In Jazz(はてなダイアリー版跡地&元『My Favorite Things』)

ジャンル不問で好きなものを最小単位で語るブログ

音楽鑑賞履歴(2016年6月)

月一恒例の音楽鑑賞履歴。
音楽メーターの感想を記事にしてまとめてます。
23枚。そこそこ聞いた。
今月はBECKベック・ハンセン)月間と相成りました。
抜けもあるけど、近作までは大体聞けました。
6月からは「聞くものに困ったら、買って聞いてないやつを聞く」
というルールを設けて、それなりに聞けた感じなのでしばらく続けていこうかなと思います。
では以下から、感想です。

6月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:23枚
聴いた時間:434分

Elegant gypsyElegant gypsy
・77年発表2nd。前作を踏襲したサウンドがソリッドに響く。が、ポップさは減退し、よりテクニカル指向が明確になった。ラテンミュージックのサヴタージな荘厳さが強調されているので若干シリアスな趣が聞いていて、疲れるようにも。聞き応えはあるが同時に二番煎じ感も拭い切れておらず、難しい。
とはいえ、パコ・デ・ルシアと競演した3など、アコースティックな演奏がいいのがこの盤の救いか。ここでの競演がスーパー・ギター・トリオにも繋がることになる。ギターの可能性を鑑みるにすでにエレキだけでは枠が窮屈すぎるのを肌で感じ取ってるようにも。個人的にはバランスの悪い作品だと思う。
演奏が悪いというわけではなく、サウンドの傾向がすでに過剰傾向なのが鼻につくというだけで、プレイそのものは全盛期だけあって、縦横無尽な感じが向かうところ敵なしといった印象。後年の作風を感じさせる音とテクニカル路線がごっちゃになってて作品の出来としては少し凡庸に感じてしまうのが残念だ
聴いた日:06月03日 アーティスト:Al Di Meola
Light As a FeatherLight As a Feather
・72年録音盤。半年前に出た同名アルバムをバンド名として、同じ面子で制作されたグループの初作。前身となった盤と比べると、スピリチュアルな部分が薄らいで、ラテン音楽の躍動感やファンキーさが増した印象。そして、なによりもフュージョンクラシックとして名を馳せる6が収録されているのが強い
アルバムタイトルの如く、音の質感は非常に軽やかな趣で息の詰まるようなシリアスさはない。むしろよりキャッチーなポップ感が強くなったので間口は広がった印象だがロック色は皆無であり、ラテンパーカッションの細やかに跳ねるリズムが風に乗って天に舞い上がるような旋律を奏でる。意外と良スルメ盤
聴いた日:06月03日 アーティスト:Chick Corea
O.K. ComputerO.K. Computer
・97年発表3rd。叙情的かつ感傷的なサウンドが目立つ、彼らの代表作の一つ。後の作品でどんどんロック的な音からかけ離れていくが、この時点ではロックミュージックのフォーマットを使った演奏なのでまだ取っ付き易さはある。徹底してモノトーンな雰囲気のオルタナティヴ・ロック
全体的にコンテンポラリーでスノッブな印象が拭えない作品なのだが改めて聞くと、音処理やエレクトロの部分に時代がかったものを感じる一方で、ロックやブルース、フォークといった下地の部分が時代を経過してもなお色褪せていない所だろう。下地の響きがこの盤を時代とコミットするのを可能としている
下地の要素の普遍的な響きに救われている所もあり、バンド自体もUKロック特有のさめざめしいウェットな感覚を引き継いでいるということが確認できるのが面白いところではあるが、サウンドの内省的な息苦しさには好みが分かれる所か。そういった停滞感も今となっては当時の空気だったのだろうが。
聴いた日:06月05日 アーティスト:Radiohead
By the WayBy the Way
