In Jazz(はてなダイアリー版跡地&元『My Favorite Things』)

ジャンル不問で好きなものを最小単位で語るブログ

Angel Beats!はメタフィクションか?(前半総括)

さて5月です。
GWに入りましたね。
……終わりましたね(笑)
時の流れって早いモンです。

Angel Beats!第5話の感想を上げました。
下のリンクからどうぞ。


ライスのアニメ感想:#5 Angel Beats!(5) - Togetter


※追記
第6話の感想も上げました


ライスのアニメ感想:#6 Angel Beats!(6) - Togetter


ようやくの更新です。
ABも折り返し地点を超え、後半戦に突入するわけですが、ここでいったん総括みたいな記事を書いてみようと思います。
ご覧になる方は「続きを読む」をクリックで。




さて。
総括とは言ったものの、何を書こうかというところなのですがまあだらりと行きましょう。
まずは1〜6話まで見て、感じた印象などを。


《結局、ABってどんな話だっけ?》
って、いきなり身も蓋もないですけども。
なんだろう。とりあえず6話分視聴して、まだ話の全貌がまったく見えてない気がするんですよね。
最新話までの途中経過を見ると、一番最初に提示された作品の前提が覆されてる。


・ここは死後の世界→神になる権利を持った者たちが集まる世界
・天使(名前が分からない)が敵→立華奏は生徒会長だった(SSS団が好き勝手な行動をするからそれをいさめる役割)
・模範的な行動をしたら消滅(成仏?)→模範的な行動をしなくとも、生前満たされなかった夢をかなえられれば消滅(成仏?)する


とまあ、一例と言うかこのように作品における基本的な設定が改変されてますね。
設定はAじゃなくて実は設定A´でしたって感じに情報が付け足されているわけですけども。
明らかになったって言うよりは元々あったものが変化したっていう印象です。
だからSSS団にしても、


「この死後の世界を手に入れるため、世界を作った神に抗う」


と言う前提は根底から崩れちゃってるわけで。
天使が生徒会長の座から引き摺り下ろせられて、SSS団の行動を阻止する役目が出来なくなった時点でSSS団の存在意義も訳の分からないことになってる。
その後、後続で生徒会長代理についた直井もゆりや音無たちと同じ存在で人間である以上、ホントは争う必要はないんですよね。
まあ、人間であるキャラの中で神となるためにバトルロワイヤルやるってことになれば争うんでしょうけども。
そういう作品ではなさそうですし、公式では「人間賛歌」を掲げてるわけですから血生臭いことにはならなそう。
や、何度死んでも生き返る世界だからなにをやってもいいわけなんですけどね。
でも設定的にゲームキャラみたいに「何度も繰り返して復活する」ってのが一番の大前提だろうからこれが変容するならばおそらく終盤ですかね。


一方で話の経緯はどうなのかと、簡単に一行であらすじをまとめてみると


・1話:音無、SSS団入団。SSS団メンバー、天使と邂逅。死後の世界、話の前提発表。
・2話:武器調達の場、ギルド登場。ゆりの生前の記憶。設定強調回。
・3話:ガルデモ岩沢、消滅。竹山&ユイ初登場新事実発覚(模範的な行動をしなくても、消滅の可能性)
・4話:ユイのキャラ紹介。メインは日向の過去&野球回。直井初登場。(消滅者も出なければ、新たな設定が出たわけでもない)
・5話:テスト回。天使のキャラ提示&強化回。この回にて、話が次回へと続いた。天使の設定が改変されたのも重要。
・6話:新生都会との攻防&直井回。けど一方で、天使プッシュなお一層強化。


1〜4話までは話と言うよりは設定とかキャラとかの紹介に終始してる感じですね。
5〜6話はキーパーソンキャラ(ここでは天使)をメインに話で引っ張る印象。
明確に話が繋がりがあるのは5話以降から。
7話から先がどうなるか分かりませんが、どんどん話が続いていくのかなあと予測してます。
何が言いたいかというと、今のところABの話を引っ張っているのが、世界観やら設定やらの不可解さ、言い換えれば謎なのだろうなあということ。
物語の吸引力が強いというより、物語の中で提示された謎に引っ張られてる。
設定の謎かけはもちろんなのですが、いまだに公式が掲げている「人間賛歌」というのが見えてこないんですよねえ。
つまりは、


Angel Beats!という話自体がミステリーそのもの


なんだろうと思います。
どんな話だったのかっていうのは最後まで見ないと分からないし、そういう話の構成になっている。
ネットでKEY作品をプレイしたことのある方の感想を見ていると「麻枝作品は後半から」というのも納得かなあと。
設定が逐一変容しているのも、まだ情報が錯綜していて、正否がつかめないと言うことなんでしょうね。
だから、現段階でどんな話?と言われても上手く伝えられなそう。
まだ話が見えないから説明しようもないのは当たり前なんですけどね。
「人間賛歌」と掲げているような作品になるのか否やというところですね。
今後はそこら辺に注目しながら、次へ進みます。


