In Jazz(はてなダイアリー版跡地&元『My Favorite Things』)

ジャンル不問で好きなものを最小単位で語るブログ

音楽鑑賞履歴(2016年8月)

月一恒例の音楽鑑賞履歴。
音楽メーターの感想を記事にしてまとめてます。
20枚。
割といつもどおりのような感じもしますが、
魔神英雄伝ワタル」のCDBOX(7枚組)を一枚と換算すると14枚です。
そんなに聞けてないですねえ、今月。
なにが原因なのかはよくわからないけど、気分が乗らないときもありますわね…。
というか、あんまりロックっぽいのを聞いてない月ですね、眺めてると。
夏も終わり、台風が来たり来なかったりで、天候も不安定ですが、
秋に向けて、徐々に涼しくなっていく感じはなんか趣があって好きですね。
とまあ、以下から感想です。


8月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:20枚
聴いた時間:355分

AbraxasAbraxas
・70年発表2nd。初期の傑作として名高い彼らの代表作。1stでのロック×ラテンのクロスオーバーがさらに洗練されて、より高い水準で繰り広げられている。当時のカウンターカルチャーとしてのロックの熱っぽさに煽情的なラテンパーカッションが絡み合い、燃え盛る炎のようなアンサンブルが聴ける
音楽面で言えば、ロックとブルース、ラテンとさらにジャズのインタープレイが重なっているのが洗練の要因だが歌に限らず、7のような涼風の吹き込む美メロを二枚看板として立てたのも強みが増した。捨て曲がなく40分弱を一気に聴ける名盤だろう。ラテンロックの魅力が存分に味わえること請け合いだ。
聴いた日:08月03日 アーティスト:Santana
Second EditionSecond Edition
・79年発表2nd。オリジナルはフィルムケースのような円形缶に封入されたLP三枚組の大作。現行版は80年にオリジナル版から増補された「第二版」という形で今なお伝わる、ポストパンクの傑作盤。およそポップミュージックらしい明快さは皆無にも拘らず、それでもポップさを携えている稀有な一枚
クラウトロック、あるいはレゲエ・ダブなどの影響がよく語られるが、それらの無機質な反復やエコーとも何か違った「生々しさ」がある音がこのアルバムの特徴だろう。パンクの激情をNW/ポストパンクの醒めた理性によって、方角を指し示すことでポストパンクのスタイルが確立されたようにも感じる。
徹底的に感情を廃した無機質な音である一方でジョン・ライドンの呻きにも似た調子っ外れのヴォーカルが絡むことで無塗装無装飾の工業製品のような姿のポップミュージックが成立している。これも近代社会に生まれた原初の響きなのかもしれない。ポップにしてポップに非ず。それでも惹きつける魔力がある
聴いた日:08月04日 アーティスト:Public Image Ltd,Pil
ライヴ・アット・ラ・コヴァライヴ・アット・ラ・コヴァ
06年発表ライヴ盤。05年8月26、27日のスペインはメノルカでの公演を厳選して収録した初のライヴアルバム。熱気溢れる夏の夜に行われた演奏もまたエネルギッシュかつホットなものとなっている。ライヴバンドとしての実力を思う存分に発揮した、痛快な内容は一聴の価値のあるものだろう。
いわゆるジャズファンク、あるいはソウルジャズといわれる類の音楽を真っ向から取り組んで、タイトかつグルーヴィーな響きをライヴの熱気に渦巻かせているのが最大の魅力。時たま演奏のテクスチャーがジャズであったり、フュージョンのライトな趣を感じさせるものがあり、その辺りに新味を感じるか。
ファンクやジャズの重たさがソウルやフュージョンの軽快さで中和された事で、バランスの良い重みと引き締まったビートが腰にグッと来る感じで非常に楽しい一枚だ。おそらく彼らの入門編としても最適な作品だろうと思う。ライヴらしい勢いとフレッシュな感覚が生き生きとしている脂の乗った良盤。
聴いた日:08月10日 アーティスト:ザ・ニュー・マスターサウンズ
ロスト・テープスロスト・テープス
