話数で選ぶ、2014年TVアニメ10選です。
「話数単位で選ぶ、2014年TVアニメ10選」参加サイト一覧: 新米小僧の見習日記
こちらのサイト様に集計されている恒例行事ですね。
毎年、放映されたTVアニメの中から話数単位で面白かった回を選ぼうという企画です。

ルール
・2014年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。


本ブログは4回目の参加となります。
当ブログ過去の10選は以下のリンク。
話数単位で選ぶ2011年TVアニメ10選 - In Jazz
話数単位で選ぶ2012年TVアニメ10選+α - In Jazz
話数単位で選ぶ2013年TVアニメ10選+α - In Jazz
そんな感じで筆者の独断と偏見で選んでいこうと思います。
そして今年もおまけもご用意しましたのでお付き合いいただければと思います。
並びは特に順位ではないのであしからず。
今回は初回放映日も付け加えてみました。
では始めて行きましょう。
なお一応、敬称略です。


《話数単位で選ぶ、2014年TVアニメ10選》


1.ピンポン THE ANIMATION 10話「ヒーローなのだろうが!!」(6月13日放送)

脚本・絵コンテ:湯浅政明
演出:EunYoung Choi
作画監督:伊東伸高、浅野直之、戸田さやか、西垣庄子
《ひとこと》
ペコVSドラゴンの準決勝の一幕。
松本大洋キャリア初期のテーマである「天才と凡人」の集大成的な作品「ピンポン」。
それを湯浅政明監督が見事にアニメ化した。
正直、この監督スタッフなら面白くならないわけがないという作品だったので、
1エピソード選ぶのが大変だった。それこそ、6話とか8話とか。今も思うと5話とか9話も捨てがたい。
キャストでいうとアクマ役、木村昴さんやチャイナ(孔文革)役、文曄星さんの熱演とか、ね。
とかく後半の話数はどれも面白い。正直どの話数も10選入りしかねない位だ。
だからどれでもいいというのも本心としてある。
アニメピンポンで恩恵を受けたのはオリジナル描写の多かったドラゴンとチャイナだろう。
選出した10話はED演出も手がけた副監督、EunYoung Choiさんの演出。
シリーズ全体としても動きより演出方面に際立った作品だと感じている。
10話はドラゴンのアニメオリジナルエピソードでの積み重ねとEDの鳥が重なる演出が際立っていた。
エピソードとしても天才と凡人の「分かれ目」こそ、「楽しみ続けられるか否か」と描いた回だった。
ドラゴンに架けられていた卓球を続ける「義務」という足枷を外したのは、
他ならぬ、いつまでも卓球を「楽しみ続けた」ペコだったという。
そのメタファーを「鳥」と「飛翔」に繋げた演出が非常に見事だったと思う。
そして湯浅監督もまた、アニメーションという分野でどこまでも高く「飛翔」し続けている。



2.スペース☆ダンディ 第20話「ロックンロール★ダンディじゃんよ」(8月17日放送)

脚本:うえのきみこ
絵コンテ・演出:山本沙代
作画監督伊藤嘉之、稲留和美
《ひとこと》
ボンズの「日本アニメ(ーター)見本市」だったスペース☆ダンディ
渡辺信一郎総監督の代表作「カウボーイビバップ」が70年代オマージュだったのなら、
本作は80年代オマージュ。
ただまあ自分の感覚としてスタイリッシュな話やサブカルな話より、バカ話のほうが好きだったかな。
で、選んだのはバンド回。
というか上條敦士の描くキャラクターがTVアニメで動く時代が来たか!と思わずいられなかった。
スタイリッシュにギャグ演出やると言う、上條敦士の漫画みたいな演出した山本沙代さんに拍手したい。
ダンディたちのバンド、DROPKIXの元ネタは明らかに吉川晃司と布袋寅泰のCOMPLEXなんだけど、
その80年代感バリバリのエコー&ディレイのかかった持ち歌を作曲したのが向井秀徳なのも面白い。
展開も80年代の映画みたいなノリで、スタイリッシュにダサかっこいいのがいかにもらしい。
いちいち小ネタが面白くて終始笑えたのが選考理由です。
なんにせよ賑やかな作品で全編楽しかった。
んで↓は元ネタ。