《要素のインデックスとしてのAB》
放送開始前の特別番組の中で原作者の麻枝准氏はこのような趣旨の発言をしていました。


「最近のアニメを見て、自分だったらこうするのに、ああしたらいいのに、ということがあって、この作品(AB)にはそういうのを全部詰め込んだ」


この発言から分かるとおり、どうも最近のアニメを参考にしてるみたいです。
何の作品なのかはさすがに明示はしてませんでしたが、まあ1話初見時に「これなんてハルヒ?」という感想が多々あったわけで。
わりかし有名作品、売れてる作品を参考されたのかなとはなんとなく推測が出来ますね。


これに絡めて、私もこんな邪推を記事にしました。↓


Angel Beats!と新世紀エヴァンゲリオン。 - In Jazz


手前味噌で申し訳ありません。
どちらにしても憶測の域を出ないと思うんですが、やっぱりなにかしら人気作を意識して作ってるはず。
ここでトピックにしたいのはABが人気作、有名作の要素をインデックスにして、作品にぶち込んでると言う点です。
上のリンク記事でも書きましたがエヴァの主要三人の人間関係を音無、天使、ゆりの三人に落とし込んでるようにも見えますし、一方で涼宮ハルヒでのキョンのようなポジションにいる音無がいたり、直井のようなデスノートコードギアス的なキャラもいます。
これらはキャラ要素ですが、ABにはそれらの作品要素も丸ごとぶち込んでるじゃないかとも考えられそう。


エヴァセカイ系(ゆりと天使、そして音無で死後の世界を左右(?)、直井の過去)
ハルヒ:非日常的モラトリアム(死後の世界における学園生活&SSS団、それに振り回される音無)
デスノートコードギアス:特殊能力による世界制覇(直井のアイデンティティの確立=神になることでの武力制覇)


……こじ付けが過ぎるかもしれませんけども。
特別番組での発言があったように、原作者の麻枝准氏には明確なヴィジョンがあって、それに向かっているはず。
それはまあ、当たり前のことなんですが。
あざといまでに最近の有名アニメから要素を引っ張ってきて、鍋にぶち込んで、自分の描くテーマを作り上げようとしてそうな印象がありますね。
個人的にはABをここまで見てきて、作品自体のテーマがまだ出てきてないと思っています。
「人間賛歌」と公式では掲げていますが、そこへ導くにはどういうテーマが必要なのか、と言う問題に尽きるんじゃないでしょうか。
そこまで行くと後は逆算で、必要な要素をぶち込んで混ぜるだけ。
だからこそ、有名作品から引っ張ってくることが必要だったのかなと。
おまけにキャラだけではなくテーマも引っ張ってこなければいけなかった。
あ、そういえばまだ一番最近の超有名作「けいおん!」のテーマ的要素が出てきていませんね。
バンドは出ていますけども。
今後出てくるとすれば、非常に重要な鍵を握りそうな感じもします。
私自身はABのテーマは「コミュニケーション」だと想像しているので、そうすると歌が非常に重要になってる来るはずなんですけども。
果たして、どうなるんでしょうかね。


《ABで何を描きたいのか》
ABを見ている限り、原作の麻枝准氏の話の作り方は結構極端な構成ですよね。
いうなれば、キャラ立てに特化した作りで話と設定の整合性がそれほど上手くないのかなと。
別に悪く言ってるわけじゃなくて、そういう作風なんだろうなあということなんですけどもね。
ここら辺はゲームシナリオ出身者ってところが少なからず影響してるんだろうと思います。
ゲーム、特にADV系はキャラに比重を置くわけですから、設定にあんまりこだわらない、あるいは広く使われてる舞台設定を用いることが多いはず。
たとえば学園ものなんてのはそれの典型じゃないでしょうか。
設定とかが普通でもキャラ立てが上手くいって、それに特化すればするほど、面白さは増す。
これは漫画原作者小池一夫が信念とする「キャラ立てが一番大事」というのに当てはまりますし、
イギリス文学の巨匠でもあるチャールズ・ディケンズの作品でも何が一番魅力かというと、やっぱりキャラなんですよね。
その点からABを見ると、やっぱり興味深い。
キャラ立てについてはABという作品が一番成功してるところなんじゃなかろうかと思います。
音無にしろ、
ゆりにしろ、
天使にしろ、
ユイにしろ、
TKにしろ、
その他のメンバーもしても特徴を感じられますよね。作中での役割がはっきりしている。
ネタにされてたりするのもなにかしらの魅力があるからなんでしょうねえ。
そういう意味での引き込み方はすごく上手いですね。
5話と6話の天使の描写とかも目を見張るものがあったんじゃないかと。


