In Jazz(はてなダイアリー版跡地&元『My Favorite Things』)

ジャンル不問で好きなものを最小単位で語るブログ

音楽鑑賞履歴(2017年2月)

月一恒例の音楽鑑賞履歴。音楽メーターの感想を記事にしてまとめてます。
15枚とちょっと少なめな感じになりました。まあ、2月は日数も少ないんでしょうがないですが。
いよいよ冬が終わり、春の足音が聞こえてくる、そんな季節の趣を感じながら聞いていきたいものですね。
では、以下から感想です。

2月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:15枚
聴いた時間:240分

ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ
01年発表3rd。完全にロックミュージックから脱却して、クールネスが漂うエレクトロ色が全体を覆う作品。よりグルーヴやリズムに傾倒していった結果、打ち込み主体の音になった事でイアン・ブラウンというソロミュージシャンの才覚が一気に開花したと感じられる非常に充実した内容となっている。
性急なビートはまったくなく、ミッドなリズムに揺られながら、独特な声で朗々と歌われる様には神聖さや美しさすら感じられる。ヒップホップ的なドープさも携えながら、確信に満ちたメロディと歌が聴けて、歯車の嵌った感覚が味わえる一枚。もうローゼスの影などは跡形もないと思わせる名盤だ。
聴いた日:02月03日 アーティスト:イアン・ブラウン
World Is YoursWorld Is Yours
07年発表5th。従来の打ち込みサウンドをベースにストリングスをより強調したメロウ&ドープなアルバム。ストリングスの陶酔感に絡み合うヒップホップなビートがダークな質感を生み出しており、同時にファンキーな感覚を味わえる。イアン・ブラウンの独特なボーカルがラップにも勝るとも劣らない。
エレクトロ色もそれなりにあるのだが、この盤を聞いていると、テクノというよりは非常にソウルミュージック然としている。このメロウかつファンキーな肌触りは70sスウィートソウルのシルキーな音に接近していると思う。ストリングスと絡むビートのグルーヴが非常に黒く面白く感じる一枚。
聴いた日:02月05日 アーティスト:Ian Brown
Live in JapanLive in Japan
78年発表ライヴ盤。77年の東京郵便貯金会館での初来日公演のベストトラックを収録したアルバム。ロイ・ブキャナンのかき鳴らすフェンダーテレキャスターの乾いた音色とフレージングに舌鼓を打つ演奏が思う存分、堪能出来る。渋さを感じさせるギタープレイの裏側に内なる激情を込める様が凄まじい
ブルージーではあるが、演奏そのものはロック寄りなので、深みを期待してしまうと肩透かしを食らう可能性は大きい。が、ゴキゲンな演奏に時折、狂気を孕んだような高速ギターソロが掻き毟られていて、一筋縄でいかない匂いを感じる。が、そんなことに全く関せずしれっとプレイを楽しんでいる姿が浮かぶ
自由気ままに、というのが様になるギタリストというべきだろうか。そういった天衣無縫さというか無邪気さを感じてしまうのも確かで、彼の弾くテレキャスの自由闊達な響きにただ酔いしれるのが正しいのかもしれない。鈍く光る銀のごとく、骨太な演奏が詰まった良盤。素っ気なさもまた味わい深い。
聴いた日:02月06日 アーティスト:Roy Buchanan
HIMITSU GIRL'S TOP SECRETHIMITSU GIRL'S TOP SECRET
・05年発表2ndEP。ドラムに柔道二段こと松下敦が加入した新体制での第一弾。バンドのエンジンとも言えるドラムが代わった事でビートに厚みと重さが増し、メタリックなサウンドが強靭な響きになった。前作までとは明確に質感が異なり、よりロックさを強調してきているのが顕著だ。
反面、リズムが重厚になったため、疾走感よりは内に秘めたグルーヴや安定感が前に出ており、キレの良さより一発の質量の重さを高めてきている印象。重戦車の繰り出すファンキーかつメタリックなポストパンク。彼らが新たなフェーズに入ったことを実感できる、強烈な作品だ。
聴いた日:02月07日 アーティスト:ZAZEN BOYS
地球最後の日地球最後の日
