In Jazz(はてなダイアリー版跡地&元『My Favorite Things』)

ジャンル不問で好きなものを最小単位で語るブログ

音楽鑑賞履歴(2018年4月) No.1230〜1238

月一恒例の音楽鑑賞履歴です。

9枚。

いろいろ書き物に集中していたので、またペースが落ちた感じですね(最近は、アウトプットする時に音楽が聴けなくなってるのでなおさら)。まあ、いたしかたない。スタイリッシュな音楽から急転して硬派な音楽に振り切る、という感じが今回の内容でしょうか。節操がないといわれればそれまでですが。
最近は90sテクノを漁るのが楽しくて、他の音楽がそこそこになってる感じですが、久々にマイブーム(これももはや死語だなあ)の波が押し寄せててまだ終わりそうにない勢いです。いや、人脈とかがまったくもって不明瞭なのが面白く感じているのですがそれはさておき。
5月もぼちぼち聞いていきたいです。

というわけで以下より感想です。


Sunken Condos

Sunken Condos

・12年発表4th。前作と比べても音の質感が非常にマイルドになった、というかアナログ録音の肌触りを感じる一枚。前作、ひいてはスティーリー・ダンの00年代諸作は一音一音の粒立ちがはっきりくっきりしすぎていて、楽曲の全体像がピンボケしてた印象があったので今作はそこがうまく捉えられている。
この為か、音自体のアタック感も和らいでいて、非常に整形されたオーガニックな雰囲気もあるか。そういう意味ではソロ1stや全盛期のスティーリー・ダンの趣も感じさせられる。というよりレコードで聞いたら、また違った味わいが出そうな抜けの良いサウンドプロダクションだと思う。
楽曲内容は良くも悪くも相変わらずで、ハードボイルドな私小説感は健在。だが、悲観的な面や回顧主義的な趣は控えめになって、ほんの少し前を向いた印象も受ける。前作まで三部作として区切りをつけた為かは定かではないが、新たしい方向に踏み出した感もある近年の快作だろう。そろそろ新作も聞きたい

Go! プリンセスプリキュアボーカルアルバム2

Go! プリンセスプリキュアボーカルアルバム2

15年発売OST。同名作品のボーカルアルバム第二弾。前作のアップテンポ一辺倒な構成に比べると、楽曲も歌も割りとバラエティに富んだ感じの構成になっていて、聞き飽きない作りになっていると思う。作中で重要な役割を果たすヴァイオリンを始め、弦楽器などクラシックで使う楽器を効果的に使用している
楽曲については質の高さに目を見張る。一方、歌唱については出演キャスト内での実力差が凸凹している印象を受けるか。曲とメロディが良い分、そこについては許容できるが返って、その中途半端なソツのなさが悪目立ちしてしまっているようなアルバムだ。内容が良いだけに惜しさを感じてしまう一枚だ。


小林泉美&Flyingmimiband/ORANGE SKY - ENDLESS SUMMER<タワーレコード限定> - TOWER RECORDS ONLINE

78年発表1st。当時若干21歳で現役大学生だった、小林泉美のキャリアスタート作。世間一般には「うる星やつら」などの80年代アニメ作品の主題歌をいくつか手掛けた人物としても名が知られているが、ここでは非常にフュージョン/ライトメロウな楽曲を演奏している。自身で作詞作曲編曲までこなしている。
いかにもアメリカ西海岸やサンバやボサ・ノヴァなどブラジリアンサウンドを取り入れたシティポップス然とした、カラフルなサウンドが非常に聴き応えがある。バンドメンバーも後にマライアを結成する清水靖晃土方隆行といった、J-フュージョンを牽引するミュージシャンが出揃い、演奏力は折り紙つきだ
内容としては、当時のレコードB面に当たる6〜10の波音に始まる西海岸的なトロピカルフュージョンが非常に聞きものだろう。海岸沿いの一日を日の出から夕暮れ、再びの夜明けを想起させられるコンセプチュアルな構成がとても巧妙だ。初手にしてはあまりにも出来すぎたライトメロウの名盤だろう


小林泉美/Sea Flight<タワーレコード限定> - TOWER RECORDS ONLINE

78年発表2nd。この名義では最終作。黒人ドラマーを迎え入れた本作、前作のトロピカルなシーサイドミュージックから一転して、ファンキーで黒っぽいアーバンサウンドを展開している。楽曲もヴォーカルよりインストパートの比重が高めで、前作の軽妙な感じと比べるとスタイリッシュな重厚感が増した造り
ただ実力者揃いのバンドだけあって、サウンドが180度変わっても、まったくアンサンブルには違和感がなく、むしろ海外バンドが演奏しているといわれても不思議ではないほどレベルの高さを見せ付けてくる。柔軟性の高さともに芯のブレなさを非常に強く感じるか。反面、前作の特色がまったく失われている
もちろん作品の出来はすこぶる高いのだが、当時の流行の音に乗っかったクロスオーバーサウンドなので、後の活躍や前作に比べるとむしろ本作の方が異色に感じられるかもしれない。が、それでもここまで高品質の物を送り出せるのは正直、感嘆する。小林泉美の演奏をじっくり聞ける点だけでも価値ある一枚

Sweet Robots Against the Machine

Sweet Robots Against the Machine


97年発表1st。テイ・トウワの別名義による第一作。果たして、本名義との差異があるのかよくは分からないが、どちらかというとこちらの名義の方がポップ寄りというかフロア寄りな印象を持つ。渋谷系の音楽をそのままサンプリングしたようなトラックメイキングが目立ち、よりドープな造りで不思議な感触
当時らしいオフビートな感覚のアーバンソウルな曲もあれば、お得意のエキゾチックミュージック然としたトラックもあるなど退屈しない構成になっているが、全体にブレイクビーツを強調した内容と言えるだろう。ちなみに二枚組でバリ島のジャングルの環境音が一時間トラックで付いてくる。
このジャングルの音が案外チル・アウトトラックとして聞けるものだから不思議ではある。しかもなぜか本編ディスク(33分ちょっと)よりも長いというもなにか偏屈さを感じなくもないが、本人名義よりも流行のサウンドと実験的なことをしていることが伺える佳作だ。わりとヒップホップ色も強め。

Incantations

Incantations

78年発表4th。前作から3年ぶりの作品。その間に精神療養などを経て、制作された作品であり初期三作に比べると多重録音から生まれ出でる、偏執的なまでの高い神秘性はやはり減退してしまっている印象を感じるが、音の緻密さでは初期作を上回るほど。サウンドも呪術的な緊張感から肩の力が抜けたものに。
しかしその力の抜け具合が良い方向に作用している。何者も寄せ付けないような聖域めいた厳格さが感じられた初期作に比べると、抜けの良い開放感があり煌びやかな音が全体を支配する。それまでのミニマルかつケルティックな旋律に華やかさが増したといえばいいだろうか。聞こえる印象は非常にポップだ。
それ故か、今作も1曲4パートに分かれる大曲志向ではあるが、パートごとにがらりと音の印象が変わるので独立した楽曲にも聞こえなくはないし、一方で組曲という印象が薄いのも確か。事実、これ以降、大曲主義が減退しポップ路線を強めていくことを考えると必然の流れか。試行錯誤も見える集大成的な一枚

British Steel (Exp)

British Steel (Exp)

80年発表6th。NWOBHMの波に乗った事でブレイクを果たした一作にして彼らの代表作のひとつ。バラード調の曲が一切なく、引き締まったスピーディかつ硬派なサウンドで突き進む、攻撃的な内容。一般にイメージされるへヴィメタのスタイルというものが本作によって、定義されたといっても過言ではない。
今聞くと、サウンドの重さはそこまでではない。だが、ツインギターから繰り出されるフレーズのキレに、どこまでもタイトでシャープなリズムを作り上げるボトムラインの武骨さが非常に金属感を帯びた、硬質なロックサウンドが彼らの魅力である事が確認できる。同時に当時流行のパンクにも呼応している。
70年代の長尺化したロックの演奏の反動からか、このアルバムでも楽曲は比較的コンパクトにまとまっており、ある種ポップソングのマナーに回帰してる部分を感じる。が、そこに甘さを入れなかったのが本作の特色であり、へヴィメタの基本となっていくのがよく分かる。その点では歴史的な名盤だろう。

Screaming for Vengeance

Screaming for Vengeance

82年発表8th。サウンドがよりソリッドかつハードに先鋭化したことで更に勢いづいた感のある一作。事実、80年代の彼らのアルバムの中では一番のチャートアクションを見せた。これぞメタルという、金属質な演奏が全編に渡って繰り広げられている。変に小賢しいことは一切していない、一本気な内容。
アルバム構成や楽曲構成そのものは6〜70年代から続くハードロックのスタイルではあるし、彼らの歴史を感じるものだがやはり甘さを感じさせない硬派な部分がサウンドを決定付けている。また英国出身バンドらしく、雄大な米国の土臭さを感じさせない工業都市の趣がその印象を強めているのは確かだ。
彼らの出身地であるバーミンガム工業都市でもある)という土地柄が影響してるのかもしれないが、ロブ・ハルフォードの金切りハイトーンVoも相俟ってメタルがメタルであるための鋼鉄感、金属感は彼らがオリジナルであることの証左のようにも感じられる。実力と結果が見事に伴った痛快な良作だ。