3.トライブクルクル#09「魅せてステップ!カノンの学園祭」(11月30日放送)
トライブクルクル - tribecoolcrew - Official
脚本:浅川美也
絵コンテ・演出:誉田晶子
作画監督:小島彰
《ひとこと》
日曜の朝にやっているダンスアニメ「トライブクルクル」。
現在、中学校の選択必修科目に「ダンス」が入っているのでそういった関連もあるはず。
ダンスを通じて、楽しさや喜びを知っていく少年少女の物語。
選出回はヒロイン、カノンが学園祭のダンスコンサートで踊ることになるが、
彼女は趣味のストリートダンスを隠してた事実があり、バレて咎められることを懸念して、悩む話。
ハネルという男の子サイドの主人公に比べて、カノンサイドのエピソードは内面描写に優れているのが最大の肝。
カノンはストリートダンスに対して内罰的な側面を持っているんだけど、それを周りが打ち解かしてくれる。
案ずるより生むが易しというか。
本人のやりたいという気持ちに邪さがない限り、理解してくれる人はいるし、支えてくれる人がいるというエピソード。
それが丹念に描かれていて、キャラの精神的成長に繋がっているのが技ありの一言。
と、同時にチームのダンスが完成する回でもあり、いい回だと思います。
ちなみに公式の動画で1話が公開中です。こちらも面白い話数でどちらか迷いましたが、ここはエピソードの良さを優先。

よく考えれば、1話のクライマックスにおける鏡のシーンの立ち位置が二人の物語での役割そのものだよなあ。
あと個人的にご当地アニメとしても楽しんでます。
こういう楽しみ方できる日が来るとは思ってなかったなあ。


4.ハピネスチャージプリキュア! 第30話「ファントムの秘策!もう一人のキュアラブリー!」(8月31日放送)

ハピネスチャージプリキュア! 【Blu-ray】 Vol.3

ハピネスチャージプリキュア! 【Blu-ray】 Vol.3

脚本:田中仁
絵コンテ・演出:筆坂明規
作画監督:織岐一寛、近藤瑠依
《ひとこと》
今年のプリキュア枠。
これもいろいろ選考に悩む話数が多いけど、自分はあえてこの回を選出。
この回があったからこそ、44話や劇場版が響いてると感じているから。
アンラブリーという要素がネタ的に取り沙汰されがちだが、
その実、キュアラブリーこと愛乃めぐみの内面を深く抉ってきた回だと思う。
今年のモチーフのひとつである「鏡」
鏡に映し出されためぐみの「影」こそがアンラブリーだと考えるとものすごく意義深い。
めぐみはなにゆえに「他人の幸せ」を願うのか、なにゆえに「自らの幸せ」を求めないのか。
そこの一点を突かれると、途端に脆弱になってしまう彼女のキャラクター性を炙り出した一話だと思う。
めぐみの「強さ」は常に「自らの弱さ」と表裏一体だ。
だが「幸せ」に対して「真っ直ぐ」な分だけ、それに救われた仲間がいて、助けてくれる。
それこそがめぐみが持つプリキュアとしての「強さ」なんだろう。
それゆえに「ビッグな愛」なんだろうなあとか。
シリーズ主役である愛乃めぐみのパーソナリティを転回させた、きっかけのエピソード。
作画演出においてはかなりバラつきのあるシリーズだが、このテーマ自体にはまったくブレがない。
作品の世界状況も含め、やはり実験要素が強い作品だと感じた。
愛乃めぐみ (あいのめぐみ)とは【ピクシブ百科事典】
ちなみにめぐみの人物像考察には上記のピクシヴ百科事典の説明がものすごく詳細なので必見。
いちいち頷くこと請け合いです。


5.愛・天地無用! 第38話「押収捜査」(12月9日放送)

愛・天地無用! 参 [Blu-ray]

愛・天地無用! 参 [Blu-ray]

