In Jazz(はてなダイアリー版跡地&元『My Favorite Things』)

ジャンル不問で好きなものを最小単位で語るブログ

音楽鑑賞履歴(2015年8月)

月一恒例の音楽鑑賞履歴です。
音楽メーターの感想を記事にしてまとめてます。
14枚。微妙だなあ。
後半、夏コミに行った影響で気抜けしてたのかも。
けど聞いたものは割りとバラエティに聞いてますね。
出来るだけ聞きたいのだけども、なかなかそうは行かず。
今月はたくさん聞けるようにしたいところ。
では、以下は感想です。


8月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:14枚
聴いた時間:263分

ABC Music the Radio 1 SessionsABC Music the Radio 1 Sessions
02年発表編集盤。91〜01年にかけてのBBCラジオにおけるラジオライヴの2枚組音源集。実際は91〜96年の音源が主で01年の音源はD2の11〜14の4曲のみ。しかし、バンドサウンドの変遷の歴史としてはこの上なく分かりやすい収録内容であり、その変化をライヴで楽しめるのが面白い。
初期のハンマービートとシューゲイザーが混在した独特のミニマルなサイケ感、中期以後のミニマルながらもモンドっぽさが強くなったギターポップ、そこにカンタベリーロックやラウンジミュージック的な要素も強まり、メロディが強調された中後期とその時々のバンドの演奏が面白く聞ける。
あと思ったのがライヴなだけあって、演奏自体が結構ワイルドなのも新鮮な発見だ。特に中期以降はハードディスクレコーディングの緻密な録音が特色だったので、奇妙な電子音が飛び交う演奏もなかなか興味深い。当時のバンドの記録を手っ取り早く俯瞰できる作品だと思った。
聴いた日:08月02日 アーティスト:Stereolab
Venus IsleVenus Isle
96年発表3rd。透き通るような美しいクリアトーンギターは健在。前作から洗練されたサウンドは、ジャケットが表すように、天空に存在する理想郷を髣髴とさせ、サウンドも荘厳さを兼ね備えた、空高く突き抜ける軽やかなメロディが鳴り響いている。地に足が着いたというよりは背中に羽が生えた感覚。
どっしりとした重さは皆無で、ふわっと風のように吹き抜けていく演奏に縦横無尽に冴え渡る職人的なギターフレーズは極上だと言える。よく出来ているものほど時間が過ぎるのも早いという良い一例なのではないだろうか。もちろん内容がないというのではなく、むしろ繊細かつ緻密に作られた一枚だろう。
聴いた日:08月04日 アーティスト:Eric Johnson
JAPANESE GIRLJAPANESE GIRL
・76年発表1st。若干21歳での処女作。A面がアメリカンサイドとして、Keyのビル・ペインを除くLittel Featが全面参加、B面は日本サイドの演奏が収録されている。彼女の独特の歌声とあいまって不思議な味わいのあるアルバムに仕上がっている。荒削りだが名盤だろうと思う。
Little Featが参加したのは「The Last Record Album」と「Time Loves A Hero」の間。年一のペースでアルバムをリリースしているが76年だけアルバムのリリースがなく、このアルバムの演奏がスタジオ録音としてはミッシングリングになっている。
そのLittle Featのアーシーではあるが浮遊感のあるファンキーさが矢野の歌声とピアノに重なって、増幅させられているのが興味深い。初期の代表作3はそんな彼らとのセッションが結実した最大の成果だろうと思う。ただ今回改めて聞くとB面の日本サイドの演奏も非常に趣深く感じた。
6は73年にリリース予定でお蔵入りになった1stからのマテリアルでこちらは林立夫細野晴臣とあって、荒井由実ぽっさもあるがしっかり矢野の個性が出てる。B面は日本的な情緒感がピシッと決まっていて、A面にはない日本的なグルーヴの深さが興味深い。痒いところに手が届く感覚で染み入る。
7〜10までは民謡の合いの手や奏者を加えての演奏。その中で9はムーンライダーズのメンバー陣が参加した曲で彼らのフィーリングも和楽から受け継がれるものだと確認できて面白い。また5と10は同じ曲だが日米のアレンジ間隔の違いが一番よく出ていて、面白い一曲。聞き比べるのも楽しいかと。
聴いた日:08月08日 アーティスト:矢野顕子
リズム・アンド・ブルース・アット・ザ・フラミンゴ+10(紙ジャケット仕様)リズム・アンド・ブルース・アット・ザ・フラミンゴ+10(紙ジャケット仕様)
64年発表1st。オリジナルモッズきっての伊達男の処女作はフラミンゴ・クラブでのライブ録音。R&Bを基調にオルガンのグルーヴィーな演奏と熱気溢れるプレイが暑苦しくなく伝わってくる、エネルギッシュなライヴが記録されている。増補として10曲追加されているのも嬉しい。
R&B、レゲエ、スカ、ラテンなどなど様々な国からの音楽要素を英国人ならではの洒脱感でセンスよくまとめているのがポップスとしての芳醇さを感じる味わい。深くはないけど適度に黒っぽいソウルフルな歌声も、後の音楽シーンのあれこれを想起させる。ブリティッシュビートとは一線を画すナイスな一枚