・02年発表8th。フルシアンテ復帰二作目。ファンク、ヒップホップ、スカ、ラテンなどなど雑多な要素をロックで纏め上げる彼らの従来路線に前作からの哀愁漂う枯れたメランコリックをさらに発展させた音が顕著。抑制が効いたというより、アダルティーな趣が強くなった印象がある。
かつてのヤンチャな不良少年たちが不惑の時期を迎え、自らの路線を熟成させながらなお前進していくさまを捉えているが、既に「若さ」はない分、秋空のような透き通った爽快感が残る。ギラついた欲望の代わりに達観が見え隠れする、そんな一枚。ビターな味わいを噛み締める。ただ少し冗長な構成が玉に瑕
聴いた日:06月06日 アーティスト:Red Hot Chili Peppers
When you were a beautyWhen you were a beauty
02年発表6th。前作の縁から、トータスの本拠地シカゴで長期レコーディングを敢行した末に出来上がった一枚。ジョン・マッケンタイアを始め、トータスのメンバーも参加している。内容はおそらくバンド史上最もメロウなものに仕上がっていると思う。サウンドもバンドサウンドに回帰している。
雰囲気はAORカンタベリーロックの匂いが漂い、ドリーミーかつメロウな感覚がとてもポストロック的に響いているが酩酊感があまりないのは彼らがサイケ感覚を伴っていないのが最大の要因だろう。全体を貫くクールネスがメロウな味わいを引き締めていい塩梅になっている。じっくりと聞き込みたい良品
聴いた日:06月07日 アーティスト:GREAT3
E2 E4E2 E4
84年発表1st。クラウトロックの傑作、というよりテクノシーンにおける名盤のひとつ。1曲60分弱、その反復されるミニマルなフレーズが変容していく快感はレイヴの高揚感がすでに表現されているといっても過言ではない。この陶酔感はクラウトロック、ひいてはサイケへと一本線で繋がっている
ゲッチングの在籍していたアシュ・ラ・テンペルがサイケの影響の濃いトランスミュージックを奏でいたのもあり、シンセのシーケンサの反復がテクノというより強いトランスミュージックへと変貌していくのは非常に歴史的なものを感じざるを得ない。そのミニマルなリズムをグルーヴとしていくのは正に。
そうはいっても、後に出てくることになる低音を強調したデトロイトハウスなどと比べてしまうと、ビートは非常に軽やかで音の質感も洗練さや清潔感が強いのが84年作らしい所であるように思う。もちろんゲッチングのギター演奏も後半から存分に聞ける。一人でじっくり聞くもよし踊っても良しの一枚だ
聴いた日:06月08日 アーティスト:Manuel Gottsching
Mellow GoldMellow Gold
94年発表1st。メジャーデビュー作。通算だと3枚目。ゴミとガラクタと砂埃にまみれたオルタナ・アシッド・フォークという当時も今も他の追随を許さない独特なサウンドが特徴的な一枚。ポストグランジとして、こんなユルい音を繰り出してくるのもなんというか確信犯すぎて、常軌を逸してる雰囲気。
しかし、このローファイな停滞感を伴ったサウンドは非常に90sらしい音だとも感じる。生き急ぐような性急なビートを繰り広げるわけでもなくかといって、グルーヴを唸らすような横ノリの快楽もなく、底辺の地べたで自然体のまま、あるがままをかき鳴らしている感じが現代アートにも似たつくりに見える
行き場のなさ、どん詰まり感、そこに何かの感情があるとすれば、諦念めいたものがあるように思うが、そんなどんよりとした感情をヒップホップ的なトラックメイキングでミクスチャーしてしまうのがコンセプトとしては恐ろしく秀でてるようにも思う。這いずりのた打ち回る奇妙なポップソングの挨拶状だ。
聴いた日:06月09日 アーティスト:Beck
DADA(紙ジャケット仕様)DADA(紙ジャケット仕様)
・81年発表メジャー1st(通算3rd)。かつてはコナミ矩形波倶楽部、現在がギターフリークス/ドラムマニアのコンポーザーの一人として有名なルーズベルト泉こと泉陸奥彦のユニット。ゲーム音楽業界で活躍する以前はタンジェリン・ドリーム系のシンセサイザー音楽やプログレ畑で活動していた。