脚本:吉原じゅんぺい
絵コンテ・演出:安藤良
作画監督:萩原正人、石井ゆみこ、早瀬真紀子
《ひとこと》
ほぼ10年ぶりの天地無用!
しかもショートアニメ(5分)枠。
さらに阿重霞の声優交代や原案者不参加などなど。
オールドファンにとっては非常にネガティヴな情報が飛び交っていたが、
フタを開けてみればいつもの天地だったっていう。
まあ、OVAというかTV版のパラレルで新設定が出てくる作品でした。
それはそれとして。
別に選出した理由は懐かしさによるものじゃない。
この回の内容はかなり他愛のないものだが、
自分の目を引いたのは演出だったり、レイアウトだったりだ。
昨今、動画サイトの隆盛もあって、ショートアニメが注目を集めている現在。
一時期はギャグなどが多い枠だったが、最近はストーリーものや作画演出方面で中身を伴ったものも出てきている。
選出話数もそういった所でレイアウトだったりを凝っていたように思う。
とはいえ、奇抜なことをやっているのではなく、
5分という短い中にも情報を詰めよう、絵的に退屈させないようにしようという配慮が為されていた。
またショートアニメだからこそ製作スタッフの力量がダイレクトに現れるのだと思う。
この話の演出・絵コンテを担当された安藤良さんは、
ラブライブ!2期12話のライヴシーン演出(京極監督と共同)をされた方の模様。
安藤さんの演出された生徒会選挙編(36〜40話)はどの回も絵的な見所が多くて、すごく好きですね。
その中でも一番凝ってたと思う回を選出してみました。
なにげに平川哲生さんが参加してたり、いろいろ隠れた演出アニメだったと思うのです。
惡の華」勢と「ピンポン」勢と「ラブライブ!」勢がスタッフ的に交錯してたとも言えなくない。
他にも脚本・演出・絵コンテを一手に務めた話数のある倉谷涼一さんなど、
AIC PLUS+は、面白い人材が出てきているなあと。


6.プピポー!第5話「線路は続くよ、あの世まで」(1月17日放送)
http://pupipo.tv/
脚本:中條元史
絵コンテ:玉川真人
演出:宇都宮正記
作画監督:牧野竜一
《ひとこと》
先ほどの選出回繋がりでもういっちょAIC PLUS+作品より。
こちらもショートアニメにして、現時点で押切蓮介作品唯一のアニメ化作品。
今年の後半期に著作権問題でミソをつけてしまった感がありますが、
この作品も演出が素晴らしかった回だと思う。
ヒロインは若葉、転校先で友達になった礼子を文字通り死の淵から助け出す回。
個人的な驚きとして、ショートアニメでも連続ドラマの作劇演出のカタルシスが得られることが凄かった。
そしてなにより霊媒体質で悩む若葉の孤独を救っていた礼子も、
若葉によって救われていたという友情の描きが良かった。
その展開、情報の詰め込み方は30分1本のTVアニメと遜色がないくらいだろう。
原作の面白さももちろんのことながら、短い放映時間枠で作品の魅力をきっちり外してないのは、
プロの仕事の凄さを感じさせる。
ちなみに演出の宇都宮正記さんは愛・天地無用にも参戦してる方で、担当回では編集も手がけてますね。
また「ピンポン THE ANIMATION」の5話にて演出も担当されており、頭角を現している方だろうと思います。
上記選出回と並んで、AIC PLUS+が面白いことになってるなあという、今年のショートアニメの印象でした。
で、いつになったら、ソフトは出るんですかw