聴いた日:08月08日 アーティスト:ジョージィ・フェイム
Wallpaper for the SoulWallpaper for the Soul
・02年発表2nd。ストリングスやホーンを導入し、エレクトロ要素を少し強めたアルバム。全体にオーガニック感の漂う、涼しげでメロウでグルーヴィなサウンドになった。ギターポップ要素も残しつつ、他の音も目立っている印象が強い。そういう面ではソウル色が強くなったとも言えそう。
面白いのはサウンドの重ね方はアシッドジャズ的な、オリジナルへのオマージュを表明するものであるのだがそこにもう一層、フレンチポップス的なスウィートな感覚が乗っているのが味わいを独特なものにさせているように思う。日光の眩しさもあるが透明感もあり、不思議と暑さを感じさせない良盤だろう。
聴いた日:08月09日 アーティスト:Tahiti 80
Making Dens (Dig)Making Dens (Dig)
・06年発表1st。ロンドン郊外出身のバラック的ガレージロック。当初は親子メンバーがいたりして、特異な存在でもあった。ガレージとは言ったものの、実際は英国特有のトラディショナルなサイケ感覚が神秘的に響くロックリヴァイバルなサウンド。初期のUKプログレ/サイケの香りが仄かに漂う。
ジャケット写真の表すような、魔術的な雰囲気があるがテクスチャーは今時のロックサウンドであり、コンセプチュアルな構成の中で各曲コンパクトにまとまっている。その点においては英国ロックの神秘的なニュアンスを伝統的に継承した造りになっていると思う。屈折しているようで非常に素直な印象の一枚
聴いた日:08月10日 アーティスト:Mystery Jets
Talking Heads '77Talking Heads '77
・77年発表1st。踊れない人たちのための踊らなくていいダンス・ミュージック。あらゆるダンスミュージックの骨子を使っているけど、グルーヴ感がこれっぽちも伴わない演奏はかなり知的にパンクしてる。フォーマットのみで中身がインプットされていない感じは後のローファイな感覚に似てるかも。
演奏はひどく生真面目なのに、そこから発生する高揚感だったり快楽だったりを排除しているのでなにか砂を噛んでる印象。ただフレーズだったりメロディ展開だったりはセンスの光る部分がそここに感じられるし、ロックを「デザイン」するというアイディアはアートスクール出身のバンドならではかと。
聴いた日:08月11日 アーティスト:Talking Heads
WiredWired
・76年2nd。前作の柔らかさの残るサウンドから一転、硬質さが増してソリッドな印象が強まった。いろいろ要因はあるのだろうけど、ファンキーさが減退したのが一番大きそう。よりテクニカルになったサウンドに全面的に参加したヤン・ハマーのシンセの太い音もこのアルバムの雰囲気に一役買っている
ただこのアルバムで最も貢献しているのはDrとソングライティングで参加しているナラダ・マイケル・ウォルデンだろう。手数も多く、かつ変則的なドラムプレイはまさしく奇想に満ちた、パワフルなものである。とにかく独特なタイム感に舌を巻く。そのプレイが存分に味わえる1と6は本作のハイライトだ
ベースで参加しているウィルバー・バスコムも名手で4で作曲もしている。ボトムラインにだけ限って言えば、前作を軽く凌駕する技巧派ぞろい。有名曲5が一番常人向けなサウンドと言えば、このアルバムの演奏がどれだけ常軌を逸脱してるものか分かるかと思う。それほどキレた作品なのだ。
とまあ、割と超絶技巧なきらいのアルバムなのだが、そこに乗っかっているジェフのギターも水を得た魚のようであるのは言うに及ばない。前作の親しみやすさはあまりないが、演奏を思う存分聞き込みたい人間には極上きわまりない一枚じゃないかなと思う。どこからどこを切っても聴き応え満点。
聴いた日:08月12日 アーティスト:Jeff Beck
ジョンの魂ジョンの魂
・70年発表1st。The Beatles解散後初アルバム。リンゴのドラムとクラウス・フォアマンのベースをバックにジョンが弾き語りながら浪々と歌う様が目に浮かぶ、ごくごくシンプルな演奏。ポップさはない。Abbey Roadで見せた彼なりのブルージーさが滲み出たアルバムだろう。
ジョンをブルースマンだというつもりはないが、彼から発せられる音楽はまさに苦悩であり、その質においてはブルースだったのではないかと思う。それゆえか、シンプルな演奏が非常に映えるし、リンゴのドラムはここにきて最高のプレイを見せているように思える。思想信条を抜きにしても鈍く光る渋い一枚
聴いた日:08月12日 アーティスト:ジョン・レノン
MagnificentMagnificent
69年録音盤。バド・パウエルフォロワーらしいビ・バップなピアノトリオ。バドライクな演奏も魅力だが全体を通して聴いてみるとかなり構築美のある、知性的なプレイをしているのもあってなかなか一筋縄でいかないところも。クールなタッチやハードバップっぽいのもあるのは後発世代の強みかと。