07年発売編集盤。知る人ぞ知るジャズ・ファンクヴィブラフォン奏者の72年、79〜80年のライヴ音源を取りまとめた一枚。ライヴの熱気とともにヴィブラフォンのクールな音色がファンキーな演奏と絡まって、格別な味わい。ヴィブラフォンだと端正な演奏を想像するがこれはどちらかというと粗野だ
ケレン味があるというか、ソウル/ファンク色が濃いので自然と熱気を帯びたものになっているというのが正しいか。ヴィブラフォンの知的な響きよりソウル・ファンクのワイルドな肉感が勝っているのでより音の快感は強い印象。1のカバーなども相俟って、レアグルーヴ感満載の聴き応えのある作品です。
聴いた日:08月17日 アーティスト:ビリー・ウッテン
Attack of Grey LanternAttack of Grey Lantern
97年発表1st。とにかく音の分厚さの目立つUKバンドの初作。当時らしい轟音ギターが英国らしい耽美で陰影の濃い叙情性のあるサイケな響きをかき鳴らす一方で、コンテンポラリーなストリングスやデジタルビートも重なり、非常に密度濃い音がポップに鳴り響く。その練りこみは厚塗りの油絵のよう。
過密といっていい位の高圧縮度のメロディが渦巻く中、独特のカラフルさや、その楽曲の質量が決してクドくなってないのが面白い。今聞くと、生身の演奏とデジタルビートなどの重ね方に試行錯誤感があってのまた興味深いがこの時代にしか出せないカオスな感覚を楽しむのもまた一興な一枚。案外クセになる
聴いた日:08月17日 アーティスト:Mansun
SIX (ENHANCED)SIX (ENHANCED)
98年発表2nd。前作よりサウンドが整理されて、聞きやすくなった一方で一曲の中で曲調がガラリと変わるものが多く、曲ごとの境目が結構あいまいだったりする不思議な一枚。だけど作品の統一感は纏まっていて、相変わらず音の密度はかなり濃い。取り扱ってるジャンルの多さは前作以上ではないかと。
オルタナあり、バラードあり、パンキッシュなものもあり、デジタルビートやストリングス、NWやグラム的な耽美感もあれば、プログレのような複雑さもあるし、シューゲイズやジャジーな趣も拾ってきていて、まさしく万華鏡のようにメロディの洪水が溢れていて、集中して聞かないと突き放されそうなほど
ここまでやると、後のキャリアが辛いだろうという位に、強迫観念的なメロディの詰め込み方をしていて、聴き応えはある。が、音も決して軽くはないしむしろ重厚さが伝わってくるのであまり気軽には聞けないか。アルバムの構成もさることながら、じっくりと音楽を聴きたい時にお腹いっぱいに出来る一枚
聴いた日:08月18日 アーティスト:Mansun
Little KixLittle Kix
00年発表3rd。事実上の最終作。前作のカオスなオルタナ/プログレ感から打って変わって、彼らの根っこの部分であるNWの影響が色濃く出た作品。その為、曲構成がとてもコンパクトになり、ポップさを伴って、非常に聞きやすくなった。メロディに圧縮された感じも薄らいで、目まぐるしい変化もない
陰影の濃いモノトーンな表情や、かとなく感じられる神秘的でゴシックな趣といい、彼らの「素」が一番よく出ている作品だと思う。NWの耽美さやサイケな印象が回り巡って、ブルージーな音に接近しているのもまた面白い。繊細さと骨太な音が同居しているのが改めてこのバンドの魅力だったのかもしれない
聴いた日:08月19日 アーティスト:Mansun
Here TisHere Tis
61年録音盤。地味ながらわりと歴史的な一枚。というのも、リーダーのルー・ドナルドソンの定番コンボ構成になるオルガン(プレイヤーは通好みのオルガニスト、ベイビー・フェイス・ウィレット)が初めて登場する盤であるとともに、ジャズジャイアントの一人、グラント・グリーンの初録音であることだ
内容はウィレットとグリーンという若き才能の迸るさまに任せて、リーダーのルーは若手中心のコンボで泰然自若、悠々自適にサックスを吹いている。この盤はそんなルーがソウルジャズ路線に傾倒していく最初の記録であるが、同時に黒人音楽の歴史が継承されていく光景でもある。そこがまた興味深い。