72年発表3rd。CBS移籍後第一弾アルバム。今聞くとここで既に後の大ヒット路線の雛形が提示されているのが興味深い。本作ではストリングスとホーンが絡んでいるのも要素として大きい気がする。まだディスコらしい華々しさはなく、ニューソウル的な社会警鐘がそここに感じられる作りなのは時代か
後の音楽性と比べても、ジャジーな印象を感じる自由度の高い演奏でクロスオーバーを意識しただろうコンテンポラリーさが見え隠れする。そういった点ではグループの最適値が出ていると見てもおかしくはないサウンドだ。実はこの時点で初期サウンドが洗練されていたのだと気付かされる。
このままこの路線を継続していくかと思われたが、再びメンバーが脱退、次作では新メンバーが加入とともに本盤で聞けるストリングスなどの音の厚みは一旦放棄されることになる。この時点ではまだリズムのキレが垢抜けていないのもあり、洗練し切れていないのも発展途上という印象も否めない。
が、ここで繰り広げられているジャズファンク的なクロスオーバー感やポップな肌触りはそのまま後の彼らに直結しているように思う。聞けば聞くほど、成功の萌芽が窺える作品と言えるだろう。時代を考えると先鋭的な音だが、受け入れられるには時間を要さなければならなかった。レア・グルーヴ的な一枚。
聴いた日:02月08日 アーティスト:アース・ウィンド&ファイアー
Chicago IIIChicago III
・71年発表3rd。引き続きLP2枚組の大作主義でリリースされた作品。本作では3つの組曲が構成されており、コンセプチュアルかつポリティカルに尖った内容となっている。サウンドの方もポップからかけ離れて先鋭性を強めつつ、間口をさらに広げている印象を持つ。かなり中身の濃い作品だ。
ホーンセクションはより黒っぽさとファンキーさを強め、ビートが粘っこくなった一方で、フリージャズ的な展開を取り入れてかつてない前衛さを出し、さらにはフォーク&カントリー的なアコースティックサイドも演奏されている。言ってみれば、音楽でアメリカ全体を捉えようとしているようにも見える。
そういった汎アメリカ主義的なサウンドが目立つ一方で、やはり情報量が過多というか、アルバムとしてのまとまりには欠く。バンドのクリエイティヴィティが飽和状態になっている印象が強く、自家中毒となっている点も否めないか。熱く煮えたぎる情熱が纏まり切れていないことが非常に惜しくもある。
もちろん楽曲単位で見ていくと、冒険的かつ野心的なものが多く、かなり充実はしている作品だが、アルバム全体の出来は今一歩足りないものとなっている。そして本作で大作主義は一区切りとなり、次作以降はよりシェイプアップされたサウンドに移行していく。グループ初期の最後を飾る一作となった。
聴いた日:02月08日 アーティスト:Chicago
Beck Bogert & AppiceBeck Bogert & Appice
・73年発表唯一作。ヴァニラ・ファッジ〜カクタスのボトムライン、ティム・ボガートとカーマイン・アピスと結成したトリオ。当初は専任Voとkeyのマックス・ミドルトンも加えたグループ編成だったが紆余曲折あって、結果的にトリオに落ち着いたという顛末。トリオ編成ありきで集ったわけではない
サウンドの方は端的にJBGの第一期と第二期を融合させたファンキーハードロック路線。Keyがいないのと豪快なボトムラインの演奏もあって、かなりパワフルでワイルドなものになっている。泥臭く、それでいてソウルフル。このトリオを第三期JBGと捉えるとジェフの目指す方向性はより明確になった
ロックのダイナミズムと黒人音楽(ソウルやブルース)のファンキーテイストを併せ持つ音楽。恐らくはこのトリオで繰り広げたサウンドジェフ・ベックの思い描く完成図にかなり近かったのだろうと思う。他の二人が暴走さえしなければ、だが。しかし、だからといってこのトリオの化学反応は見過ごせない
三人とは思えない、音の分厚さと豪快さに熱量はやはり圧倒されるし、S,ワンダーの提供曲4やK.メイフィールドのカバーなどもあるように緩急も利かせた重量系ロッキンソウルが炸裂しているのはかなり聞き応えがある。同時にハードロック期最後のジェフ・ベックが聞けるという点でも貴重な名盤だ。
聴いた日:02月09日 アーティスト:Beck Bogert & Appice
Madcap LaughsMadcap Laughs
・70年発表1st。精神異常をきたし、ピンク・フロイドを脱退したフロントマンの初作。全体的に弾き語りのフォークサウンド。2と3にはソフトマシーンのメンバーが参加している。一見穏やかなサウンドに聞こえるがしばらく耳を傾けていると、メロディが不穏にズレていき、不気味に変調していく。