フロントマンのバリー・ハリスのピアノと同等にロン・カーターのベースも存在感を示す。あの個性の強いベースランニングが暴れまわっていて、花を添えている。しかし、感性が才気走るというよりは技巧派という印象が付いて回るか。プレイはホットだが芯のクールさが見え隠れしている一枚かと。佳作。
聴いた日:08月25日 アーティスト:Barry Harris
Tired of Hanging AroundTired of Hanging Around
・06年発表2nd。前作のアングラ&ダークな妖しい質感は薄れ、陽の当たる場所に出てきた感じのある明快なサウンドに変貌した一枚。とはいえ彼らのレトロな感覚と捻くれたソウル&ブルースなサウンドは健在でそこにポップさが加わった。アーシーさというかカラッと乾いたダンサブルなアルバム。
ただメジャー感が強く出てしまったので前作の雰囲気を味わいたい人にとっては微妙かもしれない。またアルバム全体でまとまっているといえ、キラーチューンの存在が皆無なのは痛いか。シングルカットされた2,3,7,8も滋味はあるが即効性には欠ける。長く聞ける佳作ではあるけど一味足りないと思う
聴いた日:08月26日 アーティスト:Zutons
UnitedUnited
・00年発表1st。フランス出身のロック×エレクトロバンド。とはいっても、ここでは70s末期〜80s辺りのディスコティークなシンセサウンドのオマージュがメイン。あの時代に鳴り響いていたチープでマジカルなタッチのサウンドを見事再現している。甘味料的ディスコフレーヴァーが堪らない一枚
アナログシンセのなんともいえない音と野太いベースラインにスクエアーなリズムにロックギターが重なる黄金律はこの手の音楽好きな人にとっては大好物なサウンドでしょう。2や4のキラーチューンも素晴らしいが、タイムトンネル的な9もこの盤のハイライト。他の曲も80sファンを打ち抜く出来。
改めて聞くと驚くほどDAFT PUNKの13年作「Random Access Memories」を想起させる部分があるが、何のことはない。メンバーの一人が以前のバンドでDAFT PUNKの二人と組んでいたらしい。恐らく発想が似ているんでしょうね。どちらも大成してるから凄いけど。
聴いた日:08月27日 アーティスト:Phoenix
勝訴ストリップ勝訴ストリップ
・00年発表2nd。前作よりサウンドの深化が著しい。ポップさは薄れ、ひたすらにオルタナティヴなロックで勝負するという気概に満ちた作品だろう。華やかさはないし、サウンド自体は古傷がひり付くような痛々しさと感情の歪みが前面に押し出されたものになっている。アルバムの構成も練られた印象。
というよりシングル曲もこのアルバムを構成する楽曲の一つであって、少なくとも作品の中で突出しているというものではない。そういう面では前作より「アルバム」ということを意識しているものと思われる。事実、その完成度は高いと思うし、椎名林檎の個性というのを決定付けた盤だろう。
ただ、ココからは苦言になってしまうのだがこのアルバムの最大の難点はミックスである。録音されている全ての音のボリュームが最大にまで引き上げられているかのようなバランスの悪さが気になって仕方ないし、しばらく聞き続けていると耳が悪くなりそうな騒音めいた音が終始続く。
演奏者が一直線に並び、目の前でに同じくらいの馬鹿でかい音で演奏が聞こえてくると言ったほうがいいだろうか。そのくらいメリハリのないミックスなので聞いていて疲れてしまう。そういったノイズ的なミックスが当時の心情と重なっているのかもしれないが聞き手としてはやはりNOを突き付けたい出来。
そういう点ではこのアルバムは積極的に評価できないし、何度も聞き返したくなるアルバムではない。ミックスという点は1stの方がまだバランスが取れたものあるのでどうにかならなかったのかと思う。リマスター、リミックスされる事があれば直して欲しい所。楽曲の出来はむしろ良いのだから。
聴いた日:08月29日 アーティスト:椎名林檎
黒いオルフェ〜ベスト・オブ・ボサノヴァ・ギター黒いオルフェ〜ベスト・オブ・ボサノヴァ・ギター
・00年発売のベスト盤。ボサ・ノヴァギターの名手、バーデン・パウエルの傑作選。涼しげなムードが漂うがサンバやラテンの細やかなパーカッションのリズムに躍動するガットギターの旋律が乙なもの、といったところ。クラシカルでもありジャジーでもあるけど最小限の編成による密な雰囲気が良い。
カバー曲も多いけど、聴き所は自作曲。ボサ・ノヴァの基本パターンに囚われず、自由闊達にかつエネルギッシュに奏でられており鮮烈な印象を与える。その音から暑苦しさは感じないが、演奏はホット。静かに燃える炎の如く。入門として聞くには格好の一枚かと思う。新たな音楽の扉を開ける盤かと。
聴いた日:08月31日 アーティスト:バーデン・パウエル

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