7.ナンダカベロニカ第7話「ウタッテベロニカ」(3月18日放送)
NHKアニメワールド ナンダカベロニカ
脚本:黒住光
絵コンテ・演出:加藤道哉
作画監督浅野直之
《ひとこと》
今年の春に突如として現れたNHKEテレのアニメ。
10分作品全10話にして毎日放送というスタイルだったので、
注目される前には既に放送が終わってた感の強い作品ですが、出来は極上。
ジブリの作品などに参加されている小西賢一さんが参加されているのもあって、CGパートとかも凄かった。
前述の「スペース☆ダンディ」を80年代オマージュだと定義したけど、
これって結構、時代的な流行で音楽やファッションでも、
70年代末期〜80年代のバブルガムっぽさをソリッドにリデザインしたのが2014年現在のトレンドだったりする。
さらにセンスの鋭い人になると90年代オマージュに向かってたりしてて、
この作品はその90年代オマージュ作品だと思う。
分かりやすく作品等々をあげるとすると、「ウゴウゴルーガ」とか、それこそ「クレヨンしんちゃん」をはじめとする、
アニメーター時代の湯浅政明が関わった作品が浮かんでくる。
ファンシー&カオス、デジタル/アナログ、メジャー/マイナーのごちゃ混ぜ感が強かった、
90年代をリデザインしているのだ。
そんな作品だからこそ、NHK的な教育テーマが乗っかると面白かったりする。
人はなぜ歌う?というテーマを見事に描いてたのにも驚くべきだが、
個人的にはこの話数のメインキャラ、ケイコのキャラ設定だ。
小学生なのに弾き語りが趣味で、カート・コバーン(作中には名前は出てこないけど)を崇拝してる辺りの感覚!
よくよく考えれば、90年代ももはや15〜20年前。
十年一昔の単位で言えば、一昔半〜二昔前だ。
当時の反体制、キッズのヒーローだった、
ロックスターが子供向けアニメのキャラ設定にされる感覚に隔世の感があったりなかったり。
あとケイコの母親がロックバー経営なんだけど、
声優さんが知る人ぞ知るガールズパンクバンド「ロリータ18号」の元ギタリストだったりするキャスティングもすごい。
他にもちりばめられた音楽ネタにニヤリとできる、そんな回ですね。
どの回も良かったけど、他には攻殻機動隊っぽい場面のある5話とか哲学的な4話とか8話とか
語尾が「〜ですメタル」な少年エージェントとか、90年代感のある小ネタも面白い作品でした。


8.寄生獣〜セイの格率〜stage:12「こころ」(12月24日放送)

寄生獣 セイの格率 Blu-ray BOX I

寄生獣 セイの格率 Blu-ray BOX I

脚本:米村正二
絵コンテ:清水健一
演出:山城智恵
作画監督:櫻井邦彦
《ひとこと》
滑り込みで文句なしの選出。
アニメ「寄生獣〜セイの格率〜」を考える。 - In Jazz
直前の記事だけど、こういうことも書いて、アニメ版も原作とは違った魅力が出ている作品。
その真骨頂というか、魅力が全面に出ているエピソード。
原作に滲み出る雄々しさを包み込む形で女性キャラの母性や雄への感覚が強調されているのが最大の肝で、
大幅にリファインされた加奈の揺れ動く「こころ」を描ききった上での悲恋。
それがまた後への展開に波紋となって広がってゆく。
人間とは何かという根源的なテーマを持つ原作を、
新しい切り口で、また映像として映し出している事こそ、アニメ版の意義であるし、
選出の話数は監督自らの絵コンテを手掛けた渾身のエピソードだと思う。
人間とは何か、それ以上に繋がることとは何か。
先に記事で書いてしまった部分も大きいが、
自分の予期していた演出がばっちりはまっていたのが最大の理由。
アニメ版は加奈は異性(または寄生獣)への獣性に惹かれる、女性として描かれていたと思う。
その描きを理性や感情を超越した生物本能の欲求だと見ると余計に味わい深い。
女性側もまた孤独を彷徨い、つがいになる相手を希求しているのだと。
新一を追い求めて、すれ違ってしまった加奈の本能の行き先は───。
その積み重ね方が原作とは違った、アニメ版の真骨頂だと思った。
セイの格率とはなにか。
2クール目もじっくり注視していきたい。
今年はこれとピンポン THE ANIMATIONという原作付アニメが、
男性主人公の復権を奇しくも描いていたなあと感じている。
ペコは絶対無敵のヒーローで、
新一は安住を求めて彷徨う雄。
ちょうど小学館作品と講談社作品の傾向の違いとかも現れてて、面白いんじゃないんでしょうか。


9.キャプテン・アース 第25話「キャプテン・アース」(9月21日放送)