本盤はクラウトロック起因の電子音楽に、音ゲーファンには御馴染みである泉のメタリックなギターが絡む内容。インダストリアルでオリエンタルな響きはそのまま現在の彼の音楽と一本でつながっているようにも思える。昔から無国籍感の強い音楽を作っていたことが確認できる一枚かと。
聴いた日:06月10日 アーティスト:ダダ
Stereopathic SoulmanureStereopathic Soulmanure
94年発表インディーズ2nd。次作のメジャー第一作「メロウ・ゴールド」前夜といった趣の内容。次作で混ざり合ってた要素が混ざってなくて、それぞれバラバラに聞こえてくるものだから荒削りなことこの上ないが、それらをどれひとつとっても一筋縄でいかない感じがとっても「らしい」作品。
いい意味でゴミクズから新しい何かを生み出そうとして、ぐにゃぐにゃにふざけている感じがインディーズでしかできない音楽だと思う。実験精神というか悪ふざけなエクスペリメンタル宅録現代音楽ノイズ。ガラクタと芸術品の狭間で呻く妙ちくりんな音楽。このアーティストの初手にはあまりにも危険すぎる
聴いた日:06月11日 アーティスト:Beck
OdelayOdelay
96年発表2nd(通算5作目)。前作の猥雑ないびつさ(でもまとまりはある)がより整えられて、デザインワークとして完成された感のある一枚。DJ的な観点であらゆる音楽が並列に扱われ、自由闊達に組み合わされて楽曲として成立している所に当時の新鮮さがあったのではないかなと思う。
サンプリングも伴って、かなりのカット&ペーストが繰り返されているように思うがそうやって切り貼りされた音楽だからこそグルーヴ的な勢いは分断されているようにも思える。この停滞感のある音はリリースされた時代の特徴だと思うが、全体的に心地いい音楽なのだが同時に人工的とも感じるか。
演奏するグルーヴの連続性はない。が、グルーヴは抽出されている。それがこのアルバムの肝でもあるし、当時の主流でもあったようにも。享楽的な音を諦念を持って捉えるというような雰囲気。その点では非常にテクノ的でもあり、パンクなアディテュードに満ちた一枚だろう。前作よりもずっと聞きやすい。
聴いた日:06月12日 アーティスト:Beck
The Beach Boys - Pet SoundsThe Beach Boys - Pet Sounds
・66年発表11th。ロック史にその名を刻む名盤の一つだがブライアン・ウィルソン以外のメンバーはボーカルとコーラスのみで演奏はスタジオ・ミュージシャンというアルバムで、内容もブライアンの私的な色合いの濃い作品。発表当時は従来の路線からあまりにも急激な変化だったので困惑されたらしい
その戸惑いも分からなくはないほど、この盤の雰囲気は独特である。ポップな賛美歌というべきか。雑念が一切排されたようなイノセントな響きは神々しさすら感じてしまう。混じりっ気のない真っ白けな音楽だからこそ、美しさも感じるわけなのだが、同時に白昼夢のような狂気の上に成立するものにも感じる
実際、ブライアンもそのハードワークな活動から精神が不安定になっており、ドラッグの影響も否定できないのだがそういった裏側を抜きにしてもその完成度には舌を巻かざるを得ない。だが、無垢な響きの中でブライアンの歌声はひどく寂しく感じてしまうのは気のせいだろうか。孤独な天才が心血注いた傑作
聴いた日:06月14日 アーティスト:The Beach Boys
Smile SessionsSmile Sessions
・11年発表企画盤。67年に発表するはずだった未完のアルバム「スマイル」。04年発売のブライアン・ウィルソンの「スマイル」を下地に当時セッション音源などを取り纏めて構成したアルバムが本作。完成図とはまた異なった作りではあるがその全容を窺い知ることのできる作品だろう。