恐らく当人的にはただ演奏をしているだけ、なのだろうが精神状態が正常ではないため、演奏はとてつもなく不安定に歪んでいく。まともに狂っていく様子をドキュメントしているような内容でこういった形の作品が世に出てしまうこと自体が奇跡的にすら思えてしまう。もちろんそれは歴史的名作ではない。
が、同時にそういった狂った感情の末にほの暗く微かに輝くセンスはかつて天才だった才気が滲み出ているし、その天才が燃え尽き、狂ってしまった姿を収めてしまっているのが本作の歴史的な価値なのだろうと思う。必ず聞くべき一枚ではないが、どこかで一度は聞く価値のある作品だ。
聴いた日:02月10日 アーティスト:Syd Barrett
Isn't AnythingIsn't Anything
・88年発表1st。シューゲイザーを代表するバンドの初作。代表作の次作と比べると荒削りな部分もあるが、ギターのディストーションノイズによるウォール・オブ・サウンドに包まれた分厚い演奏はこの当時から顕在化している。本作ではまだ空間を包み込むような奥行きはあまり感じられない。
盤全体としては前半の気だるい印象から後半の疾走感あふれる爆音ギターサウンドのテンションの落差が非常に刺激的で、ロックバンドとしてのアグレッシヴな姿やエネルギッシュな演奏が窺い知れる点でも後の作品にはない魅力があるのもこの盤の特徴ではあるか。シューゲイザーの完成度は次作以降が強い。
本作を聞いていると、当時のネオサイケやネオアコといったトレンドの延長線上に彼らがいる、もしくは彼らがそれらの影響を受けているという事が確認できるし、同時に爆音ギターノイズは少し後のグランジへとも繋がっているので、歴史視点で見るとなかなか興味深い作品だ。未完成なりの魅力がある良作。
聴いた日:02月12日 アーティスト:My Bloody Valentine
The Blues Brothers: Original Soundtrack RecordingThe Blues Brothers: Original Soundtrack Recording
・80年発表OST。同名映画のサントラ。元々、「サタデー・ナイト・ライヴ」の1コーナーが発展したコンビかつコメディ映画。呼び名の通り、ダン・エイクロイドジョン・ベルーシの扮するブルースブラザーズがソウルやブルースを歌うものがメインでその愛情がたっぷりと繰り広げられている。
こういった趣味はダン・エイクロイドのものであり、ジョン・ベルーシはそこに乗っかっただけらしい。また客演はかなり豪華。JBはもとより、レイ・チャールズアレサ・フランクリン、さらにはキャブ・キャロウェイなど往年のR&Bのスターや名曲で占められている。
またブルースブラザーズバンドもブッカーT&MG'sのスティーヴ・クロッパー、ドナルド・ダック・ダンやフランク・ザッパ・バンドでホーンを務めたトム・マローン、ルー・マリーニ、アラン・ルービンなど超一流のスタジオミュージシャンが勢揃いしたものになっており、さらっと聞き応えがある。
そういった面からもかなり充実した内容にはなっているが、惜しむらくはアルバムの構成を意識した故に曲順が映画通りではないというのと、使用された楽曲の抜けがかなりあるため、完全盤ではないということ。しかしそれらを差し引いても、R&Bの面白さが伝わってくる一枚。映画本編も面白いです。
聴いた日:02月13日 アーティスト:Blues Brothers
Wind & WutheringWind & Wuthering
76年発表8th。スティーヴ・ハケット在籍最後のスタジオ作。前作から思想性より技巧系に傾いたサウンドになっており、本作においてもその路線は継続している。ジャケットの印象とは裏腹にかなり硬質なシンフォニックサウンドでその辺りのギャップも前作から続いているか。
ゲイブリエル在籍時の演劇性が希薄な分、文学っぽい雰囲気が広がっており、かつてのアクはないが楽曲毎の内容はしっかりと詰まっている。演奏もかなりタイトでバンドの円熟したプレイはプログレの斜陽期に差し掛かっていく中で極めて完成度の高いものである事に疑いはない。プログレ期最後を飾る良作。
聴いた日:02月14日 アーティスト:Genesis
At Carnegie HallAt Carnegie Hall