脚本: 榎戸洋司
絵コンテ・演出:五十嵐卓哉
作画監督石野聡、石橋翔祐
メカ作画監督:吉岡毅、大塚健
《ひとこと》
キャプテンアースは1話でも2話でも19話でも23話でもなく、最終回をとにかく推したい。
正確に言えば、クライマックスからラストに至るまでの5分間が本当に素晴らしい。
23話はウテナ34話、ホスト部13話、スタドラ22話みたいなものなので、特に目新しさはない。
いわば榎戸洋司という脚本家のお家芸である。
1ファンとして目新しさで言えば、圧倒的に25話なのだ。
だから25話のクライマックスに行き着くまでは全て過程であり、
その「瞬間」を見せてくれただけでも、この作品は心に刻まれた。
もちろん難点があることは否めないし、描ききれなかった部分もある。
内容については近いうちにきちんと語りたいと思うので多くは語らないが、
ある一点を突破した事が最大の評価点であり、選考理由だ。
上記の「寄生獣〜セイの格率〜」の描こうとしていることの発展と言うべきだろうか。
セカイ(あえてこう書く)の命運がどうのこうのという話ではなく、
極めてパーソナルなテーマなのだ。
ただそこは閉鎖された空間ではなく、果てなく広がるセカイの片隅で起こった奇跡のような、普通の営みだ。
20年前にはただただ断絶していた。
今、セカイはコネクトしている。
だからこそ問われているのは、「生命」なのではないだろうか。
その答えというわけではないが、自分の思い描いていた形を見事にやってのけてくれたのが、この話数なのだ。
一切の曇りなく、どこまでも純粋に。
ここからが「始まり」なのだ。
いよいよ次の段階へと踏み出す時が来ている。
10年前に庇護され、8年前に救われ、4年前には救い、そして今───
次はどんな物語が待ち受けているのだろうか。
興味は尽きない。
セカイは終わった。
終わったからこそ、開く世界が間違いなくある。
自分はそれを待ち望んでいる。



10.サザエさん 作品No.7056「波平親切騒動」(2月9日放送)
サザエさん トップページ - フジテレビ
脚本:城山昇
演出:村山修
作画監督:関本典孝
仕上:瀬崎文男
美術監督佐藤博
《ひとこと》
最後は特別枠。
2014年の出来事として記憶に留めておきたい。
1月27日。
それは突然だった。
声優、永井一郎の死去。
磯野波平は言うに及ばず、演じたキャラは有名なものだけ挙げていっても数多くある。
恐らく日本という国の国民の大半が、一度は聞いたことのある「声」だ。
いつも変わらずあった「声」への喪失感は大きい。
サザエさんはストイックに「いつもの日常」をずっと描き続けているアニメだ。
何があろうとも「変わる」事がない。
それはこの永井一郎が亡くなっても、同じだ。
生前最後の「サザエさん」が波平メイン回なのも、何かの巡り合わせだろうか。
しかし、サザエさんという作品は「いつもどおり」だった。
45年に渡る放送で家族の大黒柱を演じてきた、オリジナルキャストがいなくなってもなお、だ。
「日本のTVアニメ」を考える上で、「人々に認知される」ということは大事だと思う。
認知の範囲が狭ければ、一部の人々の嗜好物でしかない。
範囲が広ければ、広いほど「アニメ」という媒体の認知は広まっていく。
サザエさん」というアニメは日本全体に浸透している作品だと思う。
長く続くという以上に、日曜夕方のあの時間帯で全国ネットで放映されるからこそ、
「いつもどおり」に安心して、日々を過ごせる。
結果的に見れば、「日本アニメ」の「防波堤」のような作品なのだ。
サザエさん」という形で「アニメ」が認知され続けているから、
他のアニメやその表現が世間に許容されているのだろうと考える。
もちろん一概にそうだと言えるものではないと思う。
だが、アニメが不健全な物としてぞんざいに扱われる場合の反証として、
サザエさんのような作品が影響を強めるのだ。
健全なものも不健全なものも、面白いものもつまらないものもあって、
アニメを見る楽しさの幅を広げてくれる一端を担っているのは、否定できない所ではないだろうか。
光があれば、影がある。
「良心」という形で変わらず存在し続けているから、今のアニメの隆盛もあるのでないか。
永井一郎の「波平」はいなくなり、茶風林の「波平」へとバトンタッチした後も、
サザエさん」は「サザエさん」のまま、歩みを止めない。
これまであったメインキャストの交代と同じように今回も淀むことなく進んだ。
そんな作品なのだ。
戦後TVアニメの黎明より活躍してきた声優の死でまた「アニメ」は一つの区切りを迎えたわけだが、
サザエさん」がいつも通り続く限り、安泰であると心から思う。
最後に故・永井一郎氏へ哀悼の意を表して結びたい。
ありがとうございました。