Painkiller

Painkiller

90年発表12th。へヴィメタの開拓者が辿り着いた境地にして、ジューダス・プリーストとしての完成形ともいうべき大傑作。自他共に「第二のデビュー作」とも言わしめるにふさわしい強力な内容となっている。ドラマーが変わり、ツーバスが導入されたことでかつてない強靭なメタルサウンドが展開される。
もともと硬質な金属サウンドだった所に、マッチョなパワーが加わったことでその暴力性がバンド史上かつてないほどに高まったと過言ではないが、一般にイメージされるへヴィメタサウンドが奇の衒いなくどストレートに演奏される痛快さはやはりとてつもないエネルギーの爆発を感じさせるだろう。
まさしく最高到達点を記録した作品であるのとは裏腹に、この後、緊張の糸が切れるかのようにロブ・ハルフォードが自身のソロ活動を巡るバンドの対立により脱退し、バンドそのものも90〜00年代を雌伏の時期として過ぎることとなる。が、いまだ影響の大きい一枚にして、メタルの代名詞ともいえる大名盤だ

【ネタバレ注意】「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」作品検証。

注:今回は「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」のネタバレが含まれます。

今回は4/15(※4/27再放送)にCS放送TBSチャンネル2でTV放映される少女☆歌劇 レヴュースタァライト ―The LIVE―」#1 revivalに先駆けての検証記事です。
今回は過去三つの紹介記事とは趣を変えて、舞台版を観劇している事が前提の作品の内容へと踏み込んだ記事になりますので、そうでない方には盛大なネタバレとなります。7月にはTVシリーズも放映されますので、それまで前情報を入れておきたくない人は閲覧をお控えください。
なお当ブログではすでに紹介記事を三つほど書いておりますので、作品のアウトラインはそちらを参照すればざっくりと掴めるはず、です。
以下は該当記事のリンクです。これらは作品及び物語のネタバレは極力しておりません。
「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The Live- #1」インプレッション - In Jazz
少女☆歌劇レヴュースタァライトQ&A〜ガイド・トゥ・スタァライト - In Jazz
「少女☆歌劇レヴュースタァライト」コミカライズ作品紹介。 - In Jazz

前置きはこんなところで、以下の「続きを読む」から本文をスタートしたいと思います。
ネタバレを気にしないという方はどうぞご自由に。4/15(と27)の放送を見た方はぜひご覧ください。

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「少女☆歌劇レヴュースタァライト」コミカライズ作品紹介。

今回は紹介記事です。
2018年夏放映予定のTVアニメシリーズ「少女☆歌劇レヴュー・スタァライト
ミュージカル×アニメの「二層展開式少女歌劇」と銘打たれた、新感覚のエンターテイメントプロジェクト作品として話題を読んでいる作品ですが、当ブログでは昨年9月の舞台版初回公演から追っている作品で過去二回ほど記事を書いています。今回はその第三弾。以下が過去の記事です。

「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The Live- #1」インプレッション - In Jazz
少女☆歌劇レヴュースタァライトQ&A〜ガイド・トゥ・スタァライト - In Jazz

TVアニメも控えているので、まだまだ全容が見えない&周知されてない作品ではありますが、今月の中ごろにはいよいよ舞台版がTV放映される(CS放送TBSチャンネルにて4/15放映)事のに加えて、すでにコミカライズ作品が連載しています。
今回はその主要となる作品二本を紹介したいと思います。

ひとつは「舞台 少女☆歌劇 レヴュースタァライト―The LIVE― SHOW MUST GO ON」(月刊ブシロード連載)
もうひとつは少女☆歌劇 レヴュースタァライトオーバーチュア」(電撃G'sコミック連載)

これから触れる人にも舞台公演を見た人もおそらく楽しめる作品となっていますので、この記事が作品を触れるきっかけになってくれればいいかなと、というのが今回の趣旨です。出来れば、今度放映する舞台版を見てもらうのが一番なんですがCS放送なのでどれだけ見れる人がいるのかよく分からない部分があるので、コミカライズもありますよということをお伝えしたいというのがきっかけでもあります。
前置きはともかく、さっさと紹介に入りたいと思います。試し読みのリンクも張っておきますので気になったかは是非、ご覧いただけると嬉しいです。

「舞台 少女☆歌劇 レヴュースタァライト―The LIVE― SHOW MUST GO ON」
(漫画:綾杉つばき

以下が第1話試し読みページリンクです↓
舞台 少女☆歌劇 レヴュースタァライト ―The LIVE― SHOW MUST GO ON | 月刊ブシロード - ブシロードがおくるコミック&TCG情報誌

月刊ブシロードで連載中の舞台版コミカライズ。昨年9月と今年1月に公演された舞台版「-The LIVE-#1」で繰り広げられた物語を描いた作品。手っ取り早く、舞台版のあらすじを知りたい方にはお勧めしたい。……んですが、舞台の展開を忠実に再現しているわけではなく、この作品ならではの再構成とアレンジが若干施されているので、注意は必要。再構成とアレンジは1話時点からあります。というより冒頭シーンがいきなり異なっていたりと、舞台版を知っていると違いが楽しめたりもするんですが、それはそれとして。
舞台版を見ている人には、学校やレヴューシーンなど舞台設定が(おそらく)TVアニメの設定で描かれているので、目を通すとそこはそうなっているのか、一足早くアニメの世界が脳内構築できるかと思います。物語進行の方は比較的じっくりと描いている印象。今月(4月)発売の最新号に4話目が掲載されますが、3話の時点で物語の1/3くらいまで進行していいます。
このコミカライズ作品自体はスロースターターな向きもあって、1話だけでは正直判断がつかなかった(&再構成・アレンジがイマイチ噛み合っていないように見えた)のもあるんですが、2話、3話と話が進行するうちに再構成とアレンジの意図が物語と絡んできて、エンジンが温まってきたように思います。実際、3話は舞台版ではあまり拾えていなかった部分を上手く作品の描写に組み込んでいた箇所があって、この作品らしい魅力が出たように感じられたのも大きい。舞台だと受け止めるだけに終始した情報を、絵としてコマの構成の中に挿入できる漫画の強みが出てきているので公式が提示している細かな情報を今後まとめてくれそうなところが期待大、といった所でしょうかね。どちらかといえば学園描写より本作品の肝となるレヴューシーンの描写に力を入れている印象を受ける作品です。今月にはオリジナルである舞台版のTV放映もあるので、この作品のアドバンテージとなる魅力が出てくるとより一層楽しめるかと。
ただ作品としては舞台版の内容を知っていた方がより楽しめる作品となっているので、出来ることなら最初はオリジナルを見て欲しい気はします。今月4月のCS放送を逃しても、6月には1月の再演版千秋楽舞台を収録したBDが発売されますので、そちらを是非チェックしていただければよろしいかと。もちろんどういう雰囲気の作品かをいち早く知りたい人はこちらから見ても問題はありません。


少女☆歌劇 レヴュースタァライト オーバーチュア」(脚本:中村彼方、漫画:轟斗ソラ)

少女☆歌劇 レヴュースタァライト オーバーチュア:少女☆歌劇 レヴュースタァライト オーバーチュア 無料漫画詳細 - 無料コミック ComicWalker(←クリックすると該当ページに飛びます)