肝心の内容はいうと、夢想した絵図は果てしなく壮大だがいかな天才だろうと一人のミュージシャンには背負いきれなかった、という印象。森羅万象、アメリカという国家、栄枯盛衰、当時の時代背景などなどを全て巻き込み、総括して語ろうとするとそれはキャパシティーがオーバーするのもやむなしか。
それらに宗教的なシンフォニーやらノスタルジックやらも絡まって、繋ぎあったらそれはもう未知の名盤が出来上がっていただろう事は疑いようもないが、そうはならなかった。しかしその残骸、というより組み上がらなかった部品や、一部完成していたものの数々は天才の仕事であり目を見張るものなのも確か
ファンは開示された情報を繋ぎ合わせるほかないが、完成していたら、というIFを想像してしまうとこれほどに掘り下げる資料もまたとないものだろうし、同時発売のコレクターエディションをそろえるともっと深みへといけそうだ。未完の世紀の名盤はファンの心の中に存在すると感じさせるそんな一枚だ。
聴いた日:06月15日 アーティスト:Beach Boys
MutationsMutations
98年発表3rd。前作まで続いていた作風をひとまず置いて、弾き語りをメインにいろんなエフェクトが掛けられた浮遊感のあるSSW系の作品。サウンドにガラクタ感が薄く、素朴で飾りっ気のない歌が耳に響く。メジャー1stから人を喰ったような音が目立っていたが、これは気構えずに聞ける内容。
アメリカにおける「しらけ世代」ミュージシャンであるベックの醒めた視点がよく現れている作品にも聞こえ、フォークシンガーとしての資質の高さを窺わせる。やるせなさというかダルでアンニュイな雰囲気が素っ気無い演奏とモンドなエフェクトで増大されてて、なにか滋味溢れる一枚。のんびり聞きたい。
聴いた日:06月15日 アーティスト:Beck
Midnite VulturesMidnite Vultures
99年発表4th。Beck流ファンクミュージック総覧という趣の作品。JBもスライもP-FUNKもプリンスもザップも、全部入り。むしろそれらのエッセンスを上手い具合に組み合わせ、甘味料的なチープさを加えて、出来上がったヌメりのある下世話なポップミュージック感がいかにもなサウンド
ここで聞ける意図的かつ能天気なバカッぽさは同時期のUKで流行したビッグビートとも酷似しているが同時発生的に汲み取られたものだと思う。とはいえ、ファンクを題材にとっているが音の取り上げ方はむしろテクノっぽいので、一種のフェイクミュージック的な胡散臭さもこの盤の魅力といえるだろう。
ここまでのキャリアを見ていると本作は初期のガチャついたローファイさは薄らぎ、より洗練された作りになっている。と同時にポップな響きも強くなっているので、アクが抜けて、聞きやすくなったというのも特徴。聞き流しながらダンスビートに揺られる楽しい一枚かと。
聴いた日:06月15日 アーティスト:Beck
Sea ChangeSea Change
02年発表5th。3rdの路線を踏襲したアコースティックなメインのサウンドだが、モンドな味付けというよりはストリングスを多用したカントリー&フォーク、という趣の強いアルバム。ものすごくゆったりとしたテンポで空間を漂う感覚はどことなく優雅な雰囲気も滲み出ている。
全体に叙情的で、最も穏やかかつ優しい作品だ。ここまでグッとテンポを落としてしまうと、ロック的な趣は皆無でルーツミュージックなどが聴ける人には味わい深いだろうが、そうではない人にはただ眠気を誘うだけだろう。個人的には本作のような音に彼の真価があると思うので、これは結構好きな一枚です
聴いた日:06月16日 アーティスト:Beck
Yesterday, Today, Tomorrow the Greatest Hits of Kenny LogginsYesterday, Today, Tomorrow the Greatest Hits of Kenny Loggins