【次点】
ドキドキ!プリキュア 48話 ドキドキ全開!プリキュアVSキングジコチュー!(1月19日放送)
サムライフラメンコ16話「さすらいのヒーロー」(2月7日放送)
生徒会役員共*#09 「畑ランコカマす/OGはチョベリグ/ぐーぜん誤解いただき中アリアのこれなーに??」
(3月2日放送)
うーさーのその日暮らし覚醒編
第12話「覚醒 〜星空に描く愛、プレゼントはオレだ、ありがとううーさー〜」(3月25日放送)
メカクシティアクターズ#04「カゲロウデイズ」(5月4日放送)
クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 第9話「裏切りの故郷」(11月29日放送)
SHIROBAKO 第12話「えくそだす・クリスマス」(12月25日放送)


《2014年の総括》

自分の2014年10選はこんな感じです。
アンテナに引っかかったものしか見ないので、チョイスもそんな感じに。
今年のアニメを眺めていると、
なんというか「一点突破力」のアニメが強かったんじゃないかとか。
何かしらが突出した要素が作品そのものの強みでそれがヒットや面白さにダイレクトに繋がっていた印象。
逆に纏まり(総合力)が良かったりすると、完璧すぎて地味になったり。
魅力と欠点が極端なほど、ファンを賑わせていたように思います。
逆に原作つきや作画はホントに厳しい時代。
原作つきは原作=聖典と化して、演出の余地が潰されつつあるし、
作画は作画でお金と手間をかければ、TVでも劇場版クラスはいくらでも可能というのが、
「神撃のバハムート」で明らかになっちゃったし、
そこを作品の魅力としちゃうと、どんどん視聴者のハードルが高くなっちゃうのが大変だなあと。
何を魅力にして売り出すのかを突き詰めていかないと、
売れるもの物も売れなくなっていく時代に突入していくなあと思いもします。
できるだけ、好きなものには還元したいんですけどね。お財布の状況も見つつ、ですが。
来年はどうなるんだろうなあ。
自分は自分の楽しめる作品が出てくれたら、それで十分です。
面白い作品が来年も現れてくれることを願いつつ、一旦締めといたしましょう。
以下より、おまけ企画です。



《おまけ:シーン単位で選ぶ、スペース☆ダンディ10選》
さて、今年のおまけ企画はアニメ「スペース☆ダンディ」全26話から。
独断と偏見で選ぶ、好きなシーン10選です。
作品が一話完結スタイルですし、
好きな話数を選ぶ以上になんとなく好きなシーンを選べば面白いかなと思いまして。
そういう細かい単位でも語れるアニメも滅多にないと思うので挑戦してみます。
例によって、発表順は特に順位ではありません。


1.1話の岩石コースター
《ひとこと》
1話「流れ流されて生きるじゃんよ」より。
中村豊パートの例のシーン。
あの四角い中村破片の開いたスキ間から頭をニュッと出す、ダンディとミャウがなんだかツボ。
その後の豪快な動きもなんか爽快感がある


2.19話冒頭のハニーのプロレス鑑賞とバイク帰宅
《ひとこと》
19話「宇宙の紳士はジェントルマンじゃんよ」より。
プロレス観戦してる女の子ってなんかいいよね。
観戦終わった後、ハーレーで帰るとかもなんか好き。
なんだかんだでハニーの頭すっからかんな能天気さが好きなのかも。


3.21話の飲んだくれる異性人を前に変な生き物が歌う男性混唱シーン
《ひとこと》
21話「悲しみのない世界じゃんよ」より。
死の香りが濃厚な話数から。
OGRE YOU ASSHOLEの奏でるサイケデリアなBGMが非常にマッチした回で好きだけど、
ムーミンのニョロニョロみたいのが生死の無常観溢れる歌を歌ってるのが非常にシュール。


4.10話の日めくりカレンダーとの格闘シーン。
《ひとこと》
10話「明日はきっとトゥモローじゃんよ」より。
無限ループを脱するために無機物に向かって、戦うBBP。
無機物と戦う、と言うシュールな光景が非常に滑稽で楽しかった。
この浦沢義雄感が濃厚で堪らない。