ルーがソウルフルな方向に傾いていく中で、後にここで活躍しているグラントはさらに「ファンキー」な音へと志向していく。そういった一連の流れにこの盤はある。一歩引いた所で存在感を示すルー、グラントはあの溜めの利いたプレイを若さ漲る溌剌とした活気で魅せる。新旧ジャズメンの競演が面白い一枚
聴いた日:08月21日 アーティスト:Lou Donaldson
ハウ・インセンシティヴハウ・インセンシティヴ
69年録音盤。大所帯のバンド構成にコーラスヴォーカルが絡むセッションとアイアート・モレイラフローラ・プリム夫妻をメインにすえたブラジリアンテイスト濃厚なセッションが収録された一枚。クラブなどで再評価された。スマートかつスタイリッシュな演奏が聴く者を惹きつける魅力だろう。
ピアソンもジャズピアニストというよりは、総合的なジャズコンポーザーとして手腕を発揮している印象、もちろんピアノも弾いているが、持ち味の端正さによってジャズの小洒落た印象を付与させたといっても、けして過言ではない内容だ。あっさりとした音だがジャズの味はしっかりと利いている。
特筆すべきは本作でBN初登場(のはず)となったアイアート・モレイラフローラ・プリムの参加したブラジリアンテイストのジャズだろう。ボサ・ノヴァやサンバの細やかなリズムにピアソンの端正な味付けが相まって、小粋な雰囲気を醸し出す。和菓子のように儚く美しいメロディが奏でられる佳作だろう
聴いた日:08月23日 アーティスト:デューク・ピアソン,フローラ・プリム,アンディ・ベイ,ニューヨーク・グループ・シンガーズ・ビッグ・バンド
愛があるから大丈夫愛があるから大丈夫
93年発表4th。ジブリ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」ED曲9を収録したアルバム。従来のアジアンテイストにセカンドライン、ゴスペル、サンバ、スカ、レゲエなどの様式を取り入れており、華々しくも祝祭感の強いサウンド。いわゆる泣き笑いの感覚を取り入れて、さらにエキゾチックさが増している。
とはいえ、93年というとバブルが崩壊した年でもあり、それまでの突き抜けた明るさに一滴の不安が混じったような印象で、雑多なサウンドが少し重々しく感じられた。流石に各国の民俗音楽をごった煮させたのが自家中毒になっていて、アルバムとして聞くとまとまりに欠ける。曲別に聴くと悪くないのだが
聴いた日:08月24日 アーティスト:上々颱風
魔神英雄伝ワタル25周年記念 魔神英雄伝ワタルCD-BOX(Blu-ray Disc付)魔神英雄伝ワタル25周年記念 魔神英雄伝ワタルCD-BOX(Blu-ray Disc付)
14年発売のCD-BOX七枚組。88年の「魔神英雄伝ワタル」から97年の「超魔神英雄伝ワタル」の主題歌・キャラクターソングを網羅したボックスセット。ドラマCD収録の曲も入っているので一まとめに聞きたい場合はこれでいいかも。a・chi-a・chiの98年以来となる新曲も収録。
Disc1。ワタルとワタル2の主題歌曲をメインに、キャストの歌うOP&ED、a・chi-a・chiのカバーなどが収録。当時のリバーヴが利いたHi-Fiなフュージョンっぽいサウンドが目を引く。特に林原めぐみの地声とヒミコの声での歌唱が聞けるあたり、芸の上手さを感じるなど。
Disc2。ドラマCD「虎王伝説」とワタル2のキャラソンがメイン。山寺宏一によるクラマのキャラソンが80年代歌謡曲っぽい。虎王とヒミコのデュエットソングあり、田中公平作曲の子守唄あり、全体にミッドテンポのしっとりとした曲が多い感じ。アーバンでメロウな感じは80年代末を引き摺ってる
Disc3。ワタル2、「虎王伝説」、ドラマCD「ワタル3」の曲を収録。a・chi-a・chiの歌うワタル2のOP&EDを初めとして全10曲中8曲がa・chi-a・chi。当時らしい渋谷系的メロディとハウスのテクノビートが絡まり、カジュアルな趣のポップスが立ち並ぶ。
