In Jazz(はてなダイアリー版跡地&元『My Favorite Things』)

ジャンル不問で好きなものを最小単位で語るブログ

CDレビュー:東京事変「スポーツ」相対性理論「シンクロニシティーン」など。

本ブログではアニメの感想ばかりじゃなくて、他の感想も取り上げて行きたいなあと。

それで今回は買ったCDの感想でも。今回は三枚レビュー。



スポーツ

スポーツ


一枚目は椎名林檎率いる東京事変の四枚目のアルバムです。
発売はもう二ヶ月も前。
私事ではありますが四月に入るまでちょうど丸二ヶ月、海外に旅行に行っていたのでようやく聴けたって思いが強いです。
さて、肝心の内容といえば前作の「娯楽(バラエティ)」の路線を発展させたものになっているのではないでしょうか。
それでいて、音的にくどくない作品だなと。(録音が、というわけではなく音ののど越しが)
タイトルにあるとおり、非常にスポーティな印象です。
さくっと聞けて、さくっと終わる。
それがこのアルバムの特徴ではないかなと。
かつての椎名林檎のソロ時代や、東京事変の最初のアルバム「教育」にあったような音圧過度なサウンドは鳴りを潜めてますね。
その分、余計な音がそぎ落とされて、シンプルになったからこそ聞こえる、強靭な響きが素晴らしいと思います。
逆に音にくどさがないから、そこら辺を求めてる人たちにはかえってあっさりしすぎてて物足りないんじゃないかなあとも。
ただまあ腹八分目という言葉もあるとおり、この作品はこれで問題ないんじゃないでしょうか。
おそらく事変の中じゃ一番聞きやすい作品だと思います。


それとタイトルを「スポーツ」としている事からどこか「オリンピック」をオマージュしてるように感じましたね。
もっと具体的に言えば、1964年の東京オリンピックでしょうか。
それはジャケットが金メダルって事からも顕著かと。


音の面だと、個人的にちょっと思ったのがシティポップスの新生を目指してるかなという点。
ここでいうシティ・ポップスって言うのは1970〜80年代の日本で流行したジャンルです。
具体例を挙げると、松任谷(荒井)由実とか山下達郎とかですね。
いわゆるニューミュージックって言われてた方々。
その人たちが洗練された都会的な音楽で当時の日本の音楽業界に新しい風を入れていったのです。
今回の東京事変はそこら辺を踏まえ、自分たちの色を出してるように思いました。
もちろんシングルカットされた「能動的三分間」のような今風の音も取り込んでいるわけなのですが、根底に流れているのはシティポップスの様式美。
ポップミュージックの文法に従ったような2分半〜3分半くらいの曲が並んでいるのも分かるように、非常にストイックな作りになっているのです。
(注:昔は(今も)ラジオで曲をたくさん流してもらうために、ポップスはだいたい一曲2分半から〜4分がいいという事がある、らしい)
おそらく彼らはそういう制限をつけて、このアルバムを製作したのだと思われます。
聞き手を疲れさせないでどれだけ楽しませるか、の一点に絞った匠の技と言えるでしょう。
東京事変の結晶、核のようなものが前面に押し出されている作品と言っても過言ではない。
友人とかに「東京事変ってどんなん?」って聞かれたら、まずこのアルバムをお勧めしたいですね。


続けて、二枚目と三枚目は一緒にレビューしましょうか。


シンクロニシティーン

シンクロニシティーン

Blu-Day(DVD付)

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第一回CDショップ大賞を受賞した相対性理論の通算三作目にしてファーストフルアルバム。
てか、フルアルバムは今回が初めてなんですね。
前作の「ハイファイ新書」もアルバムだと思ってましたが。
もう一枚はその相対性理論でボーカルをつとめるやくしまるえつこがツインドラムデュオ、d.v.dと組んだ作品です。