5.12話のQTが釣りに目覚めるシーン
《ひとこと》
12話「誰も知らないカメレオン星人じゃんよ」より。
直前の「なんだ、ツチノコか…」と言うのもぐっと来るが、
その後、何かに目覚めちゃった感のあるQTの行動に暴走する展開に笑った。
ロボットが釣りにハマるってのがワケ分からなくて好き。
その後のカメレオン釣り上げるくだりも楽しすぎた。


6.23話ラストの交わらず、すれ違うダンディとスカーレット。
《ひとこと》
23話「恋人たちはトレンディじゃんよ」より。
トレンディ回で擬似カップルになるダンディとスカーレット。
マジで恋する5秒前くらいまで行って、そうならない。
色々あって心を通わせながらも、ちょっとしたすれ違いで恋に成就しない感じ。
そんなビターな感覚とIfの想像が尽きない含蓄のあるシーンでした。


7.2話のスカーレットのカンフーアクション
《ひとこと》
2話「幻の宇宙ラーメンを探すじゃんよ」より。
ボンズお得意の格闘アクションシーン。
渡辺総監督的には「カウボーイビバップ 天国の扉」のモップカンフーアクションを髣髴させる。
髪の解けたスカーレットが名乗る所で髪を掻きあげるのがなんとも艶やか。
このシーンから19話,23話へと繋がるのも面白いよね。


8.22話の映画「愛と哀しみのボレロ」パロディシーン
《ひとこと》
22話「同じバカなら踊らにゃ損じゃんよ」より。
漫画&アニメのパロディやりたい放題のディスコティックな回だったけど、
映画「愛と哀しみのボレロ」の名ラストシーンであるボレロダンスをパロった悪魔の所業に爆笑するしかなかった。
そこにアカシックレコードまでぶち込むのはさすがにカオス過ぎだよ!
「混ぜるな危険」を実践してくれた所にテキトー極まりない、作品の真髄を見た。


9.6話ラストのスペースサーフィン
《ひとこと》
6話「パンツとチョッキの戦争じゃんよ」より。
村上“ポンタ”秀一フィルインドラムから始まる、至福のシーン。
ジャンクフジヤマの「星屑のパイプライン」に乗ってのサーフィンライドの動きの心地よさが素晴らしかった。
なんか多幸感がすごくて何度も繰り返してみたい、そんなシーン。


10.岡村靖幸のPV「ビバナミダ」における一連の岡村ちゃんダンス
《ひとこと》

最後は番外編というか。
OP曲のPVが「スペース☆ダンディ」とのコラボな上、あの岡村靖幸がアニメキャラになってるのが面白い。
上に張った動画は短縮Verで全部は見れないけど、山本沙代さんが演出したPV。
岡村ちゃんのダンスがなめらかなアニメート(たぶんロトスコープ?)で動くのがいい味出してると思う。


次点は以下の通り。
・4話のゾンビ化したニャウが入院した際に尻触ろうとしたダンディにおイタするナース。
・7話のレーススタートのチェッカーガール
・9話の南極に向かう途中の光合成(?)ダンスシーン
・11話のラガート星突入時のアロハ・オエ号Vsゴーゴル帝国艦隊
・26話のハワヤンキーでのアロハ・オエ号サーフィン。


以上、「シーン単位で選ぶ、スペース☆ダンディ10選」でした。
結構笑うシーンが多めでしょうか。
いい話はいい話で好きですが、バカバカしいエピソードが結構好きでしたね。
あと実力アニメーター&演出家さんの参加したキレッキレなエピソードもあったりで、
改めて幅の広い作品だったなあと思うわけです。
今となってはめったにTV作品に参加しない人も来てたりのゴージャスさ加減も凄かった
一種のお祭り作品だったのが功を奏したのかなと。


《最後に》
いかがだったでしょうか。
アニメ10選を選ぶ時期になると、年末だなあと思いますが、
自分の体感時計だとぜんぜんそう思えなくて。
年が変わる実感もさほど湧いていなかったり。
これも年を取ったからかなあと思うと、物侘しいものもありますが、それはそれ。
ともあれ2015年は良い1年になればいいなと願いつつ、
今回の記事はお終いです。
読んでくれた皆さんに感謝を。
それでは良いお年を。
来年もよろしくお願いいたします。