Disc4。ワタル3、「ぼくの虎王」と「虎王のクリスマス・プレゼント」からの収録曲がメイン。伊倉一寿の歌唱力が目を引く。90年代初頭のバレアリックな雰囲気のハウステクノ調の曲やファンキーなホーンが鳴る曲も。黒っぽいけど清潔な感じのメロディはこの時代ならではの音だろう。
Disc5。ワタル2OVA、ワタル3、ワタル4の楽曲を収録。OVAの楽曲を抜きにすれば、各国の音楽をベースにした曲が目立つ一枚。ブラジル音楽、シャンソン、スパニッシュ、チャイニーズ調などなど歌っている面子も含めバラエティに富んだ作り。西村知道玄田哲章が歌うキャラソンも珍しい。
Disc6。ここから「超魔神英雄伝ワタル」の楽曲。1や2周辺のバブル期のHi-Fiサウンドから比較的に低音重視のエレクトロサウンドに変貌し、華やかさに欠けるも重みのある音に。坂下正俊A.K.A.manzo)らの手がける楽曲も質が高く、1,2とは違った趣が面白く聞ける。
Disc7。引き続き「超魔神英雄伝ワタル」の楽曲とこのCD-BOXの目玉として作られた、a・chi-a・chiの新曲が収録。既存曲では坂下正俊A.K.A.manzo)と伊倉一寿の曲がいい。リズム重視ながらオフビートにクールなメロディが乙なもの。楽曲の出来は1や2を凌駕している。
a・chi-a・chiの新曲については古参のファンであればあるほど、積み重なった年月と想いをフィードバックさせられる一曲。ある意味、本当の「卒業ソング」にも聞こえるし、感謝の一曲でもある。往年の歌声を期待するのは酷だが、今の彼女たちを実感できるものでファンには堪らない物だろう。
聴いた日:08月24日 アーティスト:TVサントラ
上々颱風 3上々颱風 3
92年発表3rd。前作に引き続き、キャバレー、マンボ・ルンバ、ロカビリー、ジャングルビートに音頭や昭和歌謡などを取り入れて、アクの強い猥雑さを出しながら、独特のダンスグルーヴを渦巻かせている。その一方で泣き笑いの感覚は薄らいだような印象。さながら農村でのお祭りにも聞こえる
先に4枚目を聞いて感じたことだが、本作の土着感あるいは垢抜けなさがかなり人懐っこい。形容しづらいが心が豊かな感じ、だろうか。音に感情を含め、色んな物がぎゅっと詰まっている。それまでのスピリチュアルな祝祭感はないが、とても人間臭い感じがこの盤の享楽的な音を支える核であり魅力なのだ。
聴いた日:08月26日 アーティスト:上々颱風
ライヴ・イン・アイルランドライヴ・イン・アイルランド
・74年発表ライヴ盤。北アイルランド問題で荒れに荒れていた故郷アイルランドへツアーを敢行した際の白熱のライヴを収録した一枚。とにかく演奏のテンションが振り切れていて、熱の篭った内容。ライヴに定評のあるプレイヤーとはいえ、当時の状況も含めて、気合の入り方が相当違っていたのだろうと思う
収録されているのは一部始終とはいえ、唸りを上げるロリーのギターは時に激情に駆られ、時に繊細に咽び泣き、そのプレイ一つ一つに気迫に満ちた、執念にも似た情熱を感じるばかりだ。メンバーのアンサンブルも強靭であり、ロリーの奔放な演奏に下支えしている。絶頂期の切れ味鋭い演奏を堪能できる名盤
聴いた日:08月29日 アーティスト:ロリー・ギャラガー
ギアーズギアーズ
75年録音盤。引き続きマイゼル兄弟率いるスカイ・ハイプロダクションとがっちり手を組んだ一作。ソングライティングで個性を出さずに、プレイヤーとして徹しきっている。この為、マイゼル兄弟の色合いがさらに濃くなった作りになって、煌びやかでメロウな響きが全編に渡って、支配している。
ハモンドは曲ごとにエレピやシンセ、本来のメイン楽器であるオルガンなどを駆使し、スカイ・ハイサウンドに溶け込んでいる。リーダーのアーティスト的な個性を求めると魅力に乏しい一枚かと思うが、マイゼル兄弟のプロデュースした作品としては完成度の高いアルバムだろう。聞いて損はない良作。
聴いた日:08月31日 アーティスト:ジョニー・ハモンド,フォンス・マイゼル,ラリー・マイゼル

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