・97年発表ベスト盤。フットルースやトップ・ガンの主題歌が有名なソロ・シンガーのベスト。キャリアは長く、ロギンズ&メッシーナジョジョファンにも馴染み深い)のデュオでも知られている。やはり映画の主題歌である3や5に目が行きがちだが、彼の魅力はそればかりではない。
ベイエリアの爽やかな風を感じるウェストコースト系のAORポップスが彼の主たる作風で冒頭の1など収録曲の多くがそれに該当する。コーラスハーモニーにビーチ・ボーイズ(あるいはブライアン・ウィルソン)の影響も色濃い。味わい深い曲も多く、彼の爽やかでヌケのいい歌声で聞くとより気持ちいい。
2(スティーヴィー・ニックス)や9(スティーヴ・ペリー)などのデュエット曲も華があって、全体に歌を楽しめる構成で彼のキャリアを手早く知れる一枚です。まったくの余談ですがドゥービーブラザースで有名な「What a Fool Believes」の共作者でもあります。
聴いた日:06月18日 アーティスト:Kenny Loggins
GueroGuero
05年発表6th。前作のフォーキーな路線からは打って変わって、原点回帰的なオルタナ路線の一枚。1stや2ndの音がより洗練化したサウンドが立ち並ぶ一方、ハードなファズギターやスペーシーなモンドエフェクトやチップチューンの音が交じり合って、それなりの新鮮さが感じられる。
とはいえ、カットアップ的に組み上げられた楽曲は有機的な繋がりがなく感じられて、人工感が強調されているようにも。取り上げられた要素の表層的な希薄さに面白みが見出せるかどうかがこの盤の評価が決まってくるところだろう。初期路線のカドが取れた作品、だと思うがそれ以上の面白みはないか。
聴いた日:06月21日 アーティスト:Beck
Enigmatic OceanEnigmatic Ocean
・77年録音盤。通算19枚目。最高傑作とも評される一枚。米英の腕利きミュージシャンを揃えてのクロスオーバーサウンドが聞ける。名の知られたメンバーだけでもアラン・ホールズワース、ダリル・スチューマー、後にジャーニーで活躍するスティーヴ・スミスなど清栄が立ち並ぶ。
音は英国風ジャズロックが主体だが、演奏のテクニカルさ度合いはアメリカのクロスオーバーサウンド寄りで、どちらかというとポンティの同郷のバンド、(ムーランズ)ゴングにも近似しているか。そのミックス加減が面白い印象。もちろんポンティのエレキヴァイオリンプレイも冴え渡っている。
イメージとしてはタイトルにもあるように大西洋の波打つ海原が思い浮かぶ。またヴァイオリンも弾くアラン・ホールズワースのギターとも相性が良く、ザッパミュージックとUKジャズロックの邂逅もあったりで、なかなかに興味深い盤だ。捨て曲なし、全編見所な作品。ファンなら聞かない手はない
聴いた日:06月23日 アーティスト:Jean-Luc Ponty
Outlandos D'Amour (Dig)Outlandos D'Amour (Dig)
・78年発表1st。元々ジャズやプログレといったジャンルで活躍してた面々がパンクムーヴメントに乗っかって、デビューしたアルバム。なもので演奏技術は同時期のバンドとしても頭一つ抜きん出ている。が、それが不興を買っていたりもしていて、パンク/NWの鬼っ子みたいなバンドでもある。
内容はいたってシンプル。高い演奏能力で繰り出す楽曲はきわめて構築的でパッションは皆無で徹底的にクールだ。レゲエを取り入れているが、呼び水にしているだけで本来のものとは似ても似つかない感じ。とはいえ、サウンドからは独特の孤立感が早くも漂っているのが目を引く。
鬼子というバンドイメージからか、鳴り響く音も当時の流行からかなり迂遠、極めて理性的すぎたからこそ異質なものを受けるし、類似する音が見出せないという孤独さが彼らの特徴なのだろう。初作にして、独特な雰囲気が滲み出る一枚。彼らなりの一番ストレートなロックが聴けるというのも記しておきたい
聴いた日:06月24日 アーティスト:Police
幻とのつきあい方幻とのつきあい方