こちらは電撃G'sコミック連載中。電撃G'sMagazineではないので注意。有名な作品だと「姉なるもの」(飯田ぽち。作)が連載してる月刊マンガ誌です。ただ雑誌を追わずとも上記リンクから一ヶ月遅れで作品が追えますので、そちらをチェックしてもいいかと(現在2話まで掲載中)。
作品はオーバーチュア(序曲)と銘打っているだけあって、夏放映のTVアニメシリーズの前日譚となっています。この為、脚本にTVアニメでは作中の戯曲脚本&挿入歌作詞、また現在リリースされている関連曲全ての作詞を手がけている中村彼方さんがクレジットされています。本作品のメインスタッフとして重要なポジションにいる方なので、アニメ本編とも結びつきが強い話が展開されているはずです。とはいえ、こちらは舞台版コミカライズとは違い、一話完結スタイルで各話ごと別の登場キャラ(たち)にスポットライトが当たる構成になっています。なので、舞台版やアニメ本編の物語の全容はこの作品では展開されません。あくまで「序曲」、本編の物語の始まる以前の段階を描いた「エピソード0」的な作品なのです。
作品を初めて触れる人はこちらから読んでいくのもありでしょう。舞台版コミカライズは作品に流れる物語を描いている一方で、キャラクター描写についてはそこまで深く描いていないので、キャラクターを知りたい場合はこちらをお勧めしたいですね。そういう意味では、アニメで言うところの各キャラの「メイン回」学園生活の描写をこの作品で補っている印象も強いです。というより、舞台版を見ていると描かれるだろう物語から察するに、キャラクター描写に多くの時間を割けなさそうな気もするので本編へと繋がる物語を描いている、という感じもしています。
この為、初めて触れる人にはキャラクター紹介作品になっていますが、舞台版を見ている人には細かな描写が作品を読み解く鍵にもなっているので見逃せないところ。というより中村彼方さんの手掛けているものについては、重要なフレーズだったりキーワード(&描写)がさりげなく挿入されている事が多く、現状、作品の情報が少ない中で貴重な情報源となってますのでファンの人も必見です。
本作品もそういう点では深読みできる描写が織り込まれているのもあってか、そういう細やかな部分も丁寧に描写できる作画担当者を連れてきている印象です。舞台版コミカライズはその舞台版のドラスティックな展開に対応できるタッチの作画なので、作品の差別化は出来ていると思います。説明したように作品の性質が違うのもありますし、「オーバーチュア」の方は描写そのものがキャラクターのバックホーンとなっている面もあるので適材適所に人材を当てている漢字でしょうか。
舞台版コミカライズ、前日譚であるこの作品も放映前のメディアミックス展開なので、おそらくどちらの作品もアニメ本編が始まる直前で終わる短期連載作品だろうと思います。ですから追うなら今のうち、でしょう。特に「オーバーチュア」の方は最新3話の内容からもあと数回だな、という予測が個人的には立ったかなと。まあ、連載が終わればアニメの方が始まるでしょうから、楽しみではあるのですが。


《終わりに》
以上、コミカライズ作品紹介でした。CS放送とはいえ舞台版のTV放映も決まり、筆者としてはじわじわ盛り上がってきてる感じですがまだまだこれからが本番なので、夏のアニメ本編に先駆けてもう少し記事を書きたいですね。作品の検証とかもそろそろしたいところですし、楽曲の歌詞で記事も書きたいところです。今年一年は「少女☆歌劇レヴュー・スタァライト」に耽溺しそうなので、これから楽しみでもあり怖くもありです。アニメが終わった?後も10月に新作公演も控えてますし、まず6月には単独ライブも控えてますのでチケットが当選すれば、そこを楽しみにしたいと思います。
というところで、今回は以上です。
早い段階で次の記事を出せればいいなと思いますので、よろしくお願いします。

音楽鑑賞履歴(2018年3月) No.1221〜1229

月一恒例の音楽鑑賞履歴です。

9枚。
今回はThe Vines特集他、といった感じでしょうかね。久々にロックを聴いたという感じでしたが、いかんせん枚数が少なくなってしまったのが致し方なく。世間的にはいよいよ新年度なわけですが、すでに気候は夏らしいというかだいぶ暖かくなりましたね。半袖に腕を通す日も近そうです。
なんだか気づけば時間が過ぎている、なんてことが多くなってきてますがマイペースで聞いていければなあと思います。
というわけで以下より感想です。

Highly Evolved

Highly Evolved

02年発表1st。オーストラリア出身のバンド。ニルヴァーナ×ビートルズサウンドの融合という触れ込みで話題になった。確かにグランジっぽい、ラフでノイジーなギターサウンドビートルズ的なポップで甘いメロディーが鳴り響く、中毒的なサウンドが魅力的。が、バンドサウンド自体はポップ指向だと思う。
というのもグランジ×マージービート的なサウンドは彼らの専売特許ではないし、ヘヴィさとダークさでいえば、アリス・イン・チェインズが同方向で色濃い音を提示している以上、その独自性はわりと希薄ではあるか。コード進行でも上記バンドのアクが強いので、わりと素直なものに聞こえてしまう。
基本的にグランジよりというよりはポップさがこのバンドの特色でもあり、ガレージ色の強い演奏は同郷のAC/DCダットサンズを思い浮かべる一方で、メロディ自体はビートルズという以上にブリット・ポップの影響がかなり濃いように思える。シンセの音などを聞くとやはりそれらしく聞こえる。
こうやって書いていくと、時代はより後になるが日本において神聖かまってちゃんが90年代のJ-POPとオルタナを掛け合わせたサウンドを提示しているのと同様、ブリットポップグランジ(ガレージロック)を組み合わせた同傾向の音であるように思える。そういう点では組み合わせの妙味が面白いアルバムだ

Winning Days

Winning Days

04年発表2nd。グランジ色が薄まって、ガレージっぽさとポップ色が強まった作品。というよりグランジとガレージロックの音楽性をそのままにビートルズ直系のポップソングを奏でるとこうなるのか、と。単なるパワーポップとは言い難い、奇妙なローファイ感とルーズさにこのバンドのポップネスがある。
個人的には前作にあった、ぎこちなさのカドが取れてバンドサウンドとしては完成度を高めてきたように思う。なんというか初期衝動ありきで音楽活動してない感覚が非常に強く、破滅的ではあると同時に強かさも感じられるか。病的ではあるけど、正気は失っていないというアンバランスさ。
静と動のコントラストのメリハリや、ガレージロック・リバイバルの流れを汲む、ハードロック的展開やそれこそマージービート調のギターポップとサイケ感などが絡まり合って、独自の世界を展開できているのは早くも貫禄すら感じられる。前作の成功に驕らず、着実に進歩を遂げた一枚か。

Melodia

Melodia

08年発表4th。全14曲32分半という今時珍しいコンパクトな内容だが、中身は凝縮されたように濃い。演奏はグランジというよりパワーポップ色が強くなった感があり、ポップ度もかなり高くなった。その一方で病んだ趣が隠し味に利いて、サイケなフレーバーがそここに振り撒かれている感覚を味わう。
フロントマンのクレイグ・ニコルズがアスペルガー症候群を患っている事が関係しているのかはいざ知らず、その病んだ感覚がバンドの骨子であり、特性であるために平常を保っているようで、真性のサイケさが滲み出ているのは興味深くはあるか。そういう点でも危うさもあり、過去と未来が表裏にくっ付く。 このバンドの音楽が6〜70年代のブリティッシュミュージックとグランジブリットポップを通過した08年現在の新しさが介在しており、不思議な接続感がある。古さと新しさが同列しているというか。温故知新とも違う、フラットな扱い方が非常に独特。それゆえに惹きつける魔力を感じる強力盤だろう。

ヴィジョン・ヴァリィ

ヴィジョン・ヴァリィ

06年発表3rd。こちらは全13曲31分半。とはいえおそらく彼らのディスコグラフ史上、もっともメロウかつ穏やかな作品に聞こえた。もちろん激しいところは激しいのだが、全体のトーンは非常に叙情的でまろやかな印象を受けるというより、彼らの引き出しのひとつである、ブリティッシュポップス色が濃厚だ
6〜70年代辺りの英国音楽シーンを髣髴させるような叙情的でウェットなメロディが鳴り響き、トラッドな趣を感じさせるミディアムナンバーのメロディが耳に残る。前作までの牙の鋭さが取れ、全体のトーンが妙に柔らかさを覚える。病んだ雰囲気が弛緩しているというか、マイルドなメロディが支配している
過去二作を考えると、バンドの勢いが減退しているようにも感じられるが、少しスピードを落として、音楽性を掘り下げた、という風に聞こえるか。熟成という言葉が合ってるかは分からないが彼らなりに自身の音楽に深みを持たせようとしたそんな一枚に聞こえる。刺激は今までより弱いが味わい深い作品だ。

Future Primitive

Future Primitive

11年発表5th。前作まで2年おきのリリースだったが、グレイグの体調不良が重なって3年ぶりの新作となった作品。バンド史上もっともサイケデリックに寄った内容となっていて、アルバムジャケットでも表現されているような、極彩色の毒気が全体を支配する。一方、時流を見たエレクトロサウンドも顔を出す
きわめてフラットに新旧の音楽スタイルが鳴り響くのはこのバンドの特徴であるが、その振り幅がいつになく大きく感じられる。同時にそれらが違和感なく流れていくのは、グレイグ・ニコルズの独特なポップセンスゆえだろう。アメリカでもなくイギリスでもない、オーストラリアだからこそ成立する音か。
ポップサイドは非常に英国的だが、ガレージやサイケデリックサイドは非常に米国的。この二極が絶妙にブレンドされてバンドサウンドが生まれていることを考えても、オーストラリアという地でしか生まれ得なかったバンドにも思える。本作も33分半という短い内容ながら凝縮された魅力の詰まった良盤だろう