・71年発表ライヴ盤。俗に言う「Chicago ?」に当たるライヴアルバム。当時LP4枚組という超ボリュームにも拘らず、全米アルバムチャートで3位を記録している。05年のリマスター盤は従来の内容にアウトテイク的なボーナスディスクが付属しており、大増補されているのが嬉しい所。
内容は71年4月5〜10日のカーネギーホールでの公演のベストテイクを収めているが、ほぼ当時のセットリストを収録した物となっており、全盛期のライヴパフォーマンスを追体験できる構成になっている。通して聞くと実に3時間近くなる中身の濃い演奏をこれでもかと堪能することが可能だ。
当時はブラスロックの気鋭としてブンブン言わせていたころなのでとにかくエネルギッシュかつ熱気が滾る、パワフルな演奏で後半に行くにつれて、テンションが高くなるのでよほど気力と体力がある時に聞かないと、ごっそり持っていかれる可能性があるので注意が必要だ。しかしそれゆえに聴き応えはある。
80年代の洗練された感じは影形もないが、6〜70年代の垢抜けない、荒々しさの残るロックの熱気を記録しているという点では歴史的な作品だろうと思う。冗長さも感じなくはないが、バンドの煮えたぎる勢いが叩きつけられている作品。全編聞くには相応の覚悟が必要だが、内容は保証するライブ盤の傑作
聴いた日:02月19日 アーティスト:Chicago
スペイセススペイセス
・70年録音盤。代表作として名高い一枚。と同時にクロスオーバー(フュージョンサウンド最初期の一作だと目される。現在の視点で聞くとまだまだプレイスタイルはジャズの領域を抜け出ないものだが、ジャズがロック取り込み、混合し始めたという点において歴史的価値は高い作品だと思う。
それまでもジャズギタープレイヤーは活躍していたが、ロックの息吹を受け、その勢いと熱気をジャズに取り込んでいったのはコリエル、ひいては同世代で本盤で競演もしているジョン・マクラフリン辺りがおそらくは最初だろうと思う。ジャズギターの流麗なスケールがロック的なテンポで乗る事が斬新だった
共演メンバーもマクラフリンを始め、チック・コリアビリー・コブハム、ミストラフ・ヴィトウスなど新世代のミュージシャンが集まっている事からも、そういった新しい息吹を感じさせる、何かが始まそうな雰囲気のある作品だと言った方が正しいかもしれない。時代の変わり目というか。
コリエルにしろ、ジャズの精神性というよりはジャズの技法を他ジャンルに応用する試みを繰り広げて行くことになる人物であり、ここでもギターはかなり技巧的に動いているのは先の新時代を想起させられるものだろう。垢抜けなさも残り、今となっては時代的なものも感じてしまうが聴き所はある作品。
聴いた日:02月21日 アーティスト:ラリー・コリエル
輪廻のラグランジェ オリジナルサウンドトラック輪廻のラグランジェ オリジナルサウンドトラック
・12年発表OST。同名アニメ作品のサントラ。ケロロ軍曹以来のアニメ音楽の参加となる鈴木さえ子による、清涼感漂う硬質なエレクトロサウンドに人懐っこい穏やかなメロディが乗っかった、インテリアミュージックのような空間的な響きが印象的。静寂さと透明感も感じさせる独特な音は近未来な趣だ。
鴨川が舞台の作品だけあって、海辺や水をイメージさせられる楽曲が多く、それが暖かかったり、冷たかったり、弾けたり、波立ったりして様々な表情が見せるのが作品の爽やかさを彩っていると思う。じっくり聞いて、心を安らがせたくなるアルバムであり、作品を邪魔しない調度品のような作品。良盤です
聴いた日:02月26日 アーティスト:TVサントラ
チェンジ・ザ・ワールド/ティアーズ・イン・ヘブンチェンジ・ザ・ワールド/ティアーズ・イン・ヘブン
・97年発表日本独自SG。グラミー賞を受賞した名曲をカップリングした編集盤。どちらも映画の主題歌で、1はカバーソング、2は死別した幼い息子へ捧げられた代表曲の一つ。どれもミディアムナンバーで、味わい深いクラプトンの歌声をメインに据えた楽曲で彼の代表的なバラードがまとめて聞ける。
50代以降のクラプトンはより歌手としての比重を強めており、ギタリストとしてはより悠然と弾き語る姿にかつての面影はない。が、枯れた味わいと穏やかな印象にはまた違った魅力があると思う。一口に言ってしまえば成熟した、と言えるのかも。素朴さがなんともいえない。
聴いた日:02月27日 アーティスト:エリック・クラプトン

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