と、話が若干それました。
そろそろ本記事のタイトルに触れようと思います。
ABがメタフィクションじゃないかという疑問。
メタフィクションというの何かというと。


よくある漫画のギャグとかで、キャラが読者側の視点に立って、ツッコミを入れる(あと○ページしかないから早くしろ、みたいな)


これはメタフィクション的なギャグですけども、一例としては分かりやすいかと。
辞書代わりに、wikipediaの解説も下にリンクでおいてましょう。


メタフィクション - Wikipedia



ここで大事なのはキャラが現実じゃない世界にいるということを認識してるという点です。
上のリンクにもある「自分がフィクションの中にいる自覚を表明する登場人物」ですね。
ABだとまだ死後の世界というのがはっきりしてないから判断が付かないところではあると思うんですが、キャラの共通認識として、


現実≠死後の世界


というのを持っているのはすでに明らかですね。
事実、ここは死後の世界だから何度死んでも生き返るという設定も存在してるわけですし、現実じゃないという点は視聴者もキャラも認識してる。
SSS団のメンバーは死後の世界ということを認識していても、この世界をリアルだと考えて、理不尽に抗おうとしてるという点が複雑になってる印象はありますね。
しかしこのアニメを見ている側からすれば、現実と違う世界にいるっていう認識を持っていれば良さそうです。
他方でABの話の進め方がいかにもADV系ゲームのシナリオの進み方をしてるようにも思えます。
個人的には美少女ゲームをあんまりプレイしたことがないのでなんともいえない所はあるのですが。
でも原作者がかのKEYの麻枝准氏であることからも、やっぱりゲームくさいという気はしますね。
普通のアニメの進め方とは違ってるはず。
1話の展開を考えてみれば、なんとなく違いは分かりそう。


よくあるアニメの第1話
・物語の「起」。話の導入口でもある。
・キャラ紹介。
・事件があって(解決するかはともかく)続く。
・主要キャラ同士が仲間になる。
・何かしらのテーマの提示がある
・一話の中でも「起承転結」

ABの第1話
・物語の「起」
・音無の登場、SSS団の紹介、天使の登場。
・世界観の説明、設定の説明
・音無のSSS団、入団
・音無参加の最初の作戦
・ライブシーン
・食堂での食事
・一話の中で「起承転結」をまとめず、シリーズ全体の「起」して機能させている


私の主観な部分もありますけどもこんな感じですよね。
これを見てもよく分かるように、1話にこれでもかというくらい情報を詰め込んでいるのがABの初回です。
アレもコレもまず最初に説明しておかないとあとあと大変、っていう感じなんだろうと思うんですが、まあ見る側にしてみれば結構不親切(笑)
ここら辺はゲームの導入と似ている気がします。
チュートリアルというのがありますよね。
ゲームの操作とかを説明してくれる初心者に向けた情報発信がゲームには取り入れられているわけで。
ABの1話もそんな雰囲気がありますよね。
この作品においてのルール提示を1話でしていると。
飲み込むのは大変だけど、飲み込められれば、作品を楽しむことが出来る。
そんな風な作品の作りに思えました。
となると、


Angel Beats!はゲームシナリオの体裁を持ったアニメである


と言えるのではないでしょうか。
サブタイトルのメタフィクションというのはつまりABがアニメの形をしたADVゲームなんだということです。
ゲームのアニメ化は数あれど、ゲームシナリオの構造をそのまま持ったアニメは他に見たことない気がします。


これは邪推に近い想像ですが、
原作者、麻枝准氏は目論見があって、この作品を作ってそうです。
どんな目論見かというと、


今までKEY作品をプレイしたことない視聴者にアニメでKEY作品の疑似体験をさせる


事なんじゃないでしょうか。
そうなると「最近のアニメ〜」云々って発言は頷けますね。
有名作品の要素を引っ張ってきて、自分の築いたKEY作品の世界に落とし込んで話を構成してると。
そして出来上がったものは麻枝准の作品以外の何者でもないっていうことになりそう。
シリーズ前半はそういう要素を含みつつの展開だったと考えると、シリーズの後半はよりKEY作品らしくなるんでしょうね。
って、そういうことも特別番組で言っていましたね。


そうすると俄然面白くなってくるですが、果たしてどうなるのかって所です。
予想しようにも結構、極端な話の広がり方をしてるから難しいんですよね。
あれこれ考えるには楽しいんですけども。
ともかく行く末を楽しみに今後も視聴したいです。
では、この記事はここらで締め。
次回は出来るだけ早くしたいところです。