さて、相対性理論
前作の「ハイファイ新書」はデビュー盤の「シフォン主義」と比べて、ちょっと音的に実験してたのかな?と言う風な出来でした。
なので、どうなるか心配してたのですがそこは杞憂に終わった感じ。音は「シフォン主義」の頃のようなバンドサウンド主体に戻ってますね。
全曲シングルカット可能なんて大仰なあおりがついちゃってますが、確かに出来は良いと思います。
非常に心地のいい曲が全11曲が流れて、あっという間に時間が過ぎていきますね。


で、このバンドに関して思うのは、やっぱりリズム隊が肝だなあということです。
ボーカルのやくしまるえつこばかりが注目されてますが、バンドの土台を支えてるのはおそらくベースとドラムでしょう。
彼女がバンドの色を決定付けているのは間違いないです。
けど、バンドの空間と雰囲気を決定付けているのは彼女じゃない。
個人的にやくしまるえつこのソロ(おやすみパラドックス)はそんな好きじゃないんですよね。
なんか欠けてるなって印象がどことなくあって。
彼女の声を生かしきれてないなあ、と思ってしまうところが色々とあったりしたんですが。

先ほど上記でレビューした東京事変の場合、椎名林檎+その他の三人って構図じゃなくて、四人で一体になって東京事変っていう形になってる。
椎名林檎もバンドの一部分に過ぎなくて、全体的にそれぞれの特徴を生かした音作りをしてるんですよね。
まあ、椎名林檎は元々もソロアーティストだったってのもあって、非常に個性が強いわけなのですが。
でも、その個性を溶かして、ほかのメンバーの個性が混ざり合っていい状態を保ってるんだと思います。

相対性理論にも同じことが言えるんじゃないかなと。
やくしまるえつこの声だけを取り出しても、あんまり面白くないんですよね。もちろん声色自体も面白いんですけども。
彼女の特質を上手く生かしつつ、相乗効果を出せてるのは相対性理論のメンバー以外にいないんじゃないかと。
当たり前と言えば当たり前なんですが、でも重要なところです。


ギターにしても、ベースにしても、ドラムにしても、至極演奏はシンプル。
でも全体的に感じる雰囲気としてローファイなんですよね。
ギターもベースも一癖あるフレーズで、ドラムはひたすら性急なリズムをタイトに叩いてる。
特にベースはうねうね鳴ってます。むしろ、ボーカルの次に特徴的泣きがします。
相対性理論の音が心地いいのも、ベースの音がすごく心地いい所によってると思いますね。その次にドラム。
その土台が良いから、ギターも最高の形で自由闊達に鳴り響いてて、なおのこと心地いい。
さらにやくしまるえつこキッチュな歌声が入れば、あら不思議。
相対性理論の音が一丁出来上がりです。


変に音をいじくらないでシンプルな音で攻めた方が映えるって言うのを地で行って、成功してるんでしょうね。
音的にはThe Strokesの初期なんかを髣髴させますけども、やっぱり印象はまた別で、風船がぷかぷか宇宙空間に漂ってるような浮遊感が独特です。
無重力のようで地に足が着いてる、不思議な軽さが魅力的。
欲を言えば、あっという間に聞き終えちゃうので、少し物足りないっていう。
もっと聞いてたいなあっていう。なんて贅沢な。


さて一方で同日に出たやくしまるえつこd.v.dの方なのですが、こちらもなかなかでした。
こっちはわりとエレクトロ調。
なんかやくしまるえつこの声を素材に、サンプリングしてあれこれいじくったって印象でしょうか。
こういう使われ方もあるんだなあと、なるほどと思ったり。
彼女のソロ曲「おやすみパラドックス」のように声を生かすんじゃなくて、声を料理するっていう。
面白い試みだなあって感じがしました。個人的にはこういうのだったら、許しちゃうかな。
完全にエレクトロの素材として使われてるから、何かが欠けてるって印象が希薄ですんなり聞けました。
惜しむらくはちょっと一本調子で、後半が面白みに欠けたこと。
悪くないのにそこが残念でしたねえ。


とまあ、今回はこんな感じです。
今後も定期的に音楽の感想もしていきたいです。今回は邦楽でしたけども洋楽の話とかもしたいですし。
次はなに書きましょうかねえ。
漫画とかかな。

思いついたの優先で何かまた描きますね。
それではまた。