未知への飛翔

未知への飛翔

78年録音盤。北欧のジャズギタリスト、テリエ・リピダルウェザー・リポートの初期メンバー、ミロスラフ・ヴィトウスキース・ジャレットの共演などで知られるジャック・ディジョネットのトリオ作。ECMレーベル独特の緊張感と静謐感が空間全体に広がる、アンビエントなヨーロピアンジャズ。
テーマや明確なメロディがあるわけでもなく、フリージャズのようにプレイヤーのそれぞれの呼吸に合わせて、空間に演奏が鳴り響く。イメージとしては題名の付けられた抽象画が描かれていく様子を眺めているような感覚。なものだから曲展開に起伏があるわけでもなく始まりも終わりも曖昧だ。
そういう点では観念的、思索的な小難しい音楽にも思えるかもしれないが、前衛性は皆無で楽曲のテクスチャー自体は後のアブストラクトなテクノやドラムンベースアンビエントテクノにも通じるグルーヴが潜んでいるのが興味深いところ。じっくりと聞き込めば深く沈めるエクスペリメンタルジャズの良盤だ

THE BEATLES

THE BEATLES

・68年発表10th。唯一の2枚組。アップルレコードから出た最初の作品であり8トラックレコーダーを使用しだした作品でもある。久々に聞いて感じたのは、もはやビートルズという「バンド」がビートルズという「記号」でしかなくなった、という点だろうか。「記号」の元に各人の個性が溶け合ってしまう。
細野晴臣YMOは「匿名性」で始まったバンドにも拘らず、次第に「記名性」を帯びていったという発言をしていたが、この当時のビートルズもそれに近い感覚があったのだろうと勝手に推測する。やってることは各人てんでバラバラ、4人そろって演奏してる曲も少ない。だがこれは「ビートルズ」のアルバムだ
アルバムとしてのまとまりはないが、ここまで好き勝手やってしまっても「ビートルズ」の曲として認識されてしまうジレンマ、みたいのは当の本人たちが感じていたことなのかもしれない。実際、ジョンとポールは自らの音楽ルーツや影響を振り返る曲が多いように思うし、ジョージは創作意欲に溢れている
リンゴも自作曲を提供していることからも、各人の個性は滲み出している。同時にそれらを「ビートルズ」という「記号」は内に取り込んでしまう。4人の個性をバンドの「個性」にしてしまえる程には「記号」は「肥大化」、一人歩きしてしまっているということを自覚してしまった作品なのだろうと。
こうなってしまうとメンバーが「自己主張」したくなるのも自明の理で、本作がバンド崩壊の始まりとか言われてしまうのだが、むしろメンバーが「記号」を制御出来なくなった、という方が正しいように思う。それ故にバンドに残った余白の「可能性」が見え隠れする所に面白さと魅力が詰まった作品だと思う

C2(初回限定盤)

C2(初回限定盤)

15年発表6th。インディーズから数えてアルバムデビュー10周年という節目の一枚で、インスト盤とメジャー1st「C」のリマスター盤を付属したエクストリーム仕様三枚組。次の10年へ向けての意気込みを感じる作りだが、今までに比べると迫力に欠ける出来なのは否めないか。
というより、シンセを使わずにギターサウンドで突き詰めていったバンドサウンドが飽和点まで来てしまった、という方が正しいかもしれない。エクストリームシリーズと銘打ってきたシングル曲のキレが良かった分、収録曲の新鮮さがあまりなかったように思う。もちろん彼らの王道サウンドが聞けるのは確か
ただ前作であそこまで拡張してしまったサウンドの先のアプローチが小さく収まってしまったのと、シングルでも顔を見せていた大人の落ち着きが結果として、盤全体の勢いの足りなさに繋がってしまっていると思う。インスト盤を聞くとある程度その不満も解消はするがフレッシュさより味わい深さが先行する
「C」のリマスターを聞いていても、かつてあった若々しさは10年の時を経て、失われた分、その補完をどうするのかという問題点が露わになった一枚だと思う。彼らのこだわってきたギターサウンドがもはや足枷になっている点も含めて、悪くはないが初めて「停滞」した悩ましい作品だろう。

Morph the Cat

Morph the Cat

・06年発表3rd。前作から実に13年ぶりのアルバム。その間、スティーリー・ダンを再始動させたりもしていたが、それも一段落ついた事でソロに向かったという印象。9.11や母親の死に影響された、「老い」がテーマになってる作品で、前作前々作とで三部作らしい、とも。
サウンドの方は再始動スティーリー・ダンの方向よろしく、枯れた味わいのタイトなファンクビートに乗せたNYサウンドという印象。都会の狭間で繰り広げられる、ハードボイルドな私小説といった趣がいっそう強く、ポップというよりは辛口で乾いたメロディが独特なグルーヴを生み出す。
金太郎飴といえばそれまでだが、その枯れゆく趣に達観と色褪せたノスタルジーに独り男が静かに酔うイメージが全体の偏屈さを強めているが、その無粋さにほっと安心してしまう一面も憎めない作品だろう。女子供を寄せ付けない、ダンディズムが広がるシティ・ミュージックの滋味盤だ。

音楽鑑賞履歴(2018年2月) No.1206〜1220

月一恒例の音楽鑑賞履歴です。

15枚。
1月よりは聞けました。むしろ2月にこれだけ聞けたのも良かったかも。感想は前半は日本特集、後半は60年代ジャズ特集となってます。いや、急にジャズが聞きたくなって、長らく聞き返していなかったのを久々に聞いたわけですけども。こういうのが定期的に発生するのに自分の気まぐれな鑑賞スタイルが良く表れている気がします。
なんとなしに春めいてきましたので、3月はもうちょっと元気のあるやつを聞きたいかなとも思いますが、まだ一昨年の購入分が消化できていないので早めに消化していこうと思います……。

というわけで以下より感想です。



Beginning of the Endless

Beginning of the Endless

03年発表2nd。EAST END×YURIの休止から7年。EAST END自体のリリースとしては11年ぶりの作品。活動再開盤としての趣が強く、ユニットが形成しているコミュニティ、FUNKY GRAMMAR UNITが総出で参加、また童子-TCRAZY-Aといった面々も参加した、同窓会的なお祭り感が強く出たゴージャスさが目に付く。
その一方で、トラックの方は今で言うところのトラップのご先祖的なエレクトロ主体のものが多く、当時のトレンドを積極的に取り入れているのが単なるノスタルジーに端を発する活動再開ではないことを強く印象付ける。そうはいっても、ゲストの豪華さでそういった印象も霞んでしまいそうではあるが。
どちらにしても、メンバーがこのユニットでラップに改めて向き合うことを提示した力強い作品であるし、なによりEAST END×YURIの大ヒット曲タイトルをセルフオマージュしたラストトラックはこの時点での彼らのアディテュードを明確に表した名曲と言って良い出来だ。豪華な賑やかさが楽しくもある良盤だ

climax

climax

03年発表7th。活動休止直前の作品(実際の休止はリリースの約1年後だが)。それゆえにか、バンドの創造意欲も「最高潮」な一枚に思える。と、同時に一番変態度も高いアルバムに聞こえた。密室感のあるディープなサウンドになにか危ういアングラな印象とその中で煌めくコズミックな響きが堪らない。
このアルバムの始まりの音が非常にP-FUNKを想起させるように、ブラックミュージックにディスコミュージック、はたまた渋谷系の甘いメロディ、前作と前々作で繰り広げられた音響系ポストロックアプローチなどなどが高密度に圧縮されて展開していく様は非常にサイケデリックな趣も醸し出している。
というより、そのサイケでミステリアスな音をモノにする事を彼らが目指していたように思えるほど、必然に満ちた演奏というべきか。バシッときてバシッと決まる心地いい瞬間を味わえるのが最大の特徴だろう。おそらくこの当時のメンバーで出し得る最高の一瞬が収められた一枚。ゆえにクライマックスか。

Feeling of Unity

Feeling of Unity

15年発表4th。飛ぶ鳥を落とす勢いで前作からさらに力強くなった感のあるエネルギッシュな音がとても魅力的な一作。定番のスクリーモ(ピコリーモ)に始まり、USパンクやトランス、ユーロビート、J-POP、メタル、ライヴで盛り上がれそうな音楽ジャンルをすべてぶち込んで、融合させた熱の塊が鳴り響く。
そしてその尋常ではない熱量が彼らのエンターテイメントパフォーマンスのレベルの高さを物語ってもいる。たった40分弱の内容にもかかわらず、二時間のライヴでも体感したような密度の濃さも恐ろしいが、どの楽曲も非常にエネルギッシュかつテンションが高い全方位のダンスチューンなのがとんでもない。
しかも、単なるラウドロック一辺倒ではなく、緩急がついたり、エモいハードコアになったと思ったらメロウなパワーポップになったり万華鏡のごとく、瞬間瞬間にバンドサウンドが変容していくし、またアレンジの引き出しの多さに舌を巻く。さらにはキラーチューンを繰り出すことも出来る力量は賞賛すべき
バンドがとても良い状態で、レベルアップしていく様子が伺える名盤というに相応しい一枚。なにより彼らの可能性に底が見えないのが空恐ろしくもある。この先何を見せてくれるのか、というだけでも大きな期待を強く感じた作品だ。どんどん研ぎ澄まされていく切れ味と溜めはもはや世界水準かと。

文化祭の夜〔完全生産限定盤〕

文化祭の夜〔完全生産限定盤〕

15年発表18thSG。エクストリームシングルと銘打たれた企画の第二弾。前作アルバム「二十九歳」のインストバージョンを丸々収録したボーナスCDが付属したシングルとなっている。肝心のシングルの方はNW色の強いミドルテンポなファンクナンバー。横揺れなリズムがずっしりと響く印象。
「夜」とタイトルに付いているだけあって、アダルトな雰囲気も感じさせる青春の切なさが揺らめくものとなっていて、思春期の揺らぎとやり切れないノスタルジーがない交ぜになっていて、ファンクビートのユレがそこに絡まってくいというクレバーな楽曲になっていると思う。即効性はないがじわりと来る。

不思議な夜

不思議な夜

15年発表19thSG。エクストリームシングル第三弾。ボーナスCDはバンドのメジャーデビュー10周年を記念しての蔵出しレアトラックス。各曲、完成形と比べて、荒削りな未完成感が魅力的でデモトラックスである事をいいことに割と好き勝手に演奏してるのが楽しげでもある。シングルの方は彼らの王道サウンド
改めて、10年前の自分たちを再現するかのようなブラッシュアップされた音は文字通り10年分の蓄積が重ねられたものであり、また原点回帰という点でも研ぎ澄まされたバンドサウンドによって響く音には時間が歪んで、懐かしさと新しさが混ざったような感覚が残って興味深い。
十年一昔とはよく言ったもので、彼らの過去が未来に繋がっているような、当たり前のことを当たり前のように描いた楽曲なんだろうと思う。彼らのクラシックス的メロディが明確に打ち出せる、ということにバンドの歴史を感じるそんな一曲でもあり、なにかSFな響きも感じるポップな一曲かと。

Classroom☆Crisis Original Soundtrack

Classroom☆Crisis Original Soundtrack

15年発表OST。同名TVアニメ作品の二枚組サウンドトラック。林ゆうきさんというとアニメだとハイキュー!!キラキラプリキュアアラモードなど、ドラマだとリーガルハイなどを手がけていらっしゃる方。一度、所さんの笑ってコラえて!にも出演したことも。内容の方はバラエティに富んだ作り。
サントラという特質上、やはり「状況音」や場面を彩る楽曲という側面が強く、そういった趣の強い楽曲が立ち並ぶが、どの曲も適度に邪魔をしない一方でかとなく個性を発揮しているように聞こえるか。本作はいちおうSF作品のサントラなのでエレクトロ系の音が多く収録されている。
元体操選手という出自がある方なのでやはりリズミカルな曲や躍動感のある楽曲に冴えがあるように思える。むしろそういう風にキャッチーに映えるメロディも作れる人、という印象が際立つか。どちらにしても引き出しの多い作曲家ということをこのサントラを聞いても実感できる内容かと。

おあそび

おあそび

90年発表6th。江戸アケミ最後のレコーディングが収録されたグループ最終作。とはいえ、アルバムそのものは企画色が強いアルバム。本来、レコーディングされるはずのスタジオ作の前の文字通り「おあそび」的作品で全体的に江戸アケミの影は薄く、OTOの趣味が全面に出ている内容だ。
内容としてはアフリカンミュージックのミュージシャンとの共演が主体で、ムバカンガというアフリカンリズムと発売当時に流行し、18年現在リバイバルを迎えているニュー・ジャック・スウィングの跳ねたリズムが融合したグルーヴミュージックが繰り広げられている。ファンクの粘っこさとも違う、独特な音
コンリートジャングルなリズムの響きと、アフリカの大地を思い起こす肥沃な肉感的リズムがカオスに混ざり合い、シャワーのように降り注ぐ。メロディそのものがリズムとなり、おおきなウネり、グルーヴそのものになっていく音楽はまさしくじゃがたらが目指す音楽だったのではないかと思わせる。
このアルバムで得たグルーヴをバンドの音に変換できたのであれば、世紀の傑作は生まれていたことは間違いはなさそう。ただそうはならなかったのが歴史の悲劇でもある。このアルバムの製作途中に、江戸アケミが死去。本作が遺作となってしまう。そして江戸の関わった曲はただ一曲しかない。
しかしその一曲だけでも強烈であり、歌詞の内容は図らずものちの9・11を想起してしまう位には強烈でもある。それ以上に、ジャンルを超えてリズムミュージックと化した本作の音楽は今こそ再評価されていいように思う。そういう点では江戸が関わるはずだった最後の曲が無常に響く。
「海を見たかい」と名付けられるはずだったその曲はさながら「生きながらリズムに葬られ」だ。歌われることのない歌を看取るようにアルバムの中間にはOTOが自ら歌った「かわから」という曲がまるで弔辞のように響く。朗らかなリズムのおかげで悲観的な趣はないが喪失感の大きいアルバムでもあるか。

A.T.'s Delight

A.T.'s Delight

・60年録音盤。BNに残した唯一のリーダーアルバム。リーダー作とはいえ、自己主張の激しい演奏をしないところがらしいといえばらしいが、テイラーの「主役を立てる」プレイがより際立つ内容で、全体の演奏のフィーリングを支配しているという点では正しくメインに立った作品だといえるだろう
一聴きして、細やかなニュアンスにまで行き渡った溜めの効いたリズムとそのビートの切れの良さが冴え渡っていて、ホーンやピアノなどの主旋律を担うメンバーがとにかく気持ちよく伸びやかにプレイ出来る雰囲気を作り上げているのは間違いなくテイラーのドラムだ。聞いていて気持ち良くなる。
ドラムプレイに付随して、ウィントン・ケリースタンリー・タレンタインが水を得た魚のように、グッドフィーリングな演奏を繰り広げていて、これぞジャズ、といわんばかりのスウィングした心地良さを味わえる作品だ。コンガのリズムも入って、その跳ねたビートとドラムのリズムの絡み合いがいやに楽しい。

Judgment!

Judgment!

・64年録音盤。いわゆる新主流派というカテゴライズに属するジャズピアニストの代表的な一作。高揚感を得るような熱っぽい演奏ではなく、思索的でアブストラクトな演奏が繰り広げられていく。ジャズの知的な印象を先鋭化した音といえば分かりやすいか。それ故に難解さも伴う演奏ともいえる。
なにか深層に響く音を探っていくような演奏で、そういう点では一種の神秘さも感じられるが、その息遣いの密な距離感が60年代後半のジャズにおける特徴の一つかもしれない。本作はヒルのピアノと同じくらい、ボビー・ハッチャーソンのヴァイヴもフィーチャーされており、よりクールな趣を強めているか。
難解というより曲展開の複雑さが取っ付きづらくはあるが、各プレイヤーがそれぞれの演奏に呼応して、響き合うアンサンブルからはより人間臭い個性を聞くことが出来る筈だ。その点では以前の時代より、演奏による「対話」が際立つ演奏だとも言える。個性の主張の重なり合いが面白い一枚だ。

アンダーカレント

アンダーカレント

・62年録音盤。白人ジャズメン二大巨頭のデュオアルバム。余計な楽器を入れずにピアノとギターのみでプレイされる演奏は静謐な面持ちでたおやかかつ穏やかに広がっていく。じっくりと味わうようにエヴァンスもホールもお互いの音を一音一音噛み締めながら、紡いでいく様が目に浮かんでくる。
全体にミディアムテンポのリリカルな演奏が目立つが、その分の空間的なイメージと共に心地よく揺らいでいく音の響きが時を忘れさせる。もちろん鳴り響くのジャズではあるが、二人の演奏にはクラシカルな優美さも加わり、奥行きの深い音が悠然と浮かび上がっては消えていく。じっくりと聞き浸りたい良盤

Wes Montgomery Trio

Wes Montgomery Trio

・59年録音盤。リバーサイドでの第一弾アルバム。通算では三枚目のリーダー作。過去の二枚が故郷インディアナポリスでの録音である事からもニューヨークで本格的な活動を始めたという点ではこれが最初の一枚。ベースレスのオルガントリオでの演奏が聴ける。個性の萌芽は見えるがまだ爆発はしてない印象
とはいえ、ウェスの味わい深いギタープレイはこの時点から健在であり、オクターヴ奏法による丸みを帯びた柔らかな音はすでに個性を確立している感すらあるが、アルバム全体としては熱気を帯びるというよりは穏やかなクールさを感じる内容となっているのが目を引く。
比較的シンプルなトリオ構成である以上、ウェスのギターが目立つのは当然なのだが、個性は感じられながらも、バンドを牽引するような支配力にはまだ弱く、あの辺りに垢抜けなさもやや感じられるだろうか。じっくり聞き込むと味がじわりと滲み出てくるスルメ盤的な佳作。シンプルさが返って映える。

My Favorite Things (With Bonus Tracks)

My Favorite Things (With Bonus Tracks)

・60年録音盤。コルトレーンの代名詞の一つとも言える「My Favorite Things」を収録した作品。マイルス・デイヴィスのバンドを脱退した直後に吹き込まれたセッションから生まれた一枚でありバンドリーダーとしての船出的な作品でもあるか。ソプラノサックスがジャズの楽器として注目されるのも本作から
演奏そのものはモード・ジャズらしいプレイで、ソロでのミニマルな展開を見せるメロディの変化やブルージーな趣や熱っぽさを廃したクールなタッチは同時代のチック・コリアや初期のハービー・ハンコックなどと呼応するプレイスタイルだと思う。またソプラノサックスの伸びやかな高音がやはり印象的だ。
ただ「My Favorite Things」のインパクトがあまりにも強いために他の収録曲の印象が薄いのが否めないところではあるか。とはいえバンド・メンバーにマッコイ・タイナーエルヴィン・ジョーンズに揃えているのもあり、当時のジャズらしい切れのいい演奏が聴ける。その意味ではヒット曲に恵まれた佳作か

OPEN SESAME

OPEN SESAME

・60年録音盤。初リーダー作にしてBNデビュー作。同時に代表作のひとつでもある。内容もフレッシュな魅力に溢れたハード・バップな演奏が目を引く。伸びやかに突き抜けるトランペットのハイノートフレーズが印象的だ。青々とした若草の風に乗るかのような勢いと爽やかさを感じる。
そのハバードの相手を務めるのが、隠れたジャズの名手、ティナ・ブルックスの味わい深いテナーだ。独特の哀愁を帯びたブルージーな音色はハバードと対照的でもあり、演奏のコントラストが際立つ。どちらも歌心を感じるブロウなのもあって、非常にメロディアスな印象を強く受ける。
ハバードは当時若干22歳。そのプレイは非常に若々しく勢いに満ちた、活気あふれるものでどんな音にも溌剌さが垣間見える。この力強さはクリフォード・ブラウンのスタイルが色濃く影響されている部分だろう。ブラウンのスタイルを受け継いだ新世代ジャズトランペッターの門出としてはこの上ない一作。

Empyrean Isles

Empyrean Isles

・64年録音盤。サンプリングソースとしても有名な「Cantaloupe Island」が収録された作品。モード・ジャズの様式にフリージャズが徐々に取り込まれていく過程が見て取れるような内容になっており、新主流派の飽和点を見定めているような印象も受ける。その点では境界線が曖昧になっているとも。
一番モードらしい演奏がポップな「Cantaloupe Island」である事からも、次なる一歩を模索する楽曲という趣が強く、演奏面においてはフレディ・ハバードのトランペットとトニー・ウィリアムスのドラムが極めて鮮烈で、リーダーであるハービー・ハンコックが霞みがちではあるが存在感は出している。
特筆すべきはラストの「The Egg」だろうか。演奏が渾然一体となる中で、テーマが表出してくる演奏はそのまま数年後のエレクトリック・マイルスへ直結する雛形的なプレイのように思う。そういった新たな潮流が芽吹くドキュメントとしても興味深い、過渡期の録音だ。見逃せない重要作。

フューシャ・スイング・ソング

フューシャ・スイング・ソング

・64年録音盤。初リーダー作。ほんの一時期ではあるがマイルス・バンドに在籍していたこともあるサックスプレーヤーがそのメンバーと吹き込んだ一枚。後にフリージャズに傾倒する人物だが本作はバップとモードとフリーがぎりぎりの位置でせめぎあったような演奏が繰り広げられている。
勢いと熱気はバップそのもの、緊張感とロジカルな演奏はモード、その二つから綻びる曲展開の自由さはフリーだ。当時、ジャズシーンで流れていた大きな三つの潮流の臨界点が重なり合って成立したといっても過言ではない、歴史の特異点的な趣すらある。同時にこの時期だからこそ出来た演奏だろう。
力強くブロウするテナーもさることながら、ここでもトニー・ウィリアムスの八面六臂な大活躍がやはり目立つ。一歩間違えばフリーの要素が悪目立ちしそうだが、有無を言わせない若々しいパッションを感じる。同時に負けず劣らずサックスがパワフルな音で迎え撃つ様子が非常に印象深い。隠れた良作だ。

音楽鑑賞履歴(2018年1月) No.1197〜1205

月一恒例の音楽鑑賞履歴です。

9枚。
二桁を割ってしまった。まあ演劇を二本見に行ったり、聞く気にならなかったというのもあるのでしかたないか。こういう月もあるさ。聴いた音楽はわりとバラエティ豊か、だと思います。まあ雑多に聞いているだけですが。今月はもうちょっと積極的に聞きたいところですね。

というわけで以下より感想です。


First Impressions of Earth

First Impressions of Earth

・06年発表3rd。前作までのアートスクール出身っぽい線の細いサウンドが一気にマッシヴなロックサウンドへと変貌した一枚。全体的にハードなサウンドになっているが、一番顕著なのはファブ・モレッティのドラムが格段に進化したことだろう。リズムパターンが多彩になったことによる正当進化が本作だ。
デビュー当初からロックミュージックへの醒めた視線がこのバンドの特色になっていると思うが、その醒めた視線を携えたまま、ロックのダイナミズムを取り入れる事でより「表現手法」としてのロックへの興味のなさが露わとなっているように感じてしまう。ロックなのに反ロックという不思議な立ち位置。
なんというか徹底してデザインワークとしてしかロックを奏でていないから、返ってそのナンセンスさが際立った個性になっているのだと思う。そういう点ではここが臨界点で、以降の作品では別の「色」を取り込もうとして、試行錯誤しているように感じるか。その点では1stからの総決算的な良盤だと思う。

MAGICAL MYSTERY TOUR

MAGICAL MYSTERY TOUR

・67年発表9th。現在ではオリジナルアルバムとしてカウントされているが、発売当初は同名映画のサントラEP2枚組としてリリース。現在の形は当時EP形式が廃れていたアメリカで既発シングル曲を増補してコンピレーションアルバムとしてリリースされたものが元となっている。そういう経緯の変わった一枚
内容は映画に流れた楽曲と当時のアルバム未収録シングルで構成されているが、前作のカラフルなサイケから色が抜け落ちて、色褪せたマッドな感覚とずっしりとした翳りのあるクラシカルなメロディが鳴り響くものとなっている。洗練というのも違って、地金が現れているとでも言うべきだろうか。
早くもサイケデリックという狂騒的な猥雑から抜け出しており、なにか突き抜けたポップさと骨太さのあるロックが鳴る光景にはそれまでの野暮ったさよりかは、垢抜けた姿を思い描くし、より各メンバーの個性が際立ち始めているようにも見える。その点では新しいフェーズに入ったことを記録したアルバムだ

Hotter Than July

Hotter Than July

・80年発表19th。スティーヴィーの30代最初にして80年代初のアルバム。本当は「One More Before Thirty(30歳の前にもう一枚)」というタイトルでリリース予定だったが延期されて今のタイトルになったそう。良くも悪くも70年代の脂が抜けたあっさりとしたテイストが魅力的な一枚
煮えたぎるブラックフィーリングが薄まったことで、ポップな趣が強まっており、楽曲もバラエティに富んだ構成。目立つのはシンセのシーケンサーによるリズム刻みとクリック音、そしてスティーヴィー特有のモコモコシンセサウンドによるまろやかなメロディ。アルバム全体がシンセ主体となった音作り。
実際に影響があったのかは定かではないがアルバムの作りにはどことなくYMOの影があるのではないだろうか。その未来的な響きをスティーヴィーが自身特有の陽的なメロディと重ねた事によって、70年代の音とは打って変わってカラッとした音に仕上がっているのは見逃せないところに思える。
もちろん同時代的なサウンドの変遷だったというのも間違いないので、一概には言えないが、淀みなく抜けのいい商業的なポップスとして、非常に高品質でカラフルな一枚だろう。肩の力も抜けて、リラックスした姿が思い浮かぶ爽やかさもある良い小品。隠れた良作というところか。

スウィンギング・ギター

スウィンギング・ギター

58年録音盤。タルのレギュラー編成であるベースレストリオ作品。ギターの中低音でベースラインも取るので、そこまでベースが不在なことは気にならない。内容は全盛期を捉えたものとなっており、全編に渡ってスインギーなギターが聴ける。が、その一方で盟友、エディ・コスタのプレイも目を見張る。
水を得た魚のような、タルのテクニカルなフレーズに負けることなく、力強くパーカッシヴなリズムを叩き付けるコスタのピアノフレーズ。二者の演奏がぶつかり合うことで、生まれる音の豊かさはきわめて優雅なものだろう。白人ジャズらしい黒っぽくない生一本な魅力のある傑作。淡旨の際立つ渋い一枚だ。

エ・オ・サンバランソ・トリオ

エ・オ・サンバランソ・トリオ


65年発表2nd。アメリカ出身のジャズシンガー&ダンサーがブラジルのショービズ界に渡り、現地で録音したアルバム群のひとつ。全体のイメージとしてはボサ・ノヴァやサンバの乗って、朗々と歌われるジャズボーカルという印象でわりと古臭さは感じさせない、むしろ近代的な響きを持っている。
時代を考えると異様に早いテンポのボサ・ノヴァ&サンバの演奏には目を見張るものが多く、そのキレの良さこそが経年による印象劣化になっていない要因だろう。それもそのはずで、本作のバック・バンド(トリオ)には後にジャズ・クロスオーバー界で活躍するアイアート・モレイラが参加している事が大きい。
奇しくもこのアルバムに参加したことで脚光を浴び、70年代にはアメリカに渡って八面六臂の大活躍をすることからも、本盤は歴史的でもあるだろう。もちろんそれを抜きにしても。シャープな演奏でなかなかダンサブルに楽しめる作品だ。モレイラのファンなら盛っていても損はない一枚。

Music Complete

Music Complete

15年発表10th。オリジナルメンバーのピーター・フックが抜けた、初の作品にして10年ぶりの新作。バンドの作風であるロック×エレクトロを現代版にアップデートした作品であり、いまや一大潮流になっているサウンドをオリジネイターが改めて手掛けるとこうなるのか、というものに仕上がっていると思う。
また今作はゲスト参加も多く、2曲ほどケミカル・ブラザースのトム・ローランズが楽曲のプロデュースに参加しているほか、イギー・ポップやザ・キラーズのブランドン・ブラワーズなども名を連ねている。そういう面から見ていっても、風通しの良いアルバムという印象が思い浮かぶ。
反面、あのフッキーのベースフレーズが支えていただろう、刹那的なメランコリーやセンチメンタルはだいぶ減退してしまっているのも事実。その分、かつてないほどにフレッシュでブライトリーな印象が目立つが、楽曲のメリハリにやや欠けて、一本調子なアルバム構成であるのに惜しさがある。
新ベーシストであるトム・チャップマンが健闘しているからこそ、返ってフッキーの抜けた穴の大きさを実感してしまうのが悩ましい。その対策としてのエレクトロ増強なのだろうけど、今度はバンドの個性も変容してしまったような感触が無きにしも非ずなのが手放しには賞賛できない。
全体に現代性も加味した上での、バンドとしての攻めが聞けて、十分に意欲的なのだがやはり穴が埋まりきっていなくて、隙間が見え隠れしてしまう所に亀裂の大きさを感じてしまう作品だろう。作品の出来以上に、作品外の事情を窺えてしまう不運さの目立つ一枚、か。出来は悪くない

ミ・ン・ト

ミ・ン・ト

83年発表3rd。大ヒット前夜の一枚。デビュー当初からのトロピカルサウンドを主体によりポップに推し進めたと思われる。それでいて当時の「歌謡曲」らしさもあり、その下世話なメロディラインも取り込んで、繰り広げられているのが興味深いし、70年代の重々しい面影はもはや薄らいでいる。
和製ライトメロウだけあって、洒脱な印象もあるが本家のライトメロウと呼ばれる音楽はウェストコーストサウンドの豊穣な旋律とハイセンスなジャズ・フュージョンの演奏によって洗練されたものであり、本作で流れる音楽は趣がずいぶん異なっている。
むしろ本作で聞けるサウンドにはラテンサウンドに歌謡曲のウェットな叙情、そこにディスコミュージックのダンサブルな雰囲気が織り交ぜられているのに気付く。爽やかさとは少し離れているが、ライトなカクテルを飲むような淡いランデヴー感が和製ライトメロウと呼ばれる楽曲の特徴なのでは、と感じる。
なので、ディスコやクラブミュージックとしての側面も強く出ているのが面白い部分ではあるのかと思う。白人でも黒人でもない以上、そのどちらの音楽からも良い所をいただいて、ミックスするところがらしいか。はっとするキラーチューンはないがアルバムの構成が練られている良盤だろう。

フレッシュプリキュア!ボーカルアルバム1 〜太陽の子供たちへ〜

フレッシュプリキュア!ボーカルアルバム1 〜太陽の子供たちへ〜

09年発売OST。同名アニメ作品のキャラソンアルバム集。作品の題材にダンスが取り上げられているためか、アッパーでダンサブルなトラックばかりで構成されている内容。しんみりする曲は皆無でとことん作品の元気いっぱいさを表現したようなものとなっており、各ソロ曲も明るさや強さが伝わってくる。
楽曲的には世紀末〜00年代初頭に流行っていたトランステクノやユーロビート調に翻案したようなシャラシャラしたシンセのメロディが目を引く。その当寺流行っていたハロプロavex周辺の音でテクノやディスコなどが思い浮かぶだろう。
EDMが隆盛前夜だったこともあり、今ほどシームレスにデジタルとアナログが融合はしておらず、そのサウンドの噛み合わない微妙な歪さが味わい深い。というより、まだデジタルサウンドがポップスやロックのフォーマットに収まっているゆえのハジけた感じが懐かしくも新鮮な往年のJ-POP的良盤だと思う。

フレッシュプリキュア!ボーカルアルバム2 〜笑顔のおくりもの〜

フレッシュプリキュア!ボーカルアルバム2 〜笑顔のおくりもの〜

09年発売OST。同名TVアニメのボーカルアルバム第2弾。発売時期が11月だったのもあってクリスマスソングも収録されてたりするが、前作より輪をかけて、当時のポップスの感触が反映されている一作。ダンサブルであるがポップさがより増したように聞こえるか。高密度だが、打ち込みと演奏の区別が明確だ。
前期EDの英語版があったりなど、後続シリーズに比べると大分趣が違うアルバム構成は今聞くと帰って新鮮かもしれない。90年代末〜00年代のJ-popsの総括的なイメージで聞くとなかなか面白くもあり、作品自体も当時新機軸だったことが窺える作品だろう。かとなく懐かしさもあるが元気のいいポップスだ。

少女☆歌劇レヴュースタァライトQ&A〜ガイド・トゥ・スタァライト


新年一発目の記事です。
皆さん、もうこちらの特報PVはご覧になったでしょうか?

ハイ。
これを書いている時点で昨日、公開になりましたアニメ「少女☆歌劇レヴュースタァライトの放映時期がついに確定。2018年の夏に放映が決まり、昨年公開のPVに始まって、舞台初演(全日観劇したわけではないですが)から追いかけているファンとしてはようやくこの日がやってきたのかという感慨と大きな期待しか感じられない特報映像でした。


とはいえ、です。
現状、映像がアニメPVしかない上、ネット上には舞台公演の映像もダイジェストしか公開されていないので、作品がどういう物語かを知っているのは昨年9月の初演、明けて今年1月の再演を見た人間のみという状況です。初演、再演含めてたったの6日間の公演しか行われていない為、物語の内容は知る人ぞ知るというクローズドな環境に終始しています。
また舞台を見ただけでも、提示されている情報の全容は明らかになっていない部分もあって、情報が渇望されて仕方ないという生殺しな状況が続いてるのも確かです(笑) いや真面目に。最初のPVが昨年4月ですから、そこから数えても10ヶ月。舞台初演から数えても3ヶ月強、そこからなおかつ半年待つわけですから、気の長い話であることは確かです。
そこで今回は自分でも情報をまとめるのを含めて、Q&A方式で現時点での作品紹介をしてみたいと思います。自分もそうだったのですが特定の層には強烈にぶっ刺さる作品なので、いち早く物語の触りだけでも知りたいという人のための紹介にしたいなあと思います。もちろん出来る限り、物語のネタバレを避けつつ、基本情報を共有したいと考えてます。筆者は初演と再演と見てきてますので、もうどっぷり嵌ってる人間であることを鑑みつつ、どういう作品なのかを知っていただければなと。
とりあえずあまりQ&Aの数が多くても仕方ないので、10くらいにまとめて、ざっくりと説明してみたいと思います。

Q1.そもそも「少女☆歌劇レヴュースタァライト」ってどんな作品?

A.ブシロードネルケプランニングキネマシトラスを原作とするミュージカル×アニメの「二層展開式少女歌劇」と銘打たれた、新感覚のエンターテイメントプロジェクト作品です。メインキャスト9人は2.5次元舞台、アニメーションと同じキャストが担当し、互いをリンクさせながら、2.5次元舞台の新しいスタイルを目指すもの、というのが公式の発表です。
要は舞台演劇とアニメが同じキャストで繰り広げられる物語ということです。

Q2.二層展開式少女歌劇ってどういうこと?

A.上でも説明したように、舞台演劇とアニメーションが連動していると思っていただくと分かりやすいかと。舞台演劇とアニメーションがそれぞれ別個で成立する作品ではなく、二つ合わせて「一つの作品」として進行していく物語となっています。

Q3.舞台を見ていなくても大丈夫なの?

A.大丈夫じゃないです。
昨年の9月と今年1月に公演された「#1」は実質的に物語の「序章」的位置づけで物語が展開されているのですでに物語は始まっているというのが現在の状況です。おそらくTVアニメでもその辺りのフォローはあるでしょうが、「二層展開式少女歌劇」として物語が連動しているのでより深い読み込みをする場合はアニメのみだと片手落ちになる可能性があります。

Q4.一体全体、どんな物語なの?

A.詳しくは公式サイト(少女☆歌劇 レヴュースタァライト)ご覧ください。
……というのも野暮なので、舞台版のパンフレットにあるあらすじを抜粋してご紹介しておきましょうか。以下引用です。
舞台少女たちの学び舎・聖翔音楽学園。
俳優育成科2年A組(※注:彼女たちは99期生)の愛城華恋、天堂真矢、星見純那、露崎まひる、西條クロディーヌ、大場なな、石動双葉、花柳香子は、厳しくも愛情溢れる教師たちに導かれながら、舞台女優になることを夢見て切磋琢磨していた。
そんな平和な学園生活を一変させたのが英国帰りの転校生・神楽ひかり。
彼女の出現を期に突如学園で開催されるオーディションは、トップスタァになれるというたった一人の勝者の座をかけ、おのれの夢をかけて戦うバトルロワイヤルだった……。
以上、引用。
舞台版「#1」ではこのあらすじを軸にミュージカル、殺陣が繰り広げられるという宝塚歌劇のような豪華絢爛なステージでした。
9月の初演観劇後に一気に書いた筆者のレポート記事もあるので、どういった内容のものかはそちらでご確認いただければ。
「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -The Live- #1」インプレッション - In Jazz


Q5.それってなんだか「少女革命ウテナ」っぽくない?
A.まあ、誰しもが思う疑問かと思います(笑)

昨年公開になった第一弾トレーラー、そして上にもリンクを張りました最新の特報PVを見ても、その影響を包み隠していないというのは間違いないかと思います。「二層展開式少女歌劇」という形式を考えた時点で、おそらく製作側も意識せざるを得ない作品であるのは否定しないだろうと推測できますね。
じゃあ、違いは何なのかというと「ウテナ」がその物語を語る上でダシに使っていた(前衛)演劇要素がそのままこの作品の中心軸となっています。「二層展開式少女歌劇」と銘打たれていることからも「少女☆歌劇レヴュー・スタァライト」という作品においては「演劇」がメインテーマです。その演劇を軸に、各キャラクターの夢や葛藤がドラスティックに描かれる作品といった所でしょうか。
その点では巡り巡ってガラスの仮面」的な物語でもありますし、それこそ「ウテナ」から先祖返りしたような宝塚歌劇的な物語でもあります。まあ、舞台となる聖翔音楽学園そのものが宝塚音楽学校がモデルとなってるもあり、舞台女優を目指す「舞台少女」たちの生き様が描かれる物語なのです。


Q6.どんなキャラクター(キャスト)なの?

A.これもPVや公式サイトを見れば、設定は把握できるかとは思いますがこんな子達です(以下は最新の特報PVより構成)。

キャストについては、声優経験者は神楽ひかり役の三森すずこさん西條クロディーヌ役の相羽あいなさん花柳香子役の伊藤彩沙さんといった辺りが名の通っているくらいで、その他主演の愛城華恋役の小山百代さんを始め、声優としては新人、あるいは舞台経験者を揃えている感じです。アニメ業界的には名の知られてない人の方が多数です。とはいえ星見純那役の佐藤日向さんはアイドルグループ、さくら学院出身者で「ラブライブ!サンシャイン」にも出演されてますし、天堂真矢役の富田麻帆さんはアニメ「かみちゅ!」のOP曲など歌手活動で知られている方でしょうか。検索をかけてもプロフィールの細かくないフレッシュな人選といったところ。
同時に舞台でミュージカルをやることを前提に選ばれているのでキャスト全員、歌唱力は相応の実力を兼ね備えてている人たちです。

Q7.製作スタッフが気になる

A.これも「二層展開式少女歌劇」という性質上、舞台演出とアニメスタッフがそれぞれ存在します。
舞台の方の演出家は児玉明子さん。元宝塚歌劇団の演出家で異例のスピードで作品を演出したことで話題になった方、とのこと。2.5次元舞台の演出も経験されている実力派という感じです。舞台の脚本家は三浦香さん。こちらも女性向け2.5次元舞台の脚本を多く手がけていらっしゃる(最遊記とか終わりのセラフとかテニミュなど)方でこちらもノウハウに長けた方のようですね。
アニメの方は、監督が古川知宏さん。この方は「少女革命ウテナ」の監督で知られる幾原邦彦監督の下で「輪るピングドラム」の各話演出、「ユリ熊嵐」では副監督を担当された、幾原門下生といっていいお方。だからまあこの作品が「ウテナっぽい」と言われるのもある種必然ではありますかね。脚本は「クロスアンジュ天使と竜の輪舞」のシリーズ構成、樋口達人さん。製作スタジオは昨年の秋クールの話題作「メイド・イン・アビス」を作ったキネマ・シトラス。推移する情報を見ている限り、相当長く制作期間を取っているみたいなので作画については心配がないと思いますし、話題をさらった「メイド・イン・アビス」に続く作品として注目されそうですね。

Q8.現状、話はどこまで進んでるの?

A.まだ始まったばっかりです。
現在、舞台において物語の序章である「#1」が公演終了となっているだけで、新しい展開は夏放映のTVアニメまでありません。厳密に言えば、今月末に電撃G'sマガジンでTVアニメの前日譚となるコミカライズが連載開始する予定になっています。ただ、先ほども言ったように既に「物語の幕は開いている」状態であるということだけは確かです。

Q9.アニメが放映する夏までが長すぎる

A.ご安心ください。楽しみ方は色々あります。
まず、既に舞台のライヴパートで披露されている楽曲が発売されています。

「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」1stシングルCD「プロローグ -Star Divine-」

「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」1stシングルCD「プロローグ -Star Divine-」

またこれ以外にユニット曲が収録された会場限定シングル「プリンシパル -Fancy You- 」も存在します

これらを聴いて楽しむと言う手もありますし、3月7日には2ndシングル「スタァライトシアター」の発売も決定しています。

また今月よりコミカライズが3本スタートします。
既に2本は連載開始していまして、月刊ブシロード舞台版コミカライズ「少女☆歌劇レヴュー・スタァライト Show Must Go On」(作画:綾杉つばき四コマギャグの「よんこま・すたぁらいと」(作画:巻々廻)が読めます。また1月30日発売予定の電撃G'sコミックにおいてアニメ前日譚「少女☆歌劇レヴュー・スタァライトオーバーチュア」(作画:轟斗ソラ)が連載開始となります。こちらは上記の楽曲の作詞をすべて担当し、アニメでの戯曲脚本と挿入歌作詞を手がける中村彼方さんの脚本の作品となっています。

またアニメ開始直前の6月にはメインキャストのユニット「スタァライト九九組」の1st単独ライヴが開催、さらには舞台版「#1」の再演千秋楽公演を収録したBDが発売となりますので、注目です。

Q10.今から追いかけても大丈夫?

A.これは声を大にして言いたいですが、
まだ間に合います!
直前のQでも書いたとおり、舞台公演を見逃した人のフォローは公式で行われていますので、そちらをチェックしてからTV放映に臨むというのが一番ベターな方法かと思います。おそらく放送直前には舞台版のBDも発売されていることでしょうから、予習するにはまだ半年の猶予があるのでご安心していただければよろしいかと。まだ作品を追うには遅くないので皆さんそれぞれの追い方で作品を楽しめばよいかと思います!


《終わりに》
以上で作品紹介を結びたいと思います。
とりあえず現状把握している情報をがっつり載せたつもりです。物語の内容、考察等々については、余裕があればまたいずれ。現状、放映が半年も先なので、今からネタバレしてもしょうがないし、楽しみを削ぐ事にもなると思いますのでこのくらいでご勘弁を。どちらにしても6月には皆さんの目に触れる機会がやってきますのでそれまで首を長くしてお待ちいただければ。
また10月には新作公演も決定していますので、個人的には一年間楽しめそうなコンテンツになりそうな気配がしています。なんにせよ「ウテナ」好きな人には程度に差はあるかもしれませんが、ぶっ刺さる作品だと思ってますので乗り遅れることのないよう、ご注意を。
そんな所です。いやまあ、ネタバレしていいのであればPV考察とかおもくそしたいんですが、さすがに自重しておきます。舞台を見てるとそのくらいには情報のある映像であるとだけ記して、終わりにしたいと思います。
ありがとうございました。