・11年発表1st。ゆらゆら帝国解散後の初ソロ作。初回盤所持。メロウでグルーヴィなAOR調のメロディに童謡的な肌触りの歌詞との妙味がかとなくシュールな一枚。ビルとビルの合間に吹き抜ける生温い風とでも言うべきか。平熱的な抜けのいい音がずっと心地いい雰囲気を漂わせて、常習性が高い作品
都市部の隙間を縫って、漂う空気にかとない孤独さや諦念が重なって、自己の像がぼやけるようなそんな感覚がある。そのぼやけた像が幻となって対峙する。アルバムのタイトルのように自我の疎外感を持ちながらもうまく付き合う方法を提示してる風にも捉えられる。けどそんな事も考えなくとも楽しめる盤だ
初回盤は収録曲のインスト盤との二枚組。坂本慎太郎の響く中低音の味わい深い歌声がなくても、十分に聞ける内容で聞き込むと遠くに鳴るエコーがこの盤の幽玄かつ無聊な隠し味だと気づけるのが心憎い。歌が無くなることでの空虚感の強調もまた興味深く、ただ流されるままに聞くのも楽しい軽さも良い。
聴いた日:06月25日 アーティスト:坂本慎太郎
ザ・インフォメーション(DVD付)ザ・インフォメーション(DVD付)
06年発表7th。初めてヒップホップをメインにすえた作品。ここまでの作品では何かが下敷きにあって、その上にフレーバーとして散りばめてきたものを下敷きにしたというのがこの盤のコロンブスの卵的な発想にいたってるのだと思う。なにか音楽的には純化したものを聞いた印象を受けた。
というのも、ベック・ハンセンというアーティストはざっくりと分けてフォーク、ヒップホップ、ロックの間で揺らいでいたオルタナティヴミュージシャンであり、そのどっちつかなさ加減が90年代を駆け抜けた時代の寵児だった所以だと見ているが、本作を聞いているとまた別の表情が見えてくる。
このアルバムを聞く限り、彼にとってロックミュージックという縛りが「不純物」になっており、そこより解き離れた自由な表現こそが本作の軸になっていると感じる。その点では精製されたとも言えるし、より彼の個性がダイレクトに、なおかつポップに表れていると思う。そこにロックは必要なかっただけ。
そうやってアク抜きした作品だからこそ、吹っ切れた印象もあって、聞き応えのある作品になった。ディスコグラフィの中でも上位の出来かと。なおDVD付きバージョンはミシェル・ゴンドリーなどによるアルバム全曲のMVが収録されています。
聴いた日:06月27日 アーティスト:ベック
茎 (STEM)〜大名遊ビ編〜茎 (STEM)〜大名遊ビ編〜
・03年発表8thSG。3rdアルバムの先行シングル。それまでのオルタナロックからは打って変わって、ジャジーな質感やストリングスを取り入れたジェントルかつキャバレーな響きの楽曲が立ち並ぶ。シックに猥雑な趣は3rdのサウンドの提示にもなっているか。収録曲はどれもシングル仕様。
聴いた日:06月29日 アーティスト:椎名林檎
Modern GuiltModern Guilt
08年発表8th。デンジャーマウスをプロデューサーに迎えた一作。デンジャーマウス特有の一時停止したビデオ映像のようなタイムレスなサウンドデザインにベックお得意のモンド感が重なって、奇妙な浮遊感の中に漂っている錯覚に陥る。シンプルかというとそうでもないような複雑さもある。
60sの白昼夢サイケの趣にアンビエントの質感やらテクノ的な黒っぽさも混ざっており、不思議とロックという印象があまりないのはリズム、ヴォーカルラインを聞かせるために、装飾的なメロディを削ぎ落としているからのように思える。むしろ歌をメインに置いてるからポップスという印象が近いか
収録時間が35分もないのは彼のディスコグラフの中でも最短の部類だが、短いながらも彼の個性はきっちり抽出されていて、悪くはない。良くも悪くもデンジャー・マウスのサウンドプロダクトが濃厚なので好みは分かれるか。個人的には数回聞かないと、印象に残らない感じの一枚。フックがないのが惜しい
聴いた日:06月30日 アーティスト:Beck

わたしの音楽メーター